◆98/11/24 輝き始めた至宝

 蒼いユニフォームが、3人4人と水色のストライプを追い詰める。ボールを奪取し、オープン攻撃をしかける。それは、たった5ヶ月前、同じユニフォーム同士の試合ではとても見られなかった光景だった。

 ゾーンをハーフラインよりも前に設定し、相手を7人の中盤で囲い込んでボールを奪う。アルゼンチン陣地の中で、蒼き炎のユニフォームが踊る。それはもちろん、中盤だけで作った守備ではない。勇気を持って最終ラインを上げ、プレッシャーのかかりやすい状況を作ったDF陣のおかげでもあった。

 ボールを奪うと、サイドラインを市川が、中谷が上がる。伸二や俊輔を介して、生きたボールがサイドに渡る。サポートに走る伸二、俊輔。そして、福田が果敢にゴールを狙う。相手がボールを奪いかけると、稲本や石井がプレッシャーをかける。宮本を中心にした古賀、戸田のDF陣も臆することなくラインを上げる。彼らは、明らかにアルゼンチンと互角の勝負を挑んでいた。

 もちろん、相手は1軍半の U-21 に過ぎない。W杯でA代表が驚愕したあのアルゼンチンとは違う。だが、彼らが展開したサッカーは紛れもないアルゼンチンサッカーだった。狭い局面でダイレクトパスを多用するあの国のサッカーは、高い基本技術をベースにしなければ成り立たないものだ。スキルは明らかに上の敵に互角の戦いを挑み、1点を挙げた。

 幸運に助けられた勝利でもあったろう。相手のプレッシャーにどうにもならない点もあった。俊輔と小野の出来も今一つ。参入戦やチャンピオンシップに取られた選手もいない、etc...。それでも、素直に喜ぼうと思う。日本サッカーの至宝たちが、白い魔術師の手によって光を放ち始めたのだから。アジア大会が楽しみだ。