トナミ運輸事件判決に関するコメント

2005年2月25日
公益通報支援センター


2005年2月23日、日本の内部告発のパイオニアといわれる、トナミ運輸の串岡弘昭氏の運輸業界ヤミカルテル告発・報復事件の裁判の判決が富山地方裁判所でありました。来年の公益通報者保護法の施行を前にして注目されていたこの判決について、以下のとおり、当センターのコメントを発表します。


富山地裁で、2005年2月23日、 原告串岡弘昭、被告トナミ運輸(株)の判決が出ました。請求額5400万に対して13,567,182円を認容しました。

(1) 公益通報者保護法が昨年6月国会で成立しました。来年4月からの施行を控え、公益通報(内部告発)の正当性を認めた今回の判決は、公益のための通報者を保護しなければならない時代へと押し進めたことは確実です。


(2) 特に今までの公益通報(内部告発)に関する判例は解雇に関する判例でした。今回は、賃金、昇格という企業の有する『人事権の裁量』問題において、公益通報(内部告発)を理由に不利益な取扱いをしたという理由で損害賠償を認めたことに、従来の判例より一歩前進したと評価できます。


(3) マスコミへの外部通報について、企業内部で是正努力に不十分であったが、しかし会社ぐるみ、業界ぐるみで違法行為を行っている事案について、『仮に内部で努力してみても被告がこれを聞き入れることの可能性が極めて低い』と認定し、マスコミへの通報を正当としたことは今後の法解釈に大きな影響を与えます。公益通報者保護法の3条3号の『外部通報要件』より広く救済しているからです。
 元々、公益通報者保護法の3条3号の外部通報要件が狭すぎるからであります。今後、法3条3号要件の解釈だけでなく外部通報が一般法理で保護されることになるので注意をする必要性があります。(法6条を参照)


(4) イ.このような長期にわたる企業の違法行為に関して、10年の消滅時効を認めそれ以前の損害を認めなかった点は公益通報(内部告発)の難しさを理解しない判決となっています。これでは、不利益取り扱いを受けたら3年以内又は10年以内に訴訟をしなければならないことになるからです。裁判官は世間の常識に疎いので、公益通報(内部告発)者が企業に勤務しながら会社相手に訴訟が出来ない現実=困難さを理解していないからです。

ロ.慰謝料額が10年分で200万ときわめて低い点も問題です。いずみ生協事件(2003年6月18日大阪地裁堺支部判決)では、3ヶ月ほどの解雇で180万円を認めている(自宅待機と配転だけでも120万円の慰謝料を認めている)ことからすると極めて低いものです。

ハ.以上の損害額の低さは、裁判官の常識と世間の常識とが乖離していることにあります。裁判官が公益通報の『公益性』の重大さやその困難さについての時代にあった認識を深めることを求める次第です。
公益通報者が訴訟する場合において裁判官の『常識』を打ち破る立証活動が原告側に求められていることは当然です。


(5) いずれにしても富山地裁の判決の影響力は企業に対して与える影響が大でしょう。すなわち、公益通報(内部告発)者に対して解雇はもちろん昇給、昇格などの経営者の人事権においても不利益取り扱いをしてはならないと宣言したからです。このような企業は、『コンプライアンス』を遵守しない企業だと厳しく批判されることになる時代に入ったことを企業のトップは理解すべきです。




トップページに戻る