4.エンジンキーを探せ

あの宇宙からのメッセージを受信してからちょうど1ヶ月がたった。鳥類学者アレックス・パロットは、この1ヶ月間を平均睡眠3時間というナポレオンを超える 過酷な状況で過ごし、例の「パピプペポ音」の暗号を解読していた。 暗号というものは、かなり古代からあり、平文(普通の文章)を、単純に1文字シフトしただけのものとか、乱数表を使って、暗号を平文にマッピングしたものとか多種多様であるが、幸いなことに、今回のメッセージは地球に現存するフクロウ属の会話言語と非常に近い文法を持っていた。例えば、「ぴぴぴ」という音の 場合、その1つひとつの「ピ」の音が、実は8段階の大きさで表現されており、ゆえに人間には「ピピピ」と聞こえるだけの単語も、実際には、8×8×8=512通りの意味を伝えることができるのであった。アレックスは、1ヶ月のハードな研究により骨沢りえのように劇やせしたが、その眼は輝いていた。 解析したメッセージは次のようなものであった。

@皆タン。僕らの故郷はフクロウ星です。

Aこの星は、銀河系外20光年の場所にあります。

Bその昔、僕らの祖先は地球を観光に訪れて、一部の仲間をフクロウとして移住させました。

C今、僕らの星は、異常気象により、ひまわりが死滅してしまい、この種子を求めています。

D昔の移住の時、地球に残してきたロケットがあります。

Eこのロケットを使って、ひまわりの種を、フクロウ星に届けてください。

Fロケットには選ばれし鳥と、そのシモベ1名のみが乗れます。

Gロケットのエンジンキーは、地球に立ち寄ったとき、大きな三角形の建物を見つけたので、そこの小さな部屋に収納しました。

うーん。アレックスはこの解析結果に驚いた。
地球外、しかも銀河系外に知的生物(多分フクロウ)がいて、我々にヘルプのメッセージを送っている。

しかも、この生物は、遥か昔?、地球を訪れたことがあり、そのロケットはいまだ地球にあるとのこと。

そのロケットを起動するには、『大きな三角形の建物』の部屋からキーをGETしなければならないこと。


再度、アメリカのフロリダ州にあるWASA(World Aeronautics and Space Administration 世界航空宇宙局)の 地下256階で、
第2回、スペースメッセージ会議が開催された。

議長は述べた。「アレックス君、君の見解はどうかね」

アレックスは答えた。「ロケットとは、近年発掘された、『ひまわり形のカプセル』を意味するものと思われます。

また、『大きな三角形の建物』とは、多分ですがクフ王のピラミッドを指すのではと思われます」
「とすると、選ばれし鳥と、そのシモベ1名とは何を指すのか」と議長が尋ねました。
アレックス曰く「実は、日本の札幌で展示されているカプセルに、不思議なドアが写っていました。

この写真によると、 左の小さなドアには『PIPIO』、右の大きなドアには『PAPASAN』という文字が表示されていました。
私は、この名のものこそが、 選ばれし者だと思います」
ある鳥類学者が、「アレックス君、推測は自由だが、そのPIPIOとかPAPASANという鳥は実際にいるのかね」と質問しました。

実は、アレックスは、この1ヶ月の過酷な研究ダイエット生活を通じて、インターネットで『PIPIO』と『PAPASAN』の情報も調べ上げていました、

「PIPIOは札幌に住む並オカメインコのオス18才、PAPASANは、和名『ぴぴ夫のパパ』で、このインコの世話を人生としているシモベであります。」

議会は、この報告を受けて、アレックスを通じて早期にPAPASANとコンタクトを取り、なんとかエンジンキーを入手して、

地球のひまわりの種500Kgを宇宙船(ひまわり状のカプセル)に搭載して、フクロウ星をレスキューしようという結論となった。

その3日後、アレックスは札幌の地を訪れていた。
薄手の浴衣姿のセクシーな日本の女性の美しさに目を引かれながらも、「いかん、いかん、早くパパさんとコンタクトしなくちゃ」と思いながら、
札幌の地下街を歩いていると、なんと地下街なのにセキセイインコが沢山いる『小鳥の広場』が眼に留まった。
過っては、閉鎖的なガラスで覆われた空間だったが、今は、インコを飼育している人のインコパスポートさえあれば、自由に中に入り、

推定1000羽の各種インコと戯れることができる、この癒し空間、アレックスは「ちょっと寄り道も良いよねJAPAN」とつぶやいて、 インコパスポートを見せて、中に入ってしまった。

すると、中の50名程の客さんの中に、何故か両手、両腕、両肩にインコの男がいた。
まるでインコを引き寄せるフェロモンを発する蝶のように、
その男は、インコを全身にまとい、両手に抱いたオカメインコをナデナデしているのであった。

アレックスはふと、その男の横顔を見た、『ぴぴ夫のパパさん』であった。

さて、アレックスは、こうして知り合ったピピ夫のパパと、地下街の喫茶店でミートソースを食べながら、 フクロウ星の危機についての会話をした。

「パパさん、ひまわりカプセルのドアにあった、『PIPIO』と『PAPASAN』の刻印知ってますか」
「ぎく(汗)。知っているけど、多分、人違いと鳥違いではないでしゅか」
「Non、Non人形、あれは、パパさんとインコのぴぴ夫君を指名していますよ」
「えー。それにしても、エンジンキーがなくてはロケットも飛ばないでしょ」
アレックスは言った。「その点もほぼ解決済みです。
エンジンキーの在り処はすでにわかっています。
但し、この場所は人間では 入れませんので、ぴぴ夫君のお力が必要になります。」

その2日後、パパさん家に再度、アレックスがやって来た。
アレックスによると、ロケットのエンジンキーは、なんとクフ王のピラミッドの、王の間に隠されているということ。

そして、 ピラミッドは2020年に環境保全のために、入り口をすべて封印したので、
今は『王の間』に行く唯一の手段は、『シャフト』といわれる 30cm程度の直径の穴を伝わって、外壁から入るしかないこと。
そのシャフトを進める生物は、ねずみか、小型のインコ程度であることだった。
アレックスは「ぴぴ夫君、フクロウ星の危機を救うため、やってくれるかね」と言った。

パパさんの肩の上にいたぴぴ夫の返事は、「No I do'nt. そんな狭い場所に行くのイヤでしゅ」だった。

アレックスは「ぴぴ夫君、エンジンキーを得たあかつきには、粟の穂1年分の報酬を与えるよ」と言った。

ぴぴ夫は「フクロウ星の危機を救うため、ぴぴ夫がんばりましゅ」とあっさり言った。
(続く)

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