影響力の大きい 第4次IPCC報告に対応するよう、
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地球温暖化をめぐる諸問題 Q&A

野上 道男

built on 21 Feb., 2008
lastly revised on 28 Dec.,2008


地球温暖化の原因論についての質問
気候変動って温暖化とは違うの?朝日新聞2008年2月14日14版2面
第四次IPCC報告が公表されています
太陽活動の変化が地球の気候変化を支配しているという説を聞きましたが・・
エルニーニョ現象と温暖化の関係はどうなっているのでしょうか ?
熱帯地方は地球温暖化でさらに暑くなるのでしょうか ?
海氷と温暖化の関係はどうなっているのでしょうか ?
人間は二酸化炭素ガスをなるべく出さないようにすべきでしょうか ?
二酸化炭酸濃度は増え続けているようですが、大丈夫でしょうか ?
地球の気温は上昇中ということですが、科学的根拠は確かでしょうか ?
人間が排出する二酸化炭素によって気温が上昇していることはほぼ間違いない
 と断言されるようですが ?
(IPCC次期報告ドラフト、朝日新聞記事などによる)
地球温暖化はすでに始まっている.ヒマラヤなどの氷河の消滅による湖の決壊
 やツバル島の沈水など深刻な前兆が見られているようですが ?

温暖化人為説の根拠はどこにあるのでしょうか ?
それでは地球温暖化人為説の確かな科学的根拠はないということでしょうか ?
地球気候変化原因説に対する私の考え(結論)

温暖化の影響評価についての質問
温暖化の影響評価を行うに当たって、必要なことは何でしょうか?
温暖化の影響評価の具体例
暖化の影響は悪いことばかりです !
温暖化したら冷房費が増加するのでは ?
地球温暖化で日本でも熱帯性伝染病が大流行するといわれていますが・・
しかし地球温暖化によって、熱中症が増加するといわれています
暖冬になったら、雪不足で雪祭りが出来なくなったり、スキー場が困りま
地球温暖化で暖冬となり、雪不足で田植期の水不足が起こるのでは ?
地球温暖化によって、蒸発量が増えることで砂漠が拡大するのでは ?
地球温暖化で気象災害が多発するといわれています
北極海の海氷が融け、シロクマがかわいそう
地球温暖化でサンゴの白化現象が起きています
高山植物が絶滅するといわれています
生態系の破壊ということが言われています
植林によって温暖化を防止したいのですが・・
二酸化炭素の地下貯蔵はどうでしょうか ?
循環型のバイオ燃料の利用が始まっています
温暖化防止のためエネルギーの節約を促す税金の新設はどうでしょうか ?
地域環境問題では生産者責任という考え方があります.地球環境問題ではどう
 でしょうか.化石物を燃料の形にする生産者(国)にも責任を求めるべきでは
 ないでしょうか ?
二酸化炭素排出権とその国際的・企業間取引についてはどうでしょうか ?
それでは、どうすれば良いのでしょうか ?
 参考文献

Q. 気候変動って温暖化とは違うの?
A.  朝日新聞2008年2月14日14版2面の記事に対するコメントです.このAの「」内
  は記事の文章の引用です.
  「気候変動とは、気温以外にも雨や風、雪、雲などの気象を含めた気候全体の変
  化が長期間続くこと」 一方、「温暖化は、主に地球の平均気温が上がること」
  「この気温上昇が気候の変化につながるという関係だ」のだそうです.この記事
  を書いた人は、あるいは編集に携わった人は、気象と気候の区別もできていない
  ことから、恐らく気象学・気候学のごく初歩も勉強したことが無いと思われます.
   この記事の誤りを文章に沿っていちいち訂正すると、この記事が全体として、
  間違いだらけ、という印象を与えるだけで、生産的に理解を深めることにならな
  いので、記事の文章に即したコメントはいたしません.

   日々の気象の長期間(30年程度)の平均的状態を気候といいます.日々の天候
  (晴れ・曇り・雨・雪など)やその分布(天気型、気圧配置型)の統計的状態を
  気候という考えもありますが、統計期間はやはり長期間です.しかし、一般的に
  は気象観測項目(気温だけでなく降水量、風、日射量など)の長期間の平均値で
  気候を表します.
   気候を定義する期間(例えば30年)以上の長い期間で起こる変化を気候変動と
  言います.ですから去年から今年への気候変動、という言い方は無いわけです.
   長期間の気温変動は気候変動の1つですが、証拠が残りやすいので観測が行わ
  れる以前の時代についても、いろいろな周期の変動があったことがわかっていま
  す.例えば、地質時代の中生代から新生代へは寒冷化のフェーズ、第三紀から第
  四紀へは寒冷化のフェーズ、最終間氷期(12.5万年)からは寒冷化(後氷期に回
  復)、縄文時代(後氷期の最温暖期)からは寒冷化、弥生時代からは温暖化、小
  氷期(江戸時代中期ごろが中心)から現在を含む観測時代へは温暖化のフェーズ
  となっています.
   小氷期以後の温暖化のフェーズのなかで、特に機器による気温観測が広く行わ
  れるようになって以来、最近の上昇が著しいので、これは人為によるものだと考
  えた人たちがいたわけです.人為による温暖化が問題視されたとき、これは人間
  が地球全体に影響を与えているというので、地球温暖化(global warming)とよば
  れました.地球温暖化は新しい言葉で、使われた始めたときのいきさつから、人
  為による温暖化と同じ意味になります.人為による地球温暖化とわざわざ言わな
  くても良いのはこのような経緯に由来します.一方、温暖化は一般用語ですから、
  人為による温暖化と表現する必要があります.
   同じように、人為による気候変動、自然現象としての気候変動、と明確に区別
  して記述することがよいのは当然です.しかし人為による温暖化が言われるより
  前から、気候変動という用語は使われていましたから、自然現象としての、とい
  う前書きは不要でしょう.人為起源説がでるまでは、気候変動は自然現象そのも
  のであったのですから.
Q. 第四次IPCC報告が公表されています
A.  とりあえず、IPCC第四次報告の [6 Paleoclimate]についての私の感想です.
  情報化社会とは「シミュレーションによって意志決定が行われる社会である」と
  私はどこかで述べたことがあります.そして意志決定を行う多くの人はシミュレ
  ーションの中身に触れることができない、あるいは理解できないまま、決定に参
  加せざるを得ない状況に置かれることが高度情報化社会の特徴だと思われます.
  6 Paleoclimate (= 古気候)の記述を読むと専門家の間ですら、このような状
  況となっているという実態が理解されました.
      6 Paleoclimate の著者たちも私同様、地球気候シミュレーションの中身につい
  て理解できていないようです.もっともそれに携わるチームや人々がプログラム
  ソースを公開していないのですから、当然ではありますが、アプリオリにモデル
  とシミュレーション結果を信じて古気候の証拠(proxy)を検証しようとしたか、
  (意地悪く?)疑いの目も向けてシミュレーションの結果を検討しようとしてい
  るか、その差でしょう.とにかく、プログラムのソースが公表されれば、多くの
  人々が議論に参加できるのです.ソースの公開が切望されます.
   地球気候モデルのシミュレーションは、天気予報に用いられる(熱)力学モデ
  ルの積分計算ではなく、時空的に局所的な平衡が時間的に推移して行くようなモ
  デルとなっていると思われます.その対象時間は現実で検証できるタイムスケー
  ルではありません.その場合、シミュレーションの有効性は何によって担保され
  るでしょうか.
   確実にいえることは、シミュレーションが 100年程度の長期的温暖化を予告と
  しているとして、1年はもちろんのこと10年でも30年でもそれにもとる気候
  が現れても、シミュレーションの有効性が否定されたことにはならないというこ
  とです.もちろん、逆も真です.
   温暖化のシミュレーションは古気候のタイムスケールに近いものを対象として
  います.従って、これからの観測データで検証を受けること当分無いわけですが、
  逆に古気候による検証を受ける必要があります.地球気候シミュレーションは単
  純な初期値問題ではないので、これは可能なはずです.IPPCの第三次報告でも、
  産業前・後に分けて人為の影響をシミュレートしていました.これを人為の無い
  時代(古気候の時代)にまで遡って精密に検証する必要があるでしょう.氷期・
  間氷期の気候変動幅の半分ぐらいもの気温上昇がシミュレーションで予想されて
  いますので(IPCC報告)、その長さは約10万年程度となります.
   端的にいうと、過去10万年間の自然の気候変動をシミュレートできたとして、
  それに最近の人為二酸化炭素放出量を重合させたとき、人為地球気候シミュレー
  ションは真に完成したことになるでしょう.それを目指すべきです.これだけ、
  大きな社会問題になっているのですから、このことだけでもシミュレーションの
  開発チームは、プログラムソースを隠すべきではありません.公開して、ソース
  レベルで議論することで、科学としての地球気候モデルは確実に進歩します.
   さらにいえば、地域気象シミュレーションのタイムスケールは超えるが、検証
  可能なタイムスケールの研究(一年程度か)を積み重ねることこそ、地球気候シ
  ミュレーション研究の王道と思われます.
   上の記述はIPCC報告 6 章についてではありません.モデルの開発に当たるチー
  ム・人への注文です.この報告書は学術出版物ではありませんので、望むのは無
  理かも知れませんが、科学としてみるとシミュレーション結果に合わない古気候
  データも、もっと取り上げて、その事実を指摘すべきだと思います.それが最終
  的にシミュレーションの説得力を上げることに連なるのです.それにしても第三
  次報告(TAR)と比べて第四次報告では古気候の部分に大きなページがさかれてい
  ることは大きな前進です.
   
   地球温暖化問題は地球科学から政策・人間倫理までつながっている大きな問題
  です.科学から政治までいろいろな段階で、要約が行われる必要があるわけです
  が、そのたびに、不確かさがあるという付言や推論に対して、「不都合な事実」
  が切り捨てられて、結果として一方的偏った要約がなされるので、温暖化人為説
  が疑いの無い科学的事実であるかのように、マスコミを通じて社会に広まってい
  ます.
   6章は気候モデル(によるシミュレーション結果)が古気候学の成果にいかに
  合致しているか、という筋書きで記述されています.しかしこのような意図で記
  述する場合、論旨に都合の悪いことには触れないことも科学者としてあり得るこ
  とです.特に Executive Summary は 6.1 以下の本章の内容の正確な要約にはな
    っていないことに注目する必要があります.少なくとも、これと 6.7 Concluding
  Remarks on Key Uncertainties とを読み比べれば、トーンがかなり異なることが
  わかります.
   Executive Summary で意識して使い分けている(ここは科学的記事として良心
  的です)、likely, very likely, unlikely,  with high confidence, などの語
  句で修飾して、記述されている内容が本章でどう表現されているかが、この章を
  読むときの大事な鍵となります.
   
   報告書にLGM(Last Glacial Maximum)という熟語がたびたび登場します.3万
  年前−2万年前の海水準最低下期のことです.すなわちこれはローレンタイド氷床
  (北アメリカ大陸に存在した氷床)の最拡大期を意味する用語です.少なくとも
  熱帯や南半球の山岳氷河の最拡大期は、5.5 万年ごろですから注意が必要です.
  山岳氷河の消長は気候変化と大きなタイムラグが無いので、この時期が気候の最
  寒冷期に当たります.LGM と熱帯・南半球の(恐らく地球の)気候最寒冷期は一
    致しないのです.
      5.5万年前ごろのローレンタイド氷床の末端位置がどこにあったかはわかりませ
  ん.その後の LGM 末期に、シアトル・シカゴ・ニューヨークを結ぶ線まで,氷河
  の前縁が進出したので証拠が消えてしまったのです.このころ(LGM)の南アメリ
  カなどの山岳氷河の面積は最拡大期(約5.5 万年前)の1/3ほどしかありません.
  主として北アメリカ大陸のローレンタイド氷床、従として北西ヨーロッパのスカ
  ンジナビア氷床の氷量変化は、世界の海面変化を支配してきましたが、海面変化
  の曲線が気候変化曲線では無いわけです.熱帯や南半球の古気候を正当に取り上
  げていないのは第四次IPCC報告(古気候の章)の大きな欠陥です.
   ローレンタイド氷床は、流動が停止し、融解が始まってから溶けきるまでに、
  氷の厚さから、平均して年数十cmの速さで表面融解が進むと仮定しても、数千年
  以上の時間がかかっています.海面変化の速さに換算すると1cm/年程度のオーダ
  ーとなります.ローレンタイド氷床が現在程度の面積になったのは約7000年前で
  す.すなわち、約2万年前に始まった氷河の縮小傾向は約7000年前には停止し、
  現在と同じ程度になったということです.
   何を言いたいかというと、気候変化が起きてから氷河の対応が起きる、そのタ
  イムラグは小さな(山岳)氷河では短く、ローレンタイド氷床ではすくなくとも
  数千年以上になるということです.海面変化はローレンタイド氷床の氷量変化と
  ほぼ同じですから(山岳氷河は量として無視でき、スカンジナビア氷床は相対的
  に小さい)、気候変化-->(タイムラグ)-->陸上氷河体積変化(=海面変化)と
  いう図式が成り立ちます.
   次に興味あるのは二酸化炭素濃度と酸素同位体比の変化です.水分子の重さは
  同位体で決まります.水素の重い同位体はわずかしか存在せず、酸素については
  質量数 17 がわずかで、重い酸素 18 が重要です.重さの異なる水分子の構成比
  は、蒸発・凝縮・凝結などの際に、原理的には分子の重さで選別されることで変
  化します.場所にもよりますが、一般に海水には重い水が多く、淡水(雨水)は
  軽い水が多くなっています.緯度・高度・内陸度などが同じで(同一地点で)、
  水蒸気の輸送経路が同じであれば、重い水の割合が高ければ、供給地の表面海水
  温が高いことを意味します.しかし、供給源の海水の構成比が最も強く反映され
  るのは当然で、そこでの海水からの蒸発量や淡水である降水量によっても影響を
  受けるはずです.
   いっぽう海氷の形成などで残った塩分濃度の高い海水が沈降して作られる海洋
  深層層水などはいったん形成されると、表層や気候の短い周期の変動を受けるこ
  とが少なく、平滑化された状態で、その当時、軽い水が氷河となって陸地にとど
  まっている分を反映して、その分だけ重い水となるわけです.これは中層・深層
  に棲む有孔虫などを含む海洋堆積物層の分析からその時間的変化を知ることがで
  きます.海洋底棲生物の酸素同位体比の変化は、深層水も循環しているので生物
  に取り込まれるまでのタイムラグはあるはずですが、海面変化を示していると見
  ることができるわけです.
      いっぽう南極などの氷をボーリングで採取して、酸素同位体比を測定して気温
  を推定することも行われます.この場合、氷の起源は海洋の表面から蒸発した水
  ですので、供給地の水の構成比が現れるはずです.海洋底棲生物の酸素同位体比
  の変化と氷の同位体比の変化はどのように一致しまた差異があるのでしょうか.
   ところが、グリーンランド・南極の各地での分析結果が意外なほどに、よく一
  致していますので、水蒸気供給源の地域的気候特性の影響は弱いようです.水蒸
  気を仲立ちに、海洋表層水・深層水・氷河の間で行われる水の循環によって、地
  球上の熱は運ばれたり貯留されることはわかっているのですが、まだ未知なこと、
  特に量的なことに関して問題が多く残されているようです.地球を知るためには
  地球の表面約70%を占める海が重要です.
   数十万年程度の過去の二酸化炭素ガス濃度変化は、氷の中に閉じこめられた量
  比を測定して知ることができます.閉じこめられるとき、あるいは閉じこめられ
  ている間に濃度が変わらないのであれば、氷河氷で得られた過去の濃度と現在の
  空気中の空気中の濃度を単純に比較することができます.

   ここで、二酸化炭素ガス濃度変化が気候変化を決めているのか(IPCC報告の基
  調)、気候(気温)変化が二酸化炭素ガス濃度変化を決めているのか、を考えて
  みる必要があります.もちろん気候システムには海洋と陸上を含めたシステムも
  絡み合っており、それには正と負のフィードバックがあります.正のフィードバ
  ックの場合は振動が生じたり発散(実質的には飽和に達する)の可能性もありま
  す.地球システムには変化の速度や加速度に反応するメカニズムは恐らくないの
  で、フィードフォーワードは考えられませんが、ストックに起因する因果関係だ
  けとしても、地球のシステムは非常に複雑です.
   雪渓の雪が一番少なくなるのは気温が一番高い盛夏ではなく、降雪が始まる直
  前です.同じように氷河の氷量が一番増えるのは寒冷期の終わりごろです.だか
  ら、原理的にも気候変化は海面変化(陸上氷量変化)に先行します.また氷河の
  融解期(温暖期)でも貯留量が無くなるまでのタイムラグがあることは前に述べ
  たとおりです.このように酸素同位体比が陸上氷河氷量の指標だとすると、それ
  はそのままでは気温の指標にはならないことが理解されます.
     時間分解能の高いコアの分析で、気温の変化が二酸化炭素濃度の変化に先行し
  ているという結果が出されているようですが、そうだとすると、この場合の気温
  とは酸素同位体比ですから、
    山岳氷河・植物化石などに現れる気候変化 -->(長いタイムラグ)
     --> 同位体比の変化(氷量変化=海面変化) --> 二酸化炭素濃度変化  
  となって、フィードフォーワードが無いのですから、結果が原因に先行すること
  はないわけです.すなわち二酸化炭素濃度の変化が気候変化の原因となるという
  物理的システムは存在しますが、過去の気候変化の歴史のなかでは、それが支配
  的な効果を現したことはなかった、といえます.
   ごく単純に考えて、太陽と宇宙の間で熱エネルギーの出し入れを行いながら、
  そのバランスの上に成立している地球の熱的環境(温度)の独立性は高く、それ
  に対して、閉じた地球の二酸化炭素循環のなかでの空気滞留中の濃度は、どう見
  ても独立性は低く、これが気候変化の原因だ(IPCC報告の基調)ということはな
  いでしょう.気候変化が二酸化炭素濃度を支配していると素直に考えるのが自然
  ではないでしょうか.考えだけが先行していますが、アイディアが研究を進歩さ
  せる原動力であることも理解してください.要するに、地球気候モデルの中に、
  気候変化が二酸化炭素濃度を支配しているというルーチンがあるのか無いのか、
  あるとしたら、その時定数とフィードバック量はどれくらいか、ということを知
  りたいわけです.
   議論が結局シミュレーションに戻ってしまうのは、IPCC温暖化予測の唯一の根
  拠がシミュレーションだからでしょう.
Q. 太陽活動の変化が地球の気候変化を支配しているという説を聞きましたが・・
A. 太陽からの放射とほとんど同量の地球からの放射があり、このエネルギーの流れ
  の中で数億年程度の間で、地球の温度は最大で約 10℃ 位の変動幅しかありませ
    んでした.すなわち、ほぼ一定の温度を保ってきたようです.とにかく地球の熱
  環境は太陽がおおもとですから、太陽がくしゃみをすれば地球は風邪を引くとい
  うくらい従属性が高いことは確かです.しかし太陽活動の指標とされる相対黒点
  数変化の約 11 年という周期と気候との関係はそれほど明瞭ではありません.
   偏東風のもたらす雨で涵養されているチチカカ湖の場合、観測を始めた1912年
  から、1937年までの2サイクル半は、相対黒点数変化と水位変化は見事な逆相関
  を示していました.チチカカ湖はほとんど内陸湖ですから、水位の上昇は降水量
  の増加か気温低下による蒸発量の減少を意味します.ところが1938年を過ぎても
  水位は下がり続け、1サイクル期間全く正の順相関となりました.そして1950年
  頃になってまた逆相関に戻りました.同じような経緯はアフリカのビクトリア湖
  でもあり、観測値のある 1900 年頃(チチカカ湖より1サイクル分前)からの2サ
  イクル分の周期を基にある研究者が論文を書いたところ、その直後に相関が逆に
  なったという有名な事実があります.ビクトリア湖は現在は発電に使われていま
  すが、当時はチチカカ湖と同様に、伝統的な土地利用・水利用しか行われており
  ませんでした.
   太陽黒点と水位について逆相関を示す2つのサイクル期間についてだけみると、
  周期も一致し、逆相関は完璧です.2つの事象の単なる線的な相関ではなく、周
  期的変化をする2つの事象の相関です.太陽黒点によって水位が変わるメカニズ
  ムの詳細は不明で、しかも量的な検討はなされていませんが、それは研究が未熟
  なだけで、自然界でこれだけ見事な相関関係があれば、親子か兄弟か(因果関係
  か共通の原因を持つ事象)の区別はともかく、因果関係の存在を確信するのは当
  然でしょう.しかしこれはその後の観測データによってあっさり否定されました.
   要するに太陽活動はメトロノームのように気候変化の周期は決めるが、量を決
  める要素ではない、ということです.そしてチチカカ湖では 20 世紀最大規模の
  エルニーニョ(1983年)は湖水面が低下した年に当たっており、そのころ近くの
  アンデスで氷河の観測をしていたフランスの氷河学者も、著しい負の収支を報告
  しています.すなわち降雪量が減少したか気温が上昇したかです.しかし、黒点
  数が最小になったのは 1986年でした.
   古いデータですが、カリ−ニンとクリーゲ(1973)によると、偏西風低気圧に
  よる降雨で涵養される死海・カスピ海など中央アジアの湖やグレートソルトレイ
  クなど世界の大きな6つの閉塞湖では、19世紀中頃から20世紀中頃にかけての湖
  面の低下が著しく、とくに 1910 年ごろからの水位低下が著しいようです.これ
  らの湖では、熱帯の湖の水位より、さらに黒点周期との関係は不明瞭です.
   20 世紀初頭から、1970 年までは太陽活動の極大値はサイクルごとに増大して
    いました.その後のサイクルの極大値は目立った傾向を示していません.IPCCが
    提出している「地球の気温変化」が正しいとして、それは黒点数との相関が低い
    ことを示しています.「地球の気温変化」を支配するもっと別の原因があるとい
    うことでしょう.
      湖水位の変動に見るように、太陽活動への従属性が高いという物理的根拠があ
  るにもかかわらず、気候と黒点の2周期程度の相関だけでは、因果関係の判定に
  は不十分な場合があったということです.
   IPCC第四次報告では、氷期−間氷期のような長期の気候変動に対して、ミラン
  コビッチ説が取り入れられています.陸地の広い北半球高緯度地方の受熱量の変
  動と地球全体の気候変化の周期が一致することがこの説の根拠です.しかし地球
  全体の熱収支が地球軌道の変化に支配されている量的な証拠はあるのでしょうか.
  周期の一致だけでは黒点周期と熱帯の降水量の問題のように不十分な判断となる
  かも知れません. 

Q. エルニーニョ現象と温暖化の関係はどうなっているのでしょうか ?
A.   南アメリカ大陸最西端に近いペルーのパイタ港の漁民は「毎年」クリスマス
   のころに北から(赤道方向から)やってくる暖流のことをエルニーニョ海流と
   呼んでいました.その後、この暖流の異常な南下をエルニーニョ現象と呼ぶよ
   うになり、さらに場所を選ばず平年よりはある程度海水温が高いとき、エルニ
   ーニョと呼ぶようになりました.本来の意味はスペイン語で(誰でも知ってい
   る神の)御子という意味です.それとの対比で海水温が低い場合、ラニーニャ
   (女の子)と呼ぶようになりました.
    前世紀最大といわれた1983年のエルニーニョ年にはペルーは大異常気象とな
   りました.海水温が上昇し、海岸の砂漠は大雨に見舞われました.北部ペルー
   ピウラ(5°S)では、降水量の平均値が 35mm/年(降雨のない年が大半)のとこ
   ろ、半年で約 2400mm もの降水がありました.この間検潮記録では1mもの海面
      上昇が認められたようですが、これは海流の変化と気圧変化によるものでしょ
   う.
    タヒチとダーウィン(オーストラリア)間の東西気圧差は標準偏差の 3倍に
   達しました.すなわち異常に気圧差が小さくなり、偏東貿易風が弱まったので
   す.これは南方振動と呼ばれるもので、エルニーニョ現象がペルーの海岸地方
   だけの現象ではなく、西太平洋はもちろんインド洋のモンスーンまで影響する
   大きな事変の一部であることが広く理解されました.
        ペルーチリ海流(フンボルト海流)は世界でもっとも顕著な寒流ですが、偏
   東風によって離岸するような流れとなるため、下層からの冷たい湧昇流があり、
   ペルー沖の海水温は太平洋の西側と比べると10°Cも低温です.海岸地方の気
   温もその影響で同じように低温です.エルニーニョ年にはこのシステムが一挙
   に崩れたのです.海洋ではそのとき何が起こっていたのか、この頃から人工衛
   星の民生利用が盛んになったので、海水温の分布と時間経過についてはデータ
   があり、解析が行われてエルニーニョの実態研究が進みました.
    しかし、何が原因で、あるいは何がきっかけで、太平洋の西側まで巻き込む
   海洋と気候が結びついた大事変が発生するのか、それはまだ完全には解決され
   ていません.エルニーニョ発生の予知ができるようになれば、その発展上に、
   地球温暖化シミュレーションが説得力あるものとして評価されることになるで
   しょう。ところで地球温暖化によってエルニーニョが起こるようになったとい
   うのは明らかに科学的誤解です.
    それでは古気候として、エルニーニョ現象を見るとどうなるのでしょうか.
   中高緯度地方が寒冷な氷期(低海水準期)にも、ペルー海岸で大洪水が起きて
   いたことは地形学的証拠から確かです.例えば1983年にも大洪水が発生しなか
   ったリマック川(ペルー)ですが、この川はアンデス山脈から流れ下ってきて、
   海岸に大きな扇状地(首都リマがある)を形成しています.この扇状地は海食
   崖で切られており、現在と異なる気候の過去に形成されたものです.海面変化
   との関係から、この過去とは氷期です.すなわちペル−海岸地方では氷期に、
   現在よりは南の地方まで大規模な河川氾濫(エルニーニョ)があったことを示
   しています.
    気球温暖化によってエルニーニョ現象が多発するようになると「考えている」
   研究者もいるようですが、筆者は逆に寒冷期にペルー海岸地域で大きなエルニ
   ーニョ現象が存在していたことから、逆に温暖化すればむしろ規模も頻度も減
   少するのではないかと予想しています.ただし根拠は古気候学的証拠だけです.
    気候変化の原因結果論には分からないことだらけです.エルニーニョ現象も
   その例外ではありません.次のIPCC第5次報告(出るとすれば)で、エルニー
   ニョ現象がモデルの中でどう扱われるか、個別に扱われるのか(大きいのは数
   十年に1回くらいの頻度)、平均場の事象として扱われるのか興味あるところ
   です.確実に確かなのは、台風がどこに何年何月何日に上陸するかは、100年後
   でもわからないでしょう.台風(渦)はランダム事象としての性格が強いから
   です.

Q. 熱帯地方は地球温暖化でさらに暑くなるのでしょうか ?
A.      一般的に熱帯地方では水がある限り、すなわち海か陸上の多雨林では、蒸発
   によって気温の上昇が抑制されていることが知られています.従って、気候変
   動の幅も小さいと考えられています.しかし、最終氷期の雪線(後出)は熱帯
   アンデス(コロンビア・エクアドル・ペルー)でも、ケニヤ山でも現在と比べ
   て、1000m 以上も低下していました.これは過去(氷期)の氷河の分布や圏谷
   地形から確実に押さえられる値です.気温減率を使って計算すると、6℃ 近い
   気温の低下を意味します.4500m−5000mの高度で気温が低下したのに、海面付
   近の気温が低下しないということは、大気の安定計算からあり得ません.
    熱帯海域の温度が 6℃ 低下したとすると、海水温 26.5℃が熱帯性擾乱の閾
   値だという経験則からは高温な海域が消滅し、台風は発生しないことになりま
   す.また氷期には気候帯が南偏するので、日本列島には台風が来なかったとい
   う説もありました.しかし、日本の氷期の河川地形は広い扇状地(砂礫氾濫原)
   です.氷期にも頻繁に台風が日本に来ていたことを示しています.
    氷期最盛期の気温が世界的に現在より 6-7℃低かったというのは、現在の氷
   河の雪線高度と氷期の雪線高度(圏谷底高度)の高度差を気温減率を使って、
   気温変化量に読み替えるという、古典的な方法で算出したものです.氷河が存
   在しないと使えない方法ですが、氷期の気温推定法として確定したものとなっ
   ています.例えば富士山には氷河は存在しないので、現在の雪線高度はそれ以
   上にあるわけですが、赤石山脈の圏谷底は 2700m位ですから、高度差は1000m以
   上、すなわち少なくとも 6-7℃以上温暖化したと推定できるのです.
    氷期から現在への 6-7℃という地球規模の温暖化とシミュレーションで予測
   されている100年後の 2ー4.5℃という温暖化は値が2倍くらいの違いとなって
   います.原因はともあれ、気候変化の地域的傾向が一致しているのかどうかは、
   古気候学の視点から興味あるところです.
    氷期には北半球に巨大な氷床(ローレンタイドおよびスカンジナビア)が存
   在したので、北半球の気候配置は現在と大きく異なっていたと考えられます.
   従って単純に比較しても無意味です.しかし熱帯地方や南半球における氷期か
   ら現在への気温変化は、シミュレーション結果である Figure SPM. 6.の検証
   に、ある程度使えるのではないかと考えています.
    アンデス山脈に沿って雪線高度の低下量を氷河地形を使って調べると、熱帯
   だけでなく、中緯度高圧(乾燥)帯でも、偏西風(低気圧降水)帯でも、氷期
   から現在への気温の昇温はほぼ同じ値 6-7℃となります.氷期から現在までの
   気温上昇(緯度についてほぼ一様)と、シミュレーション推定による気温上昇
   (南緯55°近いフェゴ島付近で小さく、赤道付近で大きい)は傾向が明らかに
   異なります.
    以上のことから、氷期から現在への気温変化と、地球気候モデルを使ったシ
   ミュレーションによる気温変化とでは、分布傾向が明らかに合致しない地域
   (少なくともアンデス)が存在します.氷期には北半球に大きな氷床が存在し
   たのですから合わないのは当然としても、熱帯と南半球(アンデスだけですが)
   で合致しないのは気になります.シミュレーション結果図は、一見もっともら
   しいのですが、細かく観察すると妥当性が疑われる地域が見つかりました.
    地球の温度が 2℃ 上昇などという漠然としたものではなく、Figure SPM. 6.
   が提出されているのですから、他の地域についても古気候学の見方から、検討
   して見ることが必要でしょう.最初からシミュレーションの有効性を信じたり、
   疑って何もしないのでは科学の進歩は望めません. 

Q. 海氷と温暖化の関係はどうなっているのでしょうか ?
A.   北極海やグリーンランド沖、南極大陸の周辺で、冬に広がる海氷はその地域
   の比較的短期間の気候変動を示す良い指標です.北極海周辺では面積が縮小し
   ているという報告があるので、この地域の夏季の温暖化が推定されます.
    海水(塩分濃度約 3.5%)が冬に凍るとき、塩分は氷に入りにくいので、結
      果として塩分濃度の高い低温な海水が取り残されます.これは重いので沈込み、
      深海底に堆積します.南極海でこのようなことを何千万年も続けてきた結果、
      地球の深海底は主として南極海起源の冷たい深層水で満たされることになりま
      した.これは新生代・第四紀・繰り返し訪れた氷期から続く気温の化石みたい
      なものです.表層の海水は温度が高く軽いので、浮いている状態です.大気の
      温暖化で海水が温暖化するというのはこの表層水(場所によるが例えば200mく
      らいまで)のことです.
    余談ですが、水の密度が最大になる温度が 0℃ ではなく、4℃ であり、氷の
   比重が1以下であることは、原子の構造から物理的には当たり前のことでしょ
   うが、海水が表面から凍り、それが浮いてくれることに神秘的なものを感じざ
   るを得ません.氷が沈むようだったら、現在の地球と生命は存在しなかったで
   しょう.
    要するに、海洋は熱平衡が極端に揺らぐことを抑えてくれている緩衝体であ
   ると理解できます.ただし表層水と深層水ではその成因が異なるだけでなく、
   効果が異なるので分けて考える必要があるようです.海洋に設置または放流す
   るブイによる観測値の蓄積が始まっています.今後の成果が期待されます.

Q. 人間は二酸化炭素ガスをなるべく出さないようにすべきでしょうか ?
A.     二酸化炭素ガスに温室効果があることは物理的事実です.しかし地球科学と
   して見た場合、人間が出す量が地球全体でどれくらいの影響力を持つか、量的
   な解明が必要です.それを巡って地球温暖化人為説の科学的根拠が問われてい
   るのです.
    炭酸同化作用を行わない微生物や動物は、植物が合成した有機物を分解して、
   二酸化炭素(ガス)を供給するという役目を担って地球上に現れた生物です.
   地球規模で見ると、植物の栄養である二酸化炭素の空気中濃度は低すぎるので、
   <植物に心があれば>動物の存在を評価しているはずです.動物の一種である
   人間の活動がその役割の度を越している、というのが地球温暖化人為説の地球
   倫理的な考え方です.
    石油・天然ガス・石炭は、二酸化炭素が今より豊富で温暖だった中生代や古
   生代に植物の光合成作用で作りだされた有機物が地層中に埋もれていたもので
   す.燃やして「化石太陽エネルギー」を取り出すと二酸化炭素が生じます.す
   べての動物や微生物は植物が固定した有機物(太陽エネルギー)を分解して、
   植物の栄養である二酸化炭素を植物に供給しています.植物の所為で地球の初
   原大気から二酸化炭素が減少し(代わりに酸素が増え)、その濃度は 0.04%
   (重量比)しかないのです.しかし人間だけが栄養以外の目的で有機物を大量に
   分解して二酸化炭素を空気中に放出しているといえるでしょう.
    人間は植物や他の動物の生命を奪って生きているからといって、そのことに
   罪悪感を持つ必要はありません.動物も植物もお互いに調和して生命の星地球
   を形成しています.くどいようですがもう一度繰り返すと、人間が「度を越し
   ているかどうか」の判断が考え方の分かれ道となります.
    ちなみに温室効果ガスとは、地球に入ってくる可視光(太陽エネルギーの大
   部分)には透明ですが、地球表面から宇宙に出ていく長波放射を吸収して、地
   球圏に熱を留める気体のことをいいます.二酸化炭素の他にメタンやオゾンが
   注目されていますが、もっとも量的に重要なものとして水蒸気があります.
    水蒸気は放熱して雲になったり、その雲の水滴が吸熱蒸発したり、あるいは
   逆に大きな粒=雨になるなどします.水蒸気と雲では短波(太陽放射)長波
   (地球放射)に対する物理的性質が異なるので、「地球気候モデルによるシミ
   ュレーション」のなかでは、きちっと扱われているとは思いますが、かなり微
   妙なパラメータを使ったプログラムになっているのではないかと予想していま
   す.ただし、空気中の水蒸気は人為的にはコントロールできないので(水蒸気
   の発生を抑制しよう、とか、人為的に大量の水蒸気を大気に供給しようなどと
   う社会運動はあり得ないので)科学の話ではなく「温暖化防止」という話の時
   は、誰でも最も効果の大きい水蒸気を無視して議論を進めることになっていま
   す.

Q. 二酸化炭酸濃度は増え続けているようですが、大丈夫でしょうか ?
A.     地表付近の影響が少ないマウナ山(ハワイ)での約30年分の観測データが
   あります.詳しくデータを見ると季節変化が認められたので、筆者は「地理的
   発想から」(季節変化があるなら)場所による変化もあると考えていました.
   各地で二酸化炭素濃度の観測が始まり、実態がだんだんわかってきました.大
   気の下層ほど濃度が高いが、北半球の夏に低くなるという年周変化(おそらく
   主として植物による吸収のために起こる)を繰り返しながら、その季節変化が
   1年という時間間隔を待たず、海の面積の広い南半球に伝播していくようです.
   植物(特に海洋の植物性プランクトン)の光合成活動の季節変化や海水温によ
   って変わる海洋水への吸収なども関係しているようです.
    人間による放出量については地球上で甚だしい地域的偏りがありますので、
   それがどのように拡散してゆくのか、これからさらに広範な観測が必要でしょ
   う.化石燃料起源の炭素にはC-14が含まれていないので、ある程度追跡が可能
   かもしれません.
    南極などの氷から過去の二酸化炭素濃度や気候変化についてのデータを得る
   ことが出来ます.このような研究は非常に重要です.地球科学では将来何が起
   こるかを予測するとき、過去がどうであったかが最大の根拠になります.
    現在のような濃度レベルでしかも変化速度が同じような時代が過去にあった
   のであれば、現在の状況は「大丈夫」と判断できるでしょう.
    地質時代の中生代には、二酸化炭素濃度が現在の数倍も高く、気温が現在よ
   り7−8℃高く、植物が大繁茂し(氷河も砂漠もないくらい)、気候の季節変
   化も穏やかで(年輪がないくらい)、動物(生態系の頂点は恐竜)も大繁栄し
   また.ですから、数℃の温暖化ではそのまま、地球気候が暴走することはない
   でしょう.

Q. 地球の気温は上昇中ということですが、科学的根拠は確かでしょうか ?
A.    これには地球科学的注釈が必要です.無条件で事実というわけではありませ
   ん.都市域では水が蒸発する(熱が奪われる)地面や緑の面積が少なく、人工
   排熱などのために、周囲より高温な都市気候(ヒートアイランド)が現れてい
   ます.例えば東京(大手町)では100年間ほどで平均値で 1.5℃、「冬の明け方
   の気温」については 4℃以上も暖かくなっています.この現象は晴天で風の弱い
   日にはもっと顕著です.都市の温暖化はすでに起こっていることですが、その
   温暖化の程度は「地球温暖化」として予想される値に匹敵するほどです.
    人間は緑の少ない都市を作り、そこに住む人類が半数を超えています.人類
   の過半にとって温暖化はすでに感覚的に理解できる程度になっています.すな
   わち郊外に比べて、その差は数℃に達していますので、高齢者が昔はもっと寒
   かったというのは観測データで裏付けされることとなっています.
    人が多く住んでいるところの気候環境が重要ですから、気候観測点は都市に
   多く存在します.しかし、すでに温暖化してしまっている都市の気候データは
   そのままでは地球温暖化の証拠にはなりません.都市気候による温暖化分を補
   正してやる必要があります.観測値そのものではないので、どのように補正す
   るかによって結果は変わります.
    東京大手町の気象庁観測点は、東京湾の埋め立ての進行につれ、海から遠く
   なり、海風の影響も弱まりました.しかしそれでも、海からの空気が到達する
   と、一時的に低温になります.西側の皇居からも夏の涼しい風が吹くかも知
   れません.気象庁の周りは皇居以外は業務地域で、弱風日にはそこからの排熱
   (ビルの冷暖房・車の排気など)のため、休日と非休日で気温に差が出るほど
   です.こんなに複雑な影響を受けている気温から、地球温暖化の証拠となる人
   為の影響のない気温を抽出できるでしょうか.人口5-10万程度の中小都市でも
   中心商業地などで温暖化が観測されています.
    絶海の孤島や高い山地・南極など、人の影響のない場所での持続的な観測が
   重要です.海洋に観測ブイを流すなどして、地球の7割を占める海洋上での気
   温や水温の観測が始っていますが、まだ地球的な長期変動を検出するほどの観
   測期間には達していません.
    また気温の変動には地域差が著しいことがわかっていますので、1ヶ所の観
   測データや体験を例に取り、地球全体の温度の変化、すなわち地球温暖化の事
   例にすることは、明らかな誤りです.しかしマスコミなどの報道では、具体性
   があるというので、よく行われることです.
    現在は小氷期と呼ばれる17−19世紀の寒冷な時代(現在より1.5℃位寒
   冷で日本では飢饉続発)のあとの温暖な時期に当たっています.さらにもっと
   長いタイムスケールで見ると、先史時代にも温暖な気候に恵まれた時代(縄文
   時代で 1-2℃温暖)もありましたし、寒冷化した時代(弥生あるいはローマ時
   代)もありました.地質時代についてみれば、北半球の高緯度地方では約7000
   年前に大陸氷河がほとんど消滅し温暖な時代になりました.その結果次の氷河
   時代がくれば現在は間氷期と呼ばれるほどの温暖な時代に当たっています.こ
   の温暖な間氷期は過去にあまり長く(1万年程度、ある1周期だけ2.5万年し
   か)続いたことがないので、現在は間氷期の終わり頃に位置している可能性が
   高いといえます.
      さらに長い地質時代のタイムスケールでみれば、現在は氷河時代が次々にや
      ってきた第四紀に属しています.第四紀は、二酸化炭素濃度が10倍近くあり、
   非常に温暖であった中生代(恐竜の時代)のあとの寒冷な新生代(哺乳類と花
      の咲く植物の時代)の中でも特に寒冷な時代に当たります.
    このように、気候の変化は地域的差異を把握した上で、さらにいろいろなタ
   イムスケールで考察しなければならないのです.短いあるいは少数の地点のデ
   ータから地球全体を推定するのは科学的にはきわめて不十分で、間違いといえ
   るほどのことです.

Q. 人間が排出する二酸化炭素によって気温が上昇していることはほぼ間違いない
  と断言されるようですが ?
(IPCC次期報告ドラフト、朝日新聞記事などによる)   
A.    化石燃料の生産量から最終的に二酸化炭素となる分が試算されています.二
   酸化炭素の排出には硫黄や窒素などの酸化化合物が伴い、大気・水質汚染を引
   き起こす原因となります.また大量なエネルギー消費で指標されるような産業・
   経済活動によって地域環境問題が深刻な事態となります.このことから疑いな
   くエネルギーや資源を節約すべきです.地球温暖化防止などという名目を設定
   する必要など無いほどです.
       朝から昼に向かって、あるいは冬から夏へと気温の上昇は急激ですが、誰も
   心配しません.その日変化・年変化の原因が分かっているからです.しかし、
   それより長いタイムスケールの気候変化についてはどうでしょうか.その実態
   と原因となりそうな事象が何であるかはわかっていますが(太陽活動、火山噴
      火の噴煙、地球の自転公転の要素、大気・海洋・雪氷システムのフィードバッ
   ク作用による自己振動など)、それらがどれほどの効果を持っているのか、に
   ついて定量的にまだわかっていないのが現状です.
    前に述べたように、人間が放出する二酸化炭素を無視できた時代にも気候変
   化があり、その変化の自然原因と量的な効果が分かっていないのに、ここ50
   年間ほどの温暖化だけが人間の所為であるという判断は、科学を超えたもので
   す.

                気候変動 = 自然原因の変動分 + 人為原因の変動分

      において、自然原因の変動分が量的に把握できないうちに、

        気候変動 = 人為変動分

      と断言することは科学としてできないということです.

Q. 地球温暖化はすでに始まっている.ヒマラヤなどの氷河の消滅による湖の決壊
  やツバル島の沈水など深刻な前兆が見られているようですが ?
A.    氷河の前進や後退、それによる洪水などは有史以前にもあった普通の自然現
   象です.山地の小さな氷河は「秋」になれば、より大きな氷河は「気候温暖期
   の終わり」頃になれば、もっとも面積が縮小します.南極やグリーンランドの
   氷河の体積は数千年以上の時間差で気候に反応します.このように気候変化に
   対する氷河の応答には氷河の規模に応じた時間差があります.また気候変化あ
   るいは氷河の応答には地域差があり、北アメリカ大陸の氷河がもっとも拡大し
   たのは2万年前ごろであるのに、アンデス山脈の氷河がもっとも拡大した(2
   万年前に比べて面積で3倍以上)のは、5万年前ごろでした.いっぽう、いわ
   ゆる小氷期(数百年前から百年前ごろ)の寒冷気候に対応して小さな山岳氷河
   の前進が認められたのは、アルプス山脈・ケニヤ山・ロッキー山脈・シェラネ
   バダ山脈・熱帯アンデス山地などの山岳氷河です(筆者の現地調査および文献
   による).南極やグリーンランドの氷床では小氷期の前進があったかどうか、
   報告はなく、はっきりしません.
    観光地として多くの人々が訪れる、ヨーロッパアルプスやカナディアンロッ
   キーの氷河の末端付近には、過去の氷河の末端を示す指標が設置されています.
   小氷期(15世紀から20世紀中頃まで)の最盛期から現在まで、どのように温暖
   化が進行したかが、目で見ることができます.氷河の末端に形成されるモレー
   ン(堆石)地形には、その形成が新しいためにまばらな植生しかみられません.
   小氷期に形成された、寒冷な気候を示す(すなわち現在の氷河から離れたとこ
   ろに存在する新しい)モレーンは、ケニヤ山(アフリカ赤道帯)、ヒマラヤ・
   アンデス(赤道〜中緯度帯)などにも存在します.すなわちこの時代が世界的
   に寒冷であったことを目で見える形で示しているといえます.
    海面変化は主として北アメリカ大陸の(従として北西ヨーロッパの)大陸氷
   河の氷河時代の消長に支配されており、現在の山岳氷河の変化は海面変化に量
   的には関係しません.地球上の山岳氷河は全部融解しても海面が 50cm 上昇す
   る分しか存在しないからです.山岳氷河では 2℃ の気温上昇は雪線高度(積
   雪と融雪がバランスする高さ)の約 300m の上昇分に相当します.この程度の
   変化では氷河の体積が1/10も減少する(海面換算5cm上昇)ことはないのです.
   すなわち人間が作ったダムへの貯水によって、海面が低下した分(最大で2cm)
   も考慮しなければならない程度の量です.乾燥・半乾燥地帯などに貯留されて
   いる地下水の量の増減の方がはるかに重要です.
    氷河の融解というと、テレビなどに適した、すなわち動きのある映像として、
   アルゼンチン氷河公園地域(高緯度帯アンデス)のモレーン堰止め湖に流出し
   ている氷河末端の崩壊が有名です.この付近は南半球の(ヨーロッパとは季節
   が逆の)有名なリゾート地で、観光船から氷河の滝を間近に観察できるので、
   取材が簡単なのです.ただし夏のリゾート地です.夏になると氷河の表面が溶
   けて、その水が氷河に吸い込まれ、その水のために氷と底の岩との摩擦が減る
   ので、氷河の流速が増し、氷河の末端が湖に落下する現象が観光に耐えるほど
   の頻度になるのです.
    かって両極の氷が溶けて海面が上昇するという間違いがなされたことがあり
   ましたが、山岳氷河の融解による海面上昇説も量的に見れば誤りです.このよ
   うな科学的誤解を正すことが、科学的には無知に等しい、しかし善意の地球環
   境論者から非難されるとしたら、それは何かが間違っているからです.非国民
   ならぬ非地球人のようなレッテルをはってしまう風潮はきわめて危険な道に連
   なります.
    海面上昇被害のシンボルともなっているツバル島については、世界の海は連
   なっているのに、現在そこだけの沈水現象(海水の進入・洪水など)であるよ
   うなので、もともと沈水しやすいところに飛行場や住宅を造ったか(干拓地や
   埋め立て地など)、あるいは局地的な地殻運動がその原因だと考えられます.
   もしそうだとすると、地球温暖化による海面上昇を疑うより先に、同島の地殻
   運動の実態を調べる必要があるでしょう.
    海面変化には主として天文学的理由によって、明瞭な日周期・年周期(潮差)
   がありますが、従として気象(気圧・風)による変動もあります.長期的には
   海流の変化・局地的な地殻運動・ハイドロアイソスタシイ(海水の重さで地殻
   が沈む)などの原因もあります.氷河性海面変化だけが原因ではないのです.
   海水温の上昇による膨張は、どこで、どの深さまで、どれくらいの温度の上昇
   があるのか、データが不十分なので、科学的には可能性の指摘、あるいは根拠
   の弱い推定にとどまります.今後の観測値の蓄積によってこれまでの予測値は
   だんだん小さな値になってゆくのではないでしょうか.


Q. それでは、温暖化人為説の根拠はどこにあるのでしょうか ?
A.    それはコンピュータによるシミュレーションの結果です.もちろん、科学の
   世界の話ですから、いかに巨大な費用がかかり、高速な超大型コンピュータを
   用いたからといって、シミュレーションの結果が正しいということを保証する
   ものではありません.現実の地球システム(大気・海洋・雪氷・地表など)を
   コンピュータに取り込むモデルの構造やアルゴリズムが基本的に重要です.
    地球科学的事象はスケールが大きいので、科学の普通の方法である実験がで
   きません.そこでシミュレ−ション(数値実験)が有効な手段となるわけです.
    日本の現在の天気予報がシミュレーションの結果に基づいていることはよく
   知られています.そして少々外れることもありますが、多くの人々がその予測
   を信頼しています.しかし 50 年後、100 年後のこととなると天気予報とは本
      質的に異なる予測となります.その結果と現実世界とのキャリブレーション
     (検証)ができないのですから、すくなくともシミュレーションのモデル化や
      アルゴリズムが従来の科学的知見に合致していることが求められます.モデル
   化に携わっている人は、現在学的な気象学の知識だけでなく、「予測のタイム
   スケール」がそれを越えていることから、古気候の知識も十分に持ってもらい
   たいものです.危機を警告するために、あるいは世論を誘導するためにシミュ
   レーションを行っているのだという疑いがかけられるようだと、科学的信頼を
   一挙に失うことになります.
    地域気象シミュレーションは天気予報に使われているため、絶えず検証を受
   け、具体的にどのように行われているか知らない一般の人々からも信頼を得て
   います.ある時点の観測値(初期値)から出発して、数日後までは確度が高い
   のですが、そのまま計算を続けると、だんだん現実(その後の観測値)から離
   れていきます.そこで絶えず観測値を更新してやることでこのシミュレーショ
   ンは維持されているのです.大気だけでなく海洋を含む、もう少し長期(タイ
   ムスケールとしては月レベルか)のシミュレーションこそ、現在最も重要な課
   題ではないでしょうか.何にもまして検証が可能なタイムスケールだからです.
    地域気象シミュレーションと地球気候シミュレーションを同列におくことは
   できません.データでも手法でも方法論としても、また検証可能なタイムスケ
   ールのシミュレーションが無視されているという点からみても、両者には大き
   な断絶があるのが現状でしょう.
    地球気候モデルによるシミュレーションついては、そのプログラムが公表さ
   れていないので、筆者はよく理解できていませんが、人間が放出する二酸化炭
   素の量によって(シナリオによって)結果が変わることが公表されていること
   から判断して、二酸化炭素の量は外部独立条件として与えられているようです.
   そうだとすると、人間が放出する二酸化炭素(物理的な温室効果ガス)による
   原因だけからは地球が温暖するという結果しか出てこないことになります.ま
   た、人間が関与しない時代について、気温変化がまずあって、その結果として
   二酸化炭素濃度が変わるという事実はどのようにモデルの中にとりこまれてい
   るのでしょうか.プログラム作成に関わる関係者の明言がほしいところです.
    地球の二酸化炭素は循環しており、地質時代にも大気中の二酸化炭素濃度が
   自然に気候と共に変動していることから、その濃度変化の第一義的な原因はあ
   くまで気候の変動にあるのであって、逆に温室効果ガスの濃度変化が気候変化
   の主たる原因になっていたのではないことは明らかです(炭酸同化生物の発生
   および繁茂はもっと長いタイムスケールとしている).ですからシミュレー
   ションのモデルとして、独立に気候を変化させ、それによって二酸化炭素濃度
   が結果として変化するという主ルーチンが必要です.その上で、人間が放出す
   る二酸化炭素濃度の効果をサブルーチンで評価すべきでしょう.はじめから二
   酸化炭素濃度の変化を独立に仮定(シナリオ作成)して結果として気候変化を
   得ているのであれば、本末転倒としか言いようがありません.
    気候変化と二酸化炭素濃度について地球のシステムを考えた場合、正・負の
   フィードバックがあると考えられ、どちらの要因が独立的であるかを量的に考
   察する必要があるということです.地球外の原因(太陽活動、天文的軌道要素
   の周期など)やシステム外の原因(火山活動、大陸移動など)、すなわち外部
   独立条件によって、気候(特に気温)は変動しますが、二酸化炭素濃度が気候
  (気温)と独立に変動するメカニズムが存在するとは現在の知識では考えられま
   せん.
    要するに、これまで得られた古気候の成果を無視しないとすれば、気温の上
   昇が主原因で二酸化炭素濃度が上昇してきたのです。これに従として人為放出
   による分が加算されていると考えるべきです.このことが示されない限り、地
   球気候シミュレーションは科学としての評価を得ることはできないでしょう.
   シミュレーションの結果が危機の可能性を含んでいる範囲内にあるから、現在
   の時点で警告を発する意味がある、従ってその根拠となるシミュレーションも
   意義があるという主張がなされていますが(IPCCの基調)、それはとりも直さ
   ず、シミュレーションが政策立案・実施という目的でなされたものであること
   を述べたものと解釈されます.科学的に地球の現象を追究しよういう香りが少
   しも感じられないのは残念です.
   

Q. それでは地球温暖化人為説の確かな科学的根拠はないということでしょうか ?
A.   残念ながらその可能性を否定できません.30年ほど前に、まもなく氷河期にな
  るという説が、学界や社会で広まったことがあります.地球の過去の歴史を調べ
  ると、温暖な時代はそろそろ終わりになり、核爆発や火山の大爆発で空気中にま
  き散らされる塵埃によって、太陽光が遮られ、太陽光を反射する雪氷の面積が増
  え、それが正のフィードバックとなって、一挙に氷河期に突入するという筋書き
  でした.
   その後、地球科学に、これほど正反対の気候変化を予測することを許す画期的
  な発見があったでしょうか.正反対に変わったのは、社会の側の危惧の念(核戦
  争から温暖化悪影響説への切替え)だけです.「地球温暖化人為説は社会から待
  望されて出てきたものです.社会からの要望が無ければ、この説は科学的定量的
  根拠がが定まらない数ある気候変化原因説のうちの1つであるにすぎないでしょ
  う.」
   しかしこれだけ社会に普及したのは、かなり多くの政治家や新しい全体主義者
  の宣伝に、「良心的な大衆」が追従したからで、いわば多数決で認められた「真
  実」のようなものです.科学者として「温暖化人為説を肯定する論文が多い」、
  などと主張して、論文数で真偽を争ってはならないことも明らかです.
   温暖化人為説は、それが「科学的真実である」と主張するには、<科学的に>
  不都合なことがむしろ多いのです.研究も進まないうちに「科学的事実」とされ、
  「防止」という対策がむしろ先行していることに、戸惑いを感じている地球科学
  者も多いのではないでしょうか.
   現状では過去の地球を、現在の地球のシステムをさらに深く知るための着実
  な観測や研究の進展が求められます.社会から求められている「温暖化人為説」
  を翼賛するだけでは地球科学の魅力はなくなり、地球科学は衰退し、結局社会の
  ためにならないと信じています.

 地球気候変化原因説に対する私の考え(結論)
A.  「二酸化炭素の濃度変化は地球気候変化の支配的な原因ではなく、地球気候変化
  が原因で二酸化炭素濃度が結果として従属的に変動する」と考えます.
      氷床コアの分析によって、明らかになった二酸化炭素濃度の変化と地球気候
   (気温・海水温)の変化は30万年以上(氷期−間氷期サイクルで3周期分)に
  わたって完全に同期同相であり、その相関は完璧です.そして、二酸化炭素濃度
  が気候と独立に周期的に変化する理由は見つかっておらず、しかも炭素の循環は
  地球の中で閉じています.一方、気候(気温)は大気外の原因でも変動すること
  が知られています(太陽活動、公転・自転軌道要素の変化などの天文的原因、地
  球内のことですが、気候とは独立な大陸移動、火山活動など).太陽エネルギー
  は地球に到達してまた宇宙に逸散していきます.地球の気温は地球を通過するエ
  ネルギーの流れの中の状態量です.どちらが原因であるか議論する余地もないほ
  どです.
   最近の50年間ほどに限れば人間による二酸化炭素の放出と空気中濃度の相関は
  見事な正の相関です.しかし人為による二酸化炭素の放出がほとんど無視できる
  過去30万年まで広げると、完全に無相関となります.以上のことから、
  「人為放出がなくても気候の温暖化によって空気中の二酸化炭素濃度が増加する」
  と結論できます.そこで、人為放出のない場合に、例えば2℃の気温上昇(自然・
  人為を問わず)によって、空気中の二酸化炭素濃度がどれくらい上昇するかを見
  積もることが地球の科学者の任務となります.
   二酸化炭素は温室効果ガスですので、自然原因の温暖化−>濃度増加−>温暖
  化という正のフィードバック機構として働きます.しかしこの機構は地球の過去
  の温暖期にも働いていたはずですので、温暖化−>人為放出量の増加−>温暖化
  という愚かなループに陥らないかぎり、人為によって地球の熱環境が暴走するこ
  とは、過去の地球の歴史から判断してあり得ないことです.現在より濃度が数倍、
  気温が数度℃高い時代の後にも寒冷な時代が来て現在に至っているからです.
   

以上に述べたように、地球温暖化人為説の主要な論旨は、
    人間の二酸化炭素排出
        −−>大気中濃度の増加
             −−>気温上昇

  ということであり、
  さらに「地球温暖化の影響は悪いことばかり」だから、

     温暖化を防止しよう !!

  というキャンペーンに連なります.
   しかし、「良心的な大衆」が「温暖化防止」のためにすることは、どう見ても
  良いことばかりです.エネルギーや資源の無駄遣いを「もったいない」という気
  持ちを心の底にもって、なんとか抑えようとすることに悪いわけはありません.
   「消費は美徳」 などといって発展神話にとりつかれた時代から見れば、現在は倫
  理的に正しい道を進んでいると思います.
    「温暖化防止政策」は科学の名を借りて、方便として、倫理的な行動を勧めて
  いるのでしょうか.「良心的な大衆」には、方便など用いなくても、すくなくと
  も日本では、「もったいない」という日本古来の倫理感だけで十分ではないでし
  ょうか.「温暖化防止」を目的とすると、「怪しげな温暖化防止派生政策」がま
  かり通ります.しかし「もったいない」を行動の基準にすると、ひとりでに「温
  暖化防止」にもなりますし、地域環境悪化・汚染なども防げます.なにより便乗
  して入り込んでくる「怪しげな温暖化防止派生政策」を見ぬくことができます. 



Q. 温暖化の影響評価を行うに当たって、必要なことは何でしょうか?
A. 
  1)影響評価を行うに際し、最も基本的なことは、主体が何であるかを明確にして
      環境の評価を行う必要があるということです.同じ環境や環境変化であっても、
   主体によって評価が異なるのは当然です.個人はもちろんのこと、国内の地域、
   国、国を超える地域、価値観を同じにする社会集団、職業、業種などなど、
   主体を何に想定するかを強く意識して考えを進める必要があります.
 2)偏った変化予測事例だけを例示しながら、評価は受け取る側に任せるという態
   度は多くの人に偏見を持たせることになり、例えば政治家のプレゼンテーショ
   ンとしては有効かも知れませんが、科学的事実を伝える場合にとるべき方法で
   はありません.
 3)評価が相反する事例があるときに、片方だけを取り上げるのは科学的信頼性を
   失うことに直結します.例えば、
    ・季節性疾病の場合は、夏季の疾病例だけを取り上げる.
    ・農業への影響の場合は、夏季だけを取り上げ冬などには言及しない.
    ・空調(冷・暖房)では、冷房の費用増やエネルギー増だけを取り上げる.
    ・都市の生活環境として都市気候による温暖化と地球温暖化を分離しないで、
     「夏」の「日中」の気温だけを取り上げる.
    ・影響に地域的な差があるとき、すでに温暖な地域だけを取り上げ、現在寒
     冷な地域には言及しない.
    ・影響に業種による善悪があるときは、悪い業種の例だけを取り上げる.
    ・温度感覚の個人的好き嫌いについては、暑さ嫌いの人だけに訴える.
    ・温暖化の悪影響例を理解して貰うには、夏の方が説得力があるなどと策謀
     する.
      などなど、−−−−
 4)自然事象を取り上げ、災害などに結びついたときだけ、地球温暖化の影響か、
   と暗示的に指摘すること. 

  本当は善意と思いたい国(ある省庁)、マスコミ、団体等が行っている地球温暖
 化防止キャンペーンの多くは、一方的な偏った見方をしていることが、あまりにも
 見え見えで、知らずにネガティヴキャンペーンを行っているような事態になってい
 るのは、上述 の視点が欠けているからでしょう.これには「もったいない」としか、
 いいようがありません. 

次に地球温暖化の影響評価について具体的な例を取り上げて見ましょう.
 これだけ「温暖化防止」のキャンペーンが行き届いたのですから、誰でも温暖化の
深刻な悪影響とされる項目をいくらでも上げることができるでしょう.
 しかし、ここではそれとは違う別の良い影響もあるのだ、という具体例をいくつか
取り上げて見ます.Q&A を読んだ後に、良い影響と悪い影響だと言われている項目を
貸借表のように、左右に分けて点検してみてください.

Q. 温暖化の影響は悪いことばかりです!
A.   そんなことはありません! 「変化はすなわち悪である」という超保守主義者
  でない限り、これは明確なウソです.人間や人間社会あるいは国・地域にとって、
  「等しく全てに悪である気候変化」などは環境論としてあり得ないことです.気
  候の温暖化が良い人も、良い職業も、良い会社も、良い地方も、良い国もありま
  す.もちろん悪いことも沢山あるはずです.環境の評価は言うまでもなく、主体
  によって異なります.しかし地球温暖化を防止しようという人々が大勢いるので
  すから、悪影響に関する知識は十分に普及していると思われます.そこでこのペ
  ージでは、主体によって、むしろこんな良いこともありますよ、という日本の例
  をいくつか取り上げて、紹介いたします.

Q. 温暖化したら冷房費が増加するのでは ?
A.  地球温暖化で夏の冷房エネルギーの需要は増加します.明らかに悪いことです.
  しかし、冬の暖房エネルギー需要は明らかに減少します.日本全体で、2℃の温
  暖化によって冷房に要するエネルギーはそれなりに多く必要になりますが、その
  3倍ほど暖房エネルギーが節約できます.現在暖房だけが必要な北欧諸国も同じ
  はずです.日本では農作物にさえ、石油を燃やして暖房しています.答えは簡単
  です.温暖化が起これば、日本では冷・暖房エネルギー(石油・天然ガス・石炭)
  の使用量を減らすことができるのです.
   寒い地方の国々(ヨーロッパ)は最初に先進工業国になれたので、暖房で暖か
  い冬を過ごせるようになり、それが普通だと思っています.赤道に近い発展途上
  国では暑い夏を過ごすための冷房がまだ普及していません.人口の多いインドや
  熱帯アジア地域で冷房を先進国の暖房並み始めたら、それだけで、石油資源は欠
  乏するでしょう.地球環境問題は南北問題でもあるのです.
   皮肉なことに地球気候モデルによるシミュレーション結果によれば、温暖化は
  夏の気温ではなく、冬の気温の温暖化を、さらに低緯度帯ではなく、中高緯度帯
  の温暖化を予測しています.そこには地球上のエネルギーの半分を消費する先進
  国が位置しています. 
    また、温暖化防止のためにエネルギーの消費を抑えるというのであれば、同じ
  論理で寒冷化が始まったら二酸化炭素の放出を推奨することになります.明らか
  に間違った考え方です.エネルギーの浪費が悪であるとする倫理的規範は別にあ
  るべきで、温暖化にこじつけるのは、方便かもしれませんが科学的には間違って
  います.地球を冷房したり、暖房しようなどと考えるのはばかげています.人間
  が作り出すエネルギーフロー(化石燃料の消費)に比べて、太陽に起源のあるフ
  ローは桁外れに多いのですから.

Q. 地球温暖化で日本でも熱帯性伝染病が大流行するといわれていますが・・
A.  きわめて幼稚な間違いです.かりに4℃温暖化したとしても、現在の沖縄地方
  を上回る気温になる地域は、それ以北の日本列島ではほとんどありません.現在、
  沖縄地方で熱帯性伝染病が大流行しているでしょうか.その沖縄地方でさえ、台
  湾やフィリッピンより4℃以上低温です.熱帯性伝染病の流行は医療・保健のレ
  ベルに依存します.筆者は日本の医療レベル・保健制度を信用しています.地球
  温暖化の場合だけ、日本の医療が低レベル化し、保健制度が崩壊するなんて、あ
  りえないことです.

Q. しかし地球温暖化によって、熱中症が増加するといわれています
A.  熱中症の発症は夏に集中していますから、そのとおりでしょう.そのために亡
  くなる人も日本中で年百人のオーダーになるでしょう.しかし、同じように季節
  病である脳卒中のことも、考慮する必要があります.脳卒中の発症は冬にかなり
  集中しています.日本人の死因の 1/3 近くはこの病気です.そして、心筋梗塞
  も気温の低い季節に起きやすいから注意した方がよい、というお医者さんの記事
  を見たこともあります. 沖縄など暖かい地方の人たちは高齢になってもお元気
  だということも良く聞きます.
   一般に温暖化は夏よりも冬の気温に顕著に現れます.このことからわかるよう
  に、一方的な一例だけをとり上げることは誤りです.

Q. 暖冬になったら、雪不足で雪祭りが出来なくなったり、スキー場が困ります
A.  たしかに、その関係者にとって地球温暖化は打撃でしょう.しかし雪国の過疎
  地には、自分の家の除雪も出来なくなった高齢者が取り残されていることも、忘
  れていけません.そんな人たちに、雪は多い方がよいか、少ない方がよいか、こ
  んなわかりきったことは尋ねてみるまでもないでしょう.雪国では昔からそうだ
  ったかもしれませんが、家や道路などの除雪費も膨大です.スキー場にだけに雪
  が降るといいのですが・・・・

Q. 地球温暖化で暖冬となり、雪不足で田植期の水不足が起こるのでは ?
A.  確かにその可能性はあります.ただし温暖化による降水量そのものの増減は別
  として、降水が、雪か雨かということであれば、冬の河川流量を貯めることの出
  来るダムがあれば同じことです.
   一般に、融雪洪水よりは積雪・融水資源の方がはるかに重要です.大河川とい
  えども慣行水利権によって農業用は保証されています.それを上回る河川流量の
  利用権は国有とされ、現在では民間の電力会社などに払い下げられています.雪
  国では冬の降水量は、もし雨だったら洪水になるほどの量に達しています.しか
  し、降水は積雪となり春になって徐々に融雪するため、水資源としての大きな価
  値が、ダムを造ることなく、タダで得られています.
   以上のような理由から、雪不足は農業に打撃を与えるという側面もありますが、
  農業用として確保された分を越える雪国の水資源のおかげで、現在安い電力を利
  用できている雪国でない地方にも大きな損失があることも、知っておく必要があ
  ります.
      たしかに田植期の水不足が起こるかもしれませんが、それより、雪国で満々と
  流れる水のエネルギーは雪のないことを願っている大都市で使われていることも
  知るべきです.
   ダム貯水量の管理運用方式を 50年も100年も変えないことを前提にして、水資
  源問題の議論をしても無意味です.過去のダムはほとんどこの長さの時間の経過
  で作られたものです.

Q. 地球温暖化によって、蒸発量が増えることで砂漠が拡大するのでは ?
A.  高温化−−>蒸発量増加−−>水不足
  という物理的素過程だけで、単純に地球を理解しようとすることはそもそも間違
  っています.中緯度高圧帯と呼ばれている気候帯があります.その核心地域は一
  年中高気圧に覆われていることが多く、降水量が非常に少なくなっています.し
  かも乾燥していて、日射量も多いことから蒸発の可能量が大きいので、植物のな
  い砂漠になっています.そしてその周辺には、季節的に降雨のある、したがって
  そのときだけ緑となる半乾燥地帯が広がっています.降雨の原因は乾燥帯の赤道
  寄りと高緯度側では異なりますので、降雨の季節も異なります.このような気候
  帯の位置や面積は気候変動によって変わります.
   寒冷化の場合にについては、中高緯度側の半乾燥地帯では、
     低温化−−>蒸発量減少、
  が原因で、内陸湖が拡大したり、緑が増えたことがわかっています.このような
  湖は氷河期湖と呼ばれています.この地帯(降雨の原因は偏西風帯の低気圧活動)
  では、温暖化によって降水量が同じなら砂漠や半砂漠地帯が拡大することはあり
  えます.アンデスのチチカカ湖周辺(降雨は赤道収束=ITC による)でも氷期に
    湖が拡大していました.
   問題はアフリカの赤道側の半乾燥地帯(現在のサヘル地域、降雨の原因はITC)
  がどうであったか、ということです.サハラ砂漠の半乾燥地帯については、温暖
  化=砂漠の拡大、という過去の変動を示す明確な証拠はないようです.要するに
  温暖化による砂漠化には地域差があるということを、理解しなければなりません.
   空気中に貯留される水蒸気の量はわずかですから、蒸発量が多くなると言うこ
  とは降水量が多くなるということと同じことです.水の循環量が増えると言い換
  えることも出来ます.地球の長い歴史では、寒冷期には氷河が拡大しただけでな
  く、砂漠の拡大し、地球全体の水循環量が減少し、植物にとって、また動物にと
  って、そして人間にとって、寒冷期は非常に過酷な時代でした.もちろん温暖期
  はその逆です.
   たしかに、生物にとってひどい気候となる寒冷化よりは、温暖化の方がはるか
  にましです.地球温暖化人為説が流布する前の気候学では、Climatic Optimum
   (気候最良期)とは縄文時代の中頃の温暖期を指していました.地質学でも、そ
  れは中新世の温暖期を指す用語として定着しています.最近の 500 年間でも、10
  万年間でも、100万年間でも、5000万年間でも、Climatic Optimum といって良い
  ほどの、暖かい、そして陸上に水の豊かな、すなわち生物に優しい時代はほんの
  短い期間だけでした.温暖化が生物に厳しい、あるいは人間に害があるなどと考
  えるのは、暖房している人間だけの思い上がりか、温暖が悪であるとせざるをえ
  ないような人間の生き方の方に問題があるのでしょう.「温暖化防止」を企てる
  よりも、地球史上まれな恵まれたこの温暖な状況を生かすことを考える方が、エ
  コでかつ合理的だと考えます.
  
Q. 地球温暖化で気象災害が多発するといわれています
A.  最初に説明いたしますが、「災害が多発」という表現は言葉の矛盾です.自然
  災害は、同じ地域については、少なくとも30年に一度くらいの頻度の少ない強い
  事象(気象の場合)によって起こります.火山噴火や地震で起こる災害の場合は
  もっと間遠です.すなわち多発していることは災害にはならないのです.
   一晩で 30cm の積雪が東京都心で起きたら、大災害になるでしょう.しかし雪
  国では、その程度の積雪は一冬に何回でもあることです.気象庁が出す大雨警報
  の基準値(時間雨量)も、九州では大きな値が、北海道では小さな値が設定され
  ています.九州と北海道では、例えば同じ降水量、50mm/時間 の大雨で起こる現
  象が異なります.その降水量の発生頻度が異なるからです.それに合わせてその
  地域の自然のシステム(複雑な相互関係)が形成されており、人間の伝統的な生
  活も、知らないうちに適応しているからです.寺田寅彦の言葉として中谷宇吉郎
  が紹介している有名な言葉があります.災害は 「忘れた頃に」やってくる、の
  です.言い換えると、災害は忘れた頃にしかやってこないのです.
   中越地震のとき、地震動そのもので倒壊した家屋の比率は非常に小さかったよ
  うです.毎年の雪に備えるための頑丈な木造家屋であったからだといわれていま
  す.阪神淡路の大震災の場合、家屋倒壊率が非常に高かったのは、500 年に一度
    起こるくらいの強い地震動に、その地域の伝統的な家屋が対応しているはずは無
  いからです.
   地球温暖化は水の循環を強化しますから、資源としての降水量は増えます.そ
  して降水強度も大きくなるでしょう.問題はそれに人間が、社会が適応できるか
  どうかです.治山・治水の土木工事が盛んに行われた日本経済の高度成長期をは
  さむ過去 50 年前後を比較すると、伊勢湾台風(死者約4700人、1959年)・枕崎
  台風(死者約2500人 歴代第三位、1945年)・室戸台風(死者約2700人、1934年)
  のような洪水による大水害は最近では激減しています.気候はそれほど変わって
  いないのに、そうなったのです.100 年後までに気候が少々変わったからと言っ
  て、日本で「災害を多発」させることはないでしょう.「治山・治水の土木工事
  をやり過ぎる」ほどの日本の土木行政を筆者は信頼しています.

Q. 北極海の海氷が融け、シロクマがかわいそう
A.  海氷に覆われる冬の北極海では開氷面は哺乳動物にとって、砂漠のオアシスの
  ようなもの、という解説を聞いたこともあります.生態学的にはどうなのでしょ
  うか.もっとも北極海らしい冬の北極海でシロクマがどう生活しているのか、映
  像がないのは残念です.もし温暖化でシロクマの数が減少するとしたら、この肉
  食獣に食べられている他の動物はほっとしているかもしれませんね.人間の情緒
  的判断はかなり自分勝手のようです.
   北半球で季節変化が大きいのは冬の雪氷面積の増加が原因ですから、陸地の積
  雪や北極海の海氷が減少すれば、北半球の「冬の厳しさは大幅に緩和される」は
  ずです.また冬季の水蒸気供給量が増えるので、北極海周辺の陸地では降雪量が
  増え、氷河が拡大するでしょう.また森林(タイガ)がツンドラに向けて拡大し、
  ツンドラも北方に移動し、現在はコケ・藻を除けば無植性の寒冷砂漠(南極の露
  岩地帯がその例)が大幅に縮小するでしょう.このことを別の言葉で表現すると
  「地球温暖化」というわけです.
   それとは別に、温暖化がさらに進めば、北極海航路が開けるので安いコストで
  (すなわち少ない燃料消費で)貨物輸送ができると期待している国々(の一部の
  海運会社?)もあるとか.地球儀をあらためてみて見て納得しました.
  
Q.  地球温暖化でサンゴの白化現象が起きています
A.   南西諸島のサンゴ礁は世界の北限となっています.地球上のサンゴ礁は、大部
  分はもっと暖かい海に分布していますから(ただし大陸の西岸だけ)、温暖化で
  北限のサンゴ礁が絶滅するとは考えられません.沖縄の珊瑚礁も海洋汚染で破壊
  したものでないならば、そのうちに回復するのではないでしょうか.
   温暖化が進行すると、房総沖くらいまでサンゴが普通に観察できるようになる
  かもしれません.それが良いことか悪いことか、何を基準にするのかによって善
  悪の判断は分かれるでしょう.房総半島の先端部には数千年前の気候温暖期のサ
  ンゴの化石が地震で隆起した段丘堆積物のなかに見つかります.

Q. 高山植物が絶滅するといわれています
A.  山頂現象や偽高山現象(山が低いのに高山のような環境になる)もありますが、
  一般に平均気温(とくに夏季)の2℃上昇は植生帯高度分布の平均値を 300m ほ
    ど引き上げます.ここで平均値となっているのは、斜面の向き、傾斜、尾根谷な
    どの地形も植生の立地条件として局地的なバラツキを与えているからです.しか
  し、より大きなスケールで見ると、植生の高度分布を決めているのは気温です.
  また植生帯という見方をしても生態的な競合によって、その分布域が一線で画さ
  れることはありません.
   以上のことをふまえて言うと、森林帯と高山植物帯の境界の平均的高さが山頂
  から 300m 位しか離れていない山地では、高山植物は絶滅する可能性があります.

Q. 生態系の破壊ということが言われています 
A.  確かにこれは憂慮すべきことでしょう.しかし次のことを理解しておくことは
  必要です.
   地質学的な長い時間の環境変化に対しては、生物は進化という形で、適応して
  きました.地球のどこでも温暖で多湿な中生代から寒冷で乾燥した広い地域が生
  じた新生代(現在を含む)への環境変化に対して、植物は、花を咲かせ種子を残
  すという進化で、生育に不都合な寒い、あるいは乾いた季節のある地域でも生き
  残ってきました.大型の動物は恒温動物に進化し、生物に厳しい時代(新生代)
  を過ごしています.
   しかし数百年から数十万年のスケールの第四紀の環境変化には生物はどのよう
  に対応してきたのでしょうか.人間を除けば、この時間は「進化」のためには短
  かすぎます.そこで生活圏を移動させるという方法で適応してきたのです.気温
  について言うと、寒くなれば山を下り、あるいは南に移動し、暖かくなれば山を
  登り、あるいは北に移動することを繰り返してきたのです.このような適応によ
  って、数千年前に(弥生時代ぐらいまでに)、縄文時代の温暖で安定した環境と
  それに適応した生態系が成立しました.
   しかし、人間が土地利用によって地表の状態を大幅に変えてしまった地域では、
  今後このようなしかたによる生物の適応は不可能になっています.土地利用で分
  断されていますので、気候変化があったとき生活圏を移動できないのです.この
  ような状況は生物にとって初めてのことです.わずかな気候温暖化や寒冷化によ
  って、動植物がそこで絶滅するとは考えられませんが、どんなことになるか予測
  ができません.これが生態系の破壊という言葉の中身です.温暖化(寒冷化でも
  同じ)が生態系の破壊の原因ではなく、人間の破壊の仕方に原因があるのです.
  気候変化はそれを顕在化させるのです.広域の保護区を設定するとか、保護区を
  連結する回廊を作るなどの配慮がなされたとは思われないからです.山間の耕地
  が過疎によって放置され、自然への回帰が自然に始まったのは皮肉なことです.

Q. 植林によって温暖化を防止したいのですが・・ ?
A.  人間が荒廃させた荒れ地に植林し緑の大地に戻すことはいうまでもなく非常に
  良いことです.しかし、二酸化炭素の吸収という目的だけに絞ると、その効果は
  長期的なものではないことを知るべきです.
   植物が生成した有機物はやがて分解されてまた大気に戻ります.土壌層への一
  時的蓄積は、熱帯では1年程度、中高緯度帯では1000年位になるかもしてません.
  人間がバイオ燃料などといって、すぐに大気に戻してしまうかもしれません.熱
  帯林を伐採して、バイオ燃料の穀物を栽培することなどは二酸化炭素放出抑制に
  は全く効果は無いといえます.
   植物が生成したバイオマスは泥炭などとなって、循環サイクルから隔離されて、
  地下に貯蔵されることによって、初めて長期的な二酸化炭素の吸収効果がでたこ
  とになります.用材として住宅に用いる、紙として何回も利用する、しかし最後
  に焼却するのでは長期的には効果は上がりません.炭素の循環において、フロー
    ではなく、ストックの増加分が真の吸収分となります.日本では植林は温暖化防
  止策として位置づけられていますが、長期的にはそれだけでは効果はないのです.
    それにも関わらず、いうまでもなく緑の大地にはそれ以上の恵みがあるのです.
  長期的な「防止」に効果がないのに(日本建築の用材で100年、200年は無理)、
  大地の緑にはもっと良いことがあるというのは「防止政策」の皮肉なところです.

Q. 二酸化炭素の地下貯蔵はどうでしょうか ?
A.  二酸化炭素の地層処分は空気中濃度を下げるもっとも直接的な方法です.しか
  しかしエネルギーを使って(すなわち、あらたに二酸化炭素を放出しながら)地
  下貯蔵するよりは、地下貯蔵されている炭素(石油・石炭)の消費(燃焼)を減
  らすことの方がはるかにエコでエコノミック、すなわち合理的だと考えます.
   また二酸化炭素を海底に貯留する方法も同じことです.深海のメタンハードレ
  ードは炭素の比率の少ない燃料だということで、開発が進められるでしょう.し
  かし1000−2000m もの海底の固体の資源であるためコストが高いという欠点があ
  るとのことです. 

Q. 循環型のバイオ燃料の利用が始まっています
A.    「もったいない」という筆者の規範からは単純には賛成できません.現状では
  トウモロコシ、サトウキビ、植物油などが原料ですから、人間が食べれるもので
  す.森林を切り開いて、バイオ燃料を生産するのは明らかに本末転倒です.そう
  かといって、既存の畑で、作物を転換してバイオ燃料の原料となる穀物を生産す
  るとか、「余剰」穀物でバイオ燃料を生産するのも「もったいない」ことです.
      日本の食糧自給率(カロリーベース)は40%程度、穀物自給率(重量)は28%
    位ですから、日本産の穀物でバイオ燃料を作ることはあってはなりません.また
    穀物ベースのバイオ燃料の利用は、供給国の自然破壊を招くだけです.食料の価
  格高騰の原因となります.焼却処分しようとしている有機物、例えば穀物作物の
  葉や茎、廃材、糞尿などに限るというのであれば、大賛成です.
   現状の穀物ベースの「バイオ燃料の利用」は「温暖化防止」という目的の設定
  そのものが間違っていたことを示しています.単純に、それは「もったいない」
  のです.MOTTAINAIのワンガリ・マータイさんはケニヤの国会議員選挙で落選し
  てしまったようです.残念なことです.

 
Q. 温暖化防止のためエネルギーの節約を促す税金の新設はどうでしょうか ?
A.  報道等によると、無駄遣いになるだけの温暖化防止政策も多く、税金が何に使
  われるか見極めるまで、それに筆者は反対です.しかし化石燃料は過去数億年、
  数千万年かかって地球が貯めてきた地球の財産です.それを消費するのですから
  対価を払うのは当然です.すなわち、明確に自然保護という目的税でなければな
  らないことはいうまでもありません.
   しかし気候温暖化の好影響を受ける雪国や北海道の農民から、また暖房費を必
  要とする多くの国民から、名称はともかく「温暖化防止のための税金」を徴収す
  るには、政府は景気が悪化するからなどという反対論を押さえるだけでなく、環
  境評価に関する十分な理論武装が必要でしょう.例えば、「温暖化防止税」と寒
  冷地や豪雪地帯に対する特別措置法の理念と相反することは明白でしょう.また、
  これら地域の国家公務員に対する手当を廃止した後に、「温暖化防止税」を導入
  しなけれなならないでしょう.
   ここで私の頭の体操のために、ギャグを入れてみましょう. <未来のことで
  すが>目的税として夏には暑い地方から温暖化防止税を徴収し、平等になるよう
  に、また納税する気持ちを起こさせるように、冬には寒い地方から寒冷化防止税
  を徴収する、という中央政府の政策案に対して、冬こんなに寒いのに温暖化防止
  とは何事だ、夏こんなに暑いのに寒冷化防止とは何事だ、とそれぞれの地方は猛
  反対し、結局いずれの「防止税」も廃案になりました.次の新しい地方税の新設、
  すなわち暑い地方では寒冷化推進税を、寒い地方では温暖化推進税を徴収し、地
  方財源とするという政策も、その税金で行う政策に実効がない可能性が大きい、
  という科学者の指摘を政府が認めて、同じように廃案になりました.日本には暑
  い地方も寒い地方もあり、暑い季節も寒い季節もあり、日本がおかれている「自
  然環境」の特質を、それぞれの地方が理解して連合したのですから、この結果は
  当然ですね、という政治評論家の言で、この政策論争は打ち切られたそうです.

Q. 地域環境問題では発生者責任という考え方があります.地球環境問題では
  どうでしょうか.化石物を燃料の形にする生産者(国)にも責任を求めるべき
  ではないでしょうか ?
A.  中東戦争やイラン・イラク戦争、イラク・アメリカ(連合軍)戦争などで、産油
    国は原油生産で得た富(アブラ銭)を消費させられました.しかし戦争は人類に
  とって不幸な選択です.かっては経済・社会・政治体制を巡って東西の国の対立
  がありました.こんどは資源と地球環境を巡る対立です.地球に国境がある限り、
  資源と環境をめぐって利害の対立が残るることは確かです.「地球」環境問題の
  真の解決は人類が「国」という作られた制度を廃絶するまで望めないでしょう.
  地球温暖化問題は地球科学の成果に基づいて提起されたのではないので、おそら
  くエネルギー資源を巡る国際パワーポリテクスが基礎にある、と考えています.

Q. 二酸化炭素排出権とその国際的・企業間取引についてはどうでしょうか ?
A.  これまで筆者の専門をはるかに超えて、筆者流の解説をしてきましたが、地球
  環境問題は「地球科学」と「もったいない」という倫理だけで、理解できると信
  じている筆者の理解を超える質問です.
   しかし、取引が活発化することは、二酸化炭素放出量が増えることになるので
  はないでしょうか.
   またこの考えが個人にも及ぶと、この二酸化炭素放出権は基本的人権と同じに
  人間として平等に所有しているとすると、貧者はそれを売り、富者はそれを買う
  ことになるのでしょうか.無償でないとすると、最も過酷な人頭税とどこが異な
  るのでしょうか.疑問は尽きません.

Q. それでは、どう考えれば良いのでしょうか ?
A.  筆者の故郷は「雪国」です.雪国の人たちは「降雪防止」など考えずに、毎年
  2mを超す積雪に耐えられるように長い間に適応してきました.「適応」はそれだ
  けで十分意義のあることですが、高度成長が始まって(1955年ごろ)からは、さ
  らに積極的に「利雪」「克雪」が考えられ、「雪産業」が生まれました.昭和38
  年・56年(1981)などは、記録に残る豪雪となりましたが、1990年ごろから日本で
  は暖冬傾向となっています.「気候の変化よりは社会の変化の方が速い」ので、
  平成18年の豪雪では、特に過疎地などでは(若者がいないという理由で)伝統的
  な「適応」できなくなり、深刻な状況となりました.
   地球温暖化の値として、100年で2-4℃と社会で信じられていますが、それくら
  いの温度差のある地方は日本でいくらでもありますので、その温度差が住民の生
  活レベルでどんなものであるか、旅行などして確かめることもできます.また過
  去 100年間で、社会がどれくらい変わったかも考えてみる必要があります.とく
  に食料の流通に関しては画期的な変化がありましたので、気候変化(例えば江戸
  時代中期の寒冷化)が1地方の飢饉につながるようなことはありません.市場と
  流通が、その影響を昔とは異なったものとしています.
   コンビニが「天候」に反応して商品を変えるのは有名な話ですが、食品・衣類
  なども「季節変化」に適応しています.100 年という時間では、市場原理、政治
  などを通じて、その程度の「気候変化」には十分「適応」してしまうでしょう.
   地球の温度が最近の20年間、50年間あるいは産業革命後上昇しているとしても、
  自然に原因のある変化がゼロであるという保障は全くなく、人為の影響を量的に
  分離することもできていないことは、前のいくつかの A で述べたとおりです.
  ですから、強い力で(すなわちエネルギーを使って空気中の二酸化炭素を除去す
  るような)温暖化防止策は「もったいない」ことです.どんなエネルギーを使お
  うと積極的に「地球を冷房」しようと企ててはいけません.無駄な「もったいな
  い」ことです.
   二酸化炭素の放出(エネルギーの使用)は「もったいない」という倫理だけで
  十分浪費が抑えられます.しかし「地球の温暖化を防止できる」と信じてエネル
  ギーの節約に励むことも、動機や目的は違っても、「する」こととその「効果」
  は同じです.ただ「地球温暖化防止を目的」とすると、「地球の冷房」のような
  明らかに無駄な営為が入り込んでくる余地がありますので、「地球温暖化防止」
    よりは「もったいない倫理」の方が正しい、と信じています.
   温暖な気候の方が植物・動物にとって、もちろん人間にとっても、恵まれた環
  境ですから、それに適応し、さらに積極的に活用することを目指すべきでしょう.
  人為であれ自然であれ、絶えず起こっている気候変化に適応せず活用もせず、ま
  たその方向を指向せず「防止」だけに熱中しているのは間違っています.
   少ないエネルギー消費で同じ効果が得られるような技術開発こそ最重要課題で
  す.燃費の良い日本車が評価されているのはその良い例でしょう.日本の技術政
  策がそのような方向に進み、それが評価を得られるような国際的な仕組みを作る
  ことこそ、日本が目指すべき方向ではないでしょうか.
   また、日本社会の仕組みに起因するエネルギー消費も併せて考える必要があり
  ましょう.量的には示せないことですが、むしろこの方に「もったいない」こと
  が多いように感じられます.戦争などはその最たるものでしょう.

参考文献(充実させる時間がありません)

下記のうち、野上道男執筆(担当分)の記事をご覧下さい.

環境理学:  2006年 古今書院
地理学がわかる: 1999年 朝日アエラムック
アメリカ大陸の自然誌: 1992年 岩波書店
ペルーのエルニーニョ現象:   1984年 雑誌「地理」 29巻11号
アンデスのさまよえる湖(一): 1975年 雑誌「地理」 20巻10号

都市の気候環境 : 2004年
 http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/pdf/200411/0411-1216.pdf


IPCC報告:  http://www.ipcc.ch/pdf/assessment-report/ar4/syr/ar4_syr_spm.pdf

このページの言説の個々の「Q&A」より短い「部分的な引用」はしないでください.
筆者の考え方に賛同できなくても、こういう見方もあるのだ、
ということを知っていただければ幸いです.
リンクはご自由にどうぞ.

(2008.5.17 現在 未完)