◆99/09/12 検証 トルシエ日本の1年 〜第1回 選手召集〜

 イラン戦の引き分けを持って、'99 年の日本A代表の活動は幕を閉じた。その言動がサポーターやマスコミの反感を買うなど、なにかとバッシングされるフィリップ・トルシエ監督だが、この1年間を「長期的チーム作り」という視点から、数回に渡って振りかえってみたいと思う。今回は選手召集について分析する。

 この1年でトルシエがA代表に召集した選手は、合宿のみの参加も含めて実に53名。内訳は、GK7名、DF17名、MF19名、FW10名。(合宿のみの召集も含める)ただし、怪我による緊急召集や五輪との選手兼任による穴埋め的召集も含んでいる。

 この53名という数字、一見多いようだが、これに近い数の選手を試した例が近年存在する。加茂周監督である。加茂監督は就任した'95 年に中に、実に41人もの選手を呼び、試合で試している。詳しい情報は試合出場者にみだが、合宿のみの参加は、ひょっとするとトルシエより多いかもしれない。加茂は数多く用意された試合を利用して数多くの選手を試し、ベテランを順次入れ替えてチームの土台作りを進めた。その過程を経て選手を固定し、その後若手を合流させていったのは、記憶に新しいところだろう。

 では、なぜ、加茂時代は現在のような印象がないのだろうか? それは、組まれたテストマッチの数と相手に原因があると思われる。加茂監督は初年度に実に17試合もこなしており、試合毎に少量の選手を試すことができる。これは、監督にとっては非常にありがたい条件だろう。また、戦績の内訳は6勝7敗4分。最初の3試合は3連敗しているが、相手がナイジェリア、アルゼンチン、豪州。その他負けた相手もイングランド、ブラジル(2度)、パラグアイ。特に国内で負けたのはブラジルとパラグアイだけである。また、アジア勢には負けがなかったことも(4勝2分 引き分けはどちらも韓国)安心感を与えたと思われる。狙ってやっていたとしたら、加茂監督はかなりしたたかである。

 一方のトルシエは、テストマッチは8試合。相手もエジプト、ベルギー、ブラジル、ペルー(H&A)、ボリビア、パラグアイ、イランとずば抜けた(少なくとも今の日本人が負けを覚悟するほどの)サッカー強国は少なく、それらを相手に1勝4敗3分ではチかなり反論も出るであろう。が、好意的に解釈するならば、8試合という短いスケジュールの中で加茂監督と同数の選手を試すには、結果を無視してまでもテストに徹する(選手を専門外のポジションで使うなど)必要があったのかもしれない。

 上記考察から、チームのベースを作る過程としては、この1年間の活動自体は間違っていないのではなかろうか。

(続く)