'98 World Grand Prix 〜 Round 1 日本 鈴鹿サーキット

 長いオフを終えて、今年もGPサーカスが始まりました。今年の開幕戦は日本。桜が満開の鈴鹿サーキットです。今回は現地で二日間観戦して参りました。

・GP125 〜KING Kazuto〜
 今年は昨年のチャンピオン、ロッシがステップアップしたため、ゼッケン1不在のシーズンです。
 予選から調子がよかったのは上田“Nobby”昇。予選では 14 秒に入ろうかという2'15.162 の好タイムをマーク。体制が充実したせいか、絶好調で、走りも切れていました。以下フロントローは、坂田、宇井、ロカッテリと続きます。
 レースはフロントローから飛び出した上田がリードします。序盤は坂田、ロカッテリらに先行を許したものの、一周ごとに順位を上げ、6周目にはトップに立ちました。そのまま坂田とトップ争いをしつつ、トップ集団を引っ張ります。上田と坂田の二人による白熱したバトル、目の前を通過するたびに、二人に拍手や声援が飛びます。
 二人がバトルを展開する間、後ろから着実に追い上げてくる選手がいました。東と眞子です。特に東は 2 分 16 秒台のハイペースで順位を上げ、二人の後ろについに追いつきます。
 ところが、残り6周のところで上田がスローダウン。そのままリタイアとなってしまいました。予選から絶好調で期待も大きかっただけに、非常に残念でした。最終コーナーにエンジンを止めて現れたときは、大きなため息、そして拍手が沸きました。
「Nobby、次があるさ」。
 これによって、トップ争いは坂田と東。これに眞子も加わって、最後は日本人3人によるトップ争いとなりました。中でも観客の期待を一番多く集めたのは坂田。目の前を通過するときの順位、アナウンスに一喜一憂します。東と眞子には申し訳ない気もしますが、年期というものでしょうね。
 結局、ファイナルラップのヘアピンで眞子の先行を許すものの、最後は坂田が二人を抑えきり、実に3シーズンぶりの優勝を飾りました。こんなに優勝に恵まれていなかったとは、ちょっと意外でした。2位は眞子、3位は東と、後ろから追い上げた二人が入りました。地元、鈴鹿の表彰台は日本人の独占。桜満開の鈴鹿に日の丸が揺れました。
 坂田は喜び一杯のウィニングランを終えてもピットに入らずに、シケインを抜けて再びホームストレートに現れました。大きな拍手で迎えられ、観客席に向かって何度もガッツポーズを繰り返します。メインストレートではスタンドに向かって万歳三唱を促すほどの喜びようでした。KING Kazuto 健在。今年のシーズンは上田との争いが何度も楽しめそうです。

・GP250 〜全日本の戦士達〜
こちらもビアッジ、ワルドマンがステップアップしたため、ゼッケン1、2が不在です。
 予選から好調だったのは宇川、加藤の NSR 勢。シーズン開幕前の開発遅延の噂が絶えなかった NSR ですが、蓋を開けてみると相変わらずの戦闘力。さすがは HONDA。創立50周年のお膝元GPで負けるわけには行きません。加藤が予選1番手、宇川が予選2番手をゲット。3番手には YAMAHA YZR を駆る中野真矢。ワイルドカード参戦ながら堂々とした走りで YAMAHA 勢トップ。 YAMAHA はもう一台、ワイルドカードの松戸直樹に YZR を託しますが、こちらも5番手と好調。メインスポンサーのコンパイルが和議申請をするなど不運がありましたが、頑張ります。期待の原田は予選中ピットから出たり入ったりで、マシンのセットアップに苦しんでいる様子。午前中のフリー走行でもコース途中で止まるなど、今年の序盤は昨年同様マシンに苦しめられそうです。
 決勝。序盤から宇川、加藤がレースをリード。予選の好調をそのまま堅持していきます。それに YAMAHA YZR が続く形に。ワイルドカードライダーがレースをリードします。その後ろで、予選では不振だった原田がファステストラップをたたき出して、ひたひたと近づいてきます。
 15周目目前、宇川に不運が襲います。エンジントラブルのためにリタイア。次第にペースが落ちていたのでトラブルは抱えているようでしたが、結局最後まで持ちませんでした。悔しそうに肩を落として最終コーナーを抜ける姿に観客席から大きなため息が漏れました。本人にとって、喉から手が出るほど欲しい1勝が近かっただけに、非常に残念です。
 こうなるとGP組でワイルドカード組と争えるのは原田哲也だた一人。ペースを上げて近づこうとしますが、車両の問題なのか、ヘアピン〜マッチャン〜スプーンのセクションで NSR,YZR に離されていきます。離されては、他の区間で追いつく展開を何度か繰り返しますが、ラスト2周には追いつくのをあきらめて4位キープのタナボタ狙いに切り替えたように見えました。
 結局、最後はワイルドカードライダー同士によるトップ争いに。加藤、松戸、中野のオーダーでファイナルラップに突入します。スプーンまでは松戸が加藤をプッシュしますが、バックストレッチではスピードに乗せた中野が 130R で松戸をパス。勢いで加藤をも狙いますが、そこは加藤が巧く交わします。シケインも完璧に防いで立ち上がり、二年連続の優勝を飾りました。2位は中野、3位は松戸と、YAMAHA 勢が好調をアピール。今年の YZR はなかなか手強そうです。原田も最後には中野、松戸のどちらかを交わそうとしたようですが、二人の争いに割って入らずにそのままのポジションでフィニッシュ。とはいえ、GP ライダー中最高位のポジションですから、意義のある4位でした。
 結果的には、このクラスも日本人が、しかもワイルドカードライダーが表彰台を占める結果となりましたが、それだけレベルの高い争いが全日本では繰り広げられているわけです。今年は NSR と YZR の戦闘力もほぼ互角。面白いレースが見れそうです。皆さんも全日本に一度足を運んでみませんか?
・GP500 〜驚愕の“Max”〜
 このクラスは今年も V4 チャンピオンのドゥーハンを中心に回りそうです。彼にに岡田、宣篤、ノリックの、各メーカーの日本人エースが立ち向かいます。さらには 250 の V4 チャンピオン、マッシミリアーノ“Max”ビアッジも加わって、混戦模様が予想されます。巷では真の V4 チャンピオンを決める戦いとも言われているようですが、どうなりますやら。
 予選をリードしたのはその Max ビアッジ。予選終了間際、地元日本勢を尻目に、前人未踏の 2'05.772をたたき出します。今年からガソリンが無鉛化され、パワーダウンは必至だったのですが、ルーキーシーズンの彼には、そんなものは関係なかったようです。予選はヘアピンで見ていましたが、ビアッジは走りが非常に切れてました。2番手は急遽スポット参戦が決まった YAMAHA の難波。普段は YZR の開発を行っており、マシンは知り尽くしています。今年の YZR は戦闘力ありそうですね。が、以下岡田、ドゥーハンとフロントローは3台が HONDA。今年も NSR は強そうです。ノリックは7番手、宣篤は8番手からスタートです。宣篤は怪我で今シーズンが絶望になった弟・琢磨のゼッケンを小さく付けて走ります。
 スタート、ジャンプアップに成功したのはノリック。ホールショットを奪います。これに芳賀、難波の YZR 勢が続き、YZR の 1,2,3 という、珍しい光景が見れました。が、それもつかの間。ビアッジが順位を上げ、3周目には独走体制を築きはじめます。
 その一方で3周目、なんとドゥーハンが1コーナーでコースアウト。かなり順位を落とします。驚愕の最終コーナースタンド。私は「これも演出か?」と思ってしまいましたが・・・。
 前後ソフトタイヤをチョイスし、序盤からハイペースでどんどん逃げるビアッジ。同じ NSR を駆る身として、岡田はこれ以上逃げられるわけにはいきません。ペースを上げて追撃体制に移行します。先行するノリック、芳賀に追いつき、見る見る2位に浮上。声援を一身に受けます。ところが、ビアッジはペースを落とすことなく快走。メインストレート半分以上の差を築き上げ、完全に一人旅状態に。2番手争いのバトルは見応えありますが、ビアッジが逃げていく。私は複雑な思いで前を過ぎる3台を見ていました。
 バトルの最中、ノリックに不運が襲います。前にいた岡田のマシンが暴れ、弾き出されるようにコースアウト。難なくコースには復帰したものの、2位集団から後れます。さらに、追いついてきたクリビーレにデグナー一個目で弾き出され、今度はタイヤバリアに激突。レース復帰はできたものの、表彰台は絶望になってしまいました。走行再開して戻ってきたとき、観客からは大きな拍手が沸きました。半ばヤケクソのように、怒りのウィリー走行でホームストレートを駆け抜けるノリック。
「腐るな、ノリック。この借りは次で返せ。」
 それから、ノリックの2度目のコースアウトと前後して、なんとドゥーハンがリタイアを喫します。S字の入り口でスローダウンしてマシンを放棄。開幕戦ノーポイントに終わってしまいました。スタンドでも一様に驚愕の声が上がりました。ドゥーハンにとっては、V5 に向けて厳しいスタートになったようです。
 そしてレースも終盤。結局ビアッジはホームストレート1本分の差を築いて完全に一人旅。優勝がまず揺るぎ無いものになったところで、観客の注目は岡田、芳賀の2位争いに絞られます。芳賀、岡田のオーダーでファイナルラップに突入。岡田は後ろで隙を伺い、最後の最後、シケインで芳賀のインを刺して2位でフィニッシュ。ゼッケン1に向けてまずまずのスタートを切りました。3位は芳賀。こちらも今年から WSB 参戦中ですから、本業のほうでも大暴れしてもらいたいですね。
 そして優勝はもちろん“Max”ビアッジ。初の GP500 でポール、ファステストラップ、優勝と緒戦で“ハットトリック”を達成。まさに驚異的な速さ。“Max”の名に相応しい走りでした。日本勢の前に大きく立ちはだかりそうです。
 宣篤は6位でフィニッシュ。宣篤苦手の鈴鹿でこの成績ですから、今年の SUZUKI は期待できそうです。ノリックは再スタートから14位でフィニッシュ。かろうじて2ポイントを獲得です。このポイントが後で効いてくると信じましょう。

 レースウィーク中は天候にも恵まれ、絶好の観戦日和でした。やはり生観戦はいいですね。音、そしてあの匂い。スピード感も生で見るとまた違います。今年は皆さんもサーキットに足を運んでみませんか。

 次回は 4/19。Round 2 マレーシア。コースはジョホール・サーキットです。昨年秋のサッカーW杯最終予選で一躍有名になったジョホール。今度も“日本代表”に勝利の女神は微笑むか?

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