財団法人経済調査会への申入書


 PISAでは、かねてから公共工事の建設資材等の価格調査と内部告発への対処を巡って各方面より疑問が提起されていた財団法人経済調査会と、同調査会と類似の活動を行なっている財団法人建設物価調査会に対して、この度以下の申し入れを行なうことになりました。
建設物価調査会への申入書はこちらをご覧ください。

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経済調査会への申入書
2003年9月12日

財団法人経済調査会
 理事長 山口甚郎殿


大阪市北区西天満4-6-3 第5大阪弁護士ビル3階
公益通報(内部告発)支援センター
TEL06-6946-4910 FAX06-6365-5921
代表 辻 公雄(弁護士) 同 高橋利明(弁護士)
同 片山登志子(弁護士) 同 森岡孝二(関西大学経済学部教授)


第1 申し入れの内容

1 貴団体内部に「建設資材などの価格調査の実態調査委員会」を直ちに設立すること。
[1] 本委員会の目的は、価格調査員、退職者、その他の職員等から市場調査の実態を聞き取るなどしてその実態を調査すること。

[2] この委員会の委員の選任は、貴団体に都合の良い人で構成されるのではなく、透明性を高めるため、独立した第三者機関(消費者団体、日本建築士事務所協会連合会、日弁連、公認会計士協会等)などから推薦された外部の委員で構成されること。

[3] 聞き取りに関してどのような報告があってもその者に一切不利益を与えないこと。

[4] その調査結果を貴団体のHP上に掲載すること。


2 公益通報(内部告発)受付窓口を設置すること。
[1] 価格調査のあり方を含む貴団体内の公益情報(内部告発)の通報先として、貴団体から独立した第三者の通報受付窓口を設けること。第三者といっても、顧問弁護士や顧問弁護士の知人ではなく、前記独立した第三者機関(日弁連等)の推薦をうけて選任すること(このことは内部にヘルプライン等を設置することを妨げるものではありません)。

[2] 通報者に対し次の行為をしない旨、全職員に周知すること。
・雇用者である場合には解雇等の不利益取扱いや損害賠償請求をしない。
・取引業者等の場合には取引停止等を含む不利益取扱いをしない。
・通報者(「犯人」)探しをしない。
・その他の従業員が通報者に対し事実上の不利益な取扱いをしている場合は、直ちにその是正措置をとること(団体が通報者に不利益な取扱いをしなくとも、同僚、上司が通報者に「密告者」等とレッテルを貼り、職場から孤立させ退職等に追いやるケースがあるからです)。


第2 申し入れに至る経過と理由

 当公益通報支援センター(Public Interest Speak-up Advisers、PISA)は、企業、団体、行政機関等の違法行為について従業員、関係者等から通報および相談を受付け、通報者の氏名を含む個人情報を保護しながら問題の性質に応じて通報者に対し必要な助言をし、その防止と早期是正のための活動や、企業、団体、行政機関等のコンプライアンス、スピークアップ制度、通報者保護規定、国の公益通報者保護制度等のあるべき姿について、宣伝、啓蒙、提案活動を行う市民団体です(PISAのHPをご参照下さい)。

 当センターには、昨年秋から冬にかけて、貴団体の価額調査において不正常なことが行われている、また、財団法人建設物価調査会との談合等があるので調査してほしい旨複数の関係者から通報がありました。当センターとしては、貴団体が公共工事の積算において重要な役割を果たしていること、まして談合していることについて関心を持ちました。しかし、この通報者らとは連絡ができなかったので調査活動を保留しました。その後、四国の生コン業界の関係者からも、貴団体らが生コン単価について実態とかけ離れた調査をしているという通報がありました。それ以降、当支援センターとしては、貴団体の調査方法のあり方について重大なる関心を持ち始めました。

 本年6月12日には、貴団体と財団法人建設物価調査会が国土交通省関東地方整備局に所在する国の機関などの建設資材価格調査業務において談合していたことで、公正取引委員会より排除勧告を受けました(これも新聞報道によると内部告発であるという指摘がされています)。

 その後まもなく、「自治体が入札する以上、このような調査会社は2社しかないので必然的に談合になる」「そもそも国土交通省の入札のやり方がおかしい」「国土交通省が民間企業を参入させる方向で努力しないと談合は無くならない」という通報、意見もありました。
 当センターは、昨年秋の談合に関する通報が真実であったこと等から、価格調査のあり方について本格的に独自の調査を開始すべく担当者を選任する準備を始めました。


2(1) その前後、本年6月13日、読売新聞に「価格調査名ばかり」と題して、貴団体らの価格調査に関する報道がなされました。これに対し、貴団体は6月17日、「読売新聞6月13日付朝刊記事に強く抗議――記事の訂正と謝罪広告掲載を要求」と題して、それを貴団体のHP上トップ頁に、次の内容証明文も併せて掲載しました。

 「価格調査名ばかり」と題する記事(以下「本件記事」といいます)において、当財団に10年以上勤務してきた調査員ら複数の関係者からの取材(以下「本件取材」といいます)の結果であるとして、[1]当財団は調査員が不足であり、価格調査の調査票に前任者からの引継ぎでメーカーの言い値から何割か差し引く作業をするだけの調査も多い、[2]5、6社を調査する場合、1社が「仕切り役」になって他社の分を請け負う場合もある、[3]単価が10円でも高くなれば、全体で億単位の儲けになるために、当財団の調査員に対するメーカーによる接待が行われ、「お車代」「旅費」など現金提供の申し出も多い、[4]今年出張したケースでは、到着した駅にメーカーの迎えの車が来ていて、宿に送ってもらった後、近くの居酒屋など数軒に飲みに誘われ、前年並みの価格を頼まれた、[5]国土交通省等から天下りを受けている業者に対しては当財団が特別な配慮を行い、言い値をそのまま採用するよう先輩から指導を受ける、・・・・・。しかし、当財団は、ISO9001に準拠した品質マネジメントシステムを構築した上、「価格調査基準」に基づく適切な調査を行っており、前記[1]ないし[5]はいずれも全くの事実無根です。・・・下記事項についての回答書・・・、並びに本件記事が事実無根であったことについての訂正記事及び当財団への謝罪広告を「読売新聞」上に掲載することを求めます。
 (1) 本件取材を行った記者及び本件記事を作成した記者の氏名
 (2) 本件取材に応じた「複数の関係者」の住所、氏名及び当財団との関係
 (3) 本件取材の方法
 (4) 本件記事の真実性について貴社が行った具体的な調査の方法、内容
 (5) 上記[1]ないし[5]の各事項について、貴社が当財団及び財団法人建設物価格調査会のいずれに関する事項として記載しているのかについての明確なる回答


(2) 当センターが重大な「懸念」を抱いたのは、この通知書の中で「本件取材に応じた複数の関係者の住所、氏名及び当財団との関係」の釈明を求め、それをHP上に掲載し、貴団体の関係者らの閲覧状況に置いた点であります。
 即ち、本件の報道が民事・刑事上の名誉毀損になるとした上で通報した者の氏名を明らかにするよう要求しているということは、通報者も民事・刑事上の名誉毀損に該当するのだとこのHPを読む者に対して「恫喝」をし、「犯人探し」を行うということを明らかにしたとも受け取れました。


3 貴団体の役割と社会的責任の重大性

 貴団体は、公共工事の建設資材等の価格を調査する財団法人です。貴団体の調査した資材等の価格は、国、公団、自治体等の公共工事の発注者側が設計価格を算定する際の積算資料として利用されています。

 旧建設省の時代から、「積算基準の「材料費」の価格は、入札時における市場価格とする」「設計書に計上する設計単価は物価資料等を参考とし、買入価格、買入れに要する費用及び購入場所からの現場までの運賃の合計額とする」旨定められています(土木請負工事については建設省官技発第37号・昭和42年7月20日等)(国土交通省大臣官房技術調査課監修「国土交通省土木工事積算基準」(平成15年度版)9頁以下)。この通達の中の物価資料等とは貴団体の発行している資料とされています。

 ちなみに、平成13年基準「国土交通省建設工事積算基準の解説」(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)によると、貴団体の資料を採用するよう解説されています。

[1] 「資材単価は、一般的には価格情報が掲載された刊行物単価を採用する。これらの単価は、価格情報調査機関が調査した市場取引の最頻値の価格であり、変動が頻繁で数量も最も多い生コンクリートや鉄筋などにおいては週報からその都度、その他の資材は年度当初の価格を年間使用するのが一般的である」。(同9頁)
[2] 「なお、具体的な市場単価については、季刊発行(年4回)の(財)建設物価調査会『建築コスト情報』及び(財)経済調査会『建築施工単価』に掲載されている。また、市場単価方式へ移行した工種の歩掛りについては、参考資料としている」。(同31頁)
[3] 「一般には次のような価格情報によっているところが多い。
イ.建設物価 − (株)建設物価調査会から発行されているもので、『月刊建設物価』、『季刊建築コスト情報』及び主要資材の速報がある。
ロ.積算資料 − (財)経済調査会から発行されているもので、『月刊積算資料』、『季刊建築施工単価』及び週報がある」。(同33頁)
[4] 「掲載価格は、調査時と発表時に1ヶ月程度の時間的ずれがあるので、価格変動の激しい時期は経済動向に留意し、『週間速報』((財)経済調査会発行)または『ニュース速報』((財)建設物価格調査会発行)を参考にする」。(同35頁)

とあり、貴団体の資料が国土交通省の設計価格の算定にあたって具体的に例示され、これを活用するよう「通達」されています。

 従って、貴団体の建設資材の価格調査は単に一財団の資料ではなく、国等の公共工事の発注者側の「設計価格」の基準となるものであり、貴団体の発行資料は一財団法人の資料ではなく、公共工事の設計価格の根本問題に当たります。その点では、貴団体の役割は非常に大きく、その結果、社会に対する責任も重大です。


4 貴団体の価格調査のあり方について関係者の通報(告発)を封じ込めてはならず、むしろ価格調査の実態の解明が求められています。

(1) ところで、わが国の公共工事の単価はアメリカと比べて約3割高いという指摘がアメリカの資料でも明らかにされ(建設省「内外価格差調査研究会報告書」平成6年12月)、それ以降、日本の公共工事は外国と比べて高いという論議が巻き起こりました。1997年7月には、富士総研の米山秀隆主任研究員による、公共工事は民間工事と比べて高いという詳細なレポートも提出されています。旧建設省当時、「公共工事コスト削減対策に関する行動計画」等も作成され、政府内部でも本格議論が開始されました。また、2001年11月、内閣府の「地域経済レポート2001」の中でも公共工事が民間工事に比べて高い点が指摘されています。

(2) 2002年5月、ジャーナリスト北沢栄氏の『さらばニッポン官僚社会』という本が出版され、その中で、貴団体の価格調査方法に問題があるという指摘が初めてなされました。具体的には、「奇妙なことに生コンなど多くの価格は全く横並びだ。このことは調査方法が同じであることを暗示する。財団の調査マンによれば、地域の業界団体・組合や有力メーカーから建値を聞くなり、木材のように特定の専門誌を見たり、鉄・非鉄のように問屋の価格表を見たりして価格を決める。守備範囲が広いので、毎月毎月調べているわけではなく、むしろメーカーの存続や社名の確認に時間が割かれるという(「積算資料」の場合、調査点数5−6万点に対し調査マン約200人)。このため、デフレだからといっても、無難な「高め・横バイ」で表示されやすい。なぜなら、調査マンが言うように、価格の下落を表示すると業者などから苦情が出やすいが、高めならどこからも問題にされないためだ」
 その後、2002年4月10日、衆院国土交通委員会や2003年2月14日の東京都議会においても、貴団体の調査方法についてあれこれ言及され始めました。そしてそのような中、前記読売新聞の記事で、関係者の「内部告発」と見られる取材により、価格が高止まりしている点が指摘されました。

(3) このように見てくると、政府、国会をはじめマスコミ等で、多くの関係者が公共工事が高い理由について議論をし始めました。
 今、公共工事の設計価格はそもそも高いという批判があります。一つは、積算基準の一般監理費や間接工事費が民間に比べて高いという批判です。もう一つは、工事原価にあたる資材、材料費が市場価格より高いという批判です。最近は特に、「資材価格そのものが市場価格よりも高い」「その高い原因が貴団体の調査方法にある」旨の内部の人間でしかわからない情報をもとに論議が巻き起こってきた点が特徴です。
 このような中で、貴団体が、6月13日の読売新聞報道があるや否や事実を調査した形跡もなく直ちに事実無根として抗議し、その情報提供者の氏名、住所を明らかにするよう等要求していることは、これ以上の関係者の通報を封じ込めるために犯人探しをするぞとHPで関係者に伝えていると考えざるを得ません。仮にそのように意図をしていなくとも、結果として、通報(内部告発)をする者に対して「恫喝」や「警告」を与えている役割を持ちます。

(4) 今、重要なことは、告発者の住所、氏名等を明らかにする「犯人探し」ではなく、貴団体の価格調査方法、内容に幾度も疑問が出されている以上、申し入れの内容第1項のとおり、その実態を国民に明らかにすることこそが貴団体の責務ではないかと思慮します。なお、貴団体は、次のとおり外部審査を行っています。

「平成6年4月より外部有識者で構成する「経済調査会審査委員会」を設置し、以下の項目について定期的に提言・助言を受けています。
[1] 資材価格・工事費の検証に関すること
[2] 調査結果の検証に関すること
[3] 調査基準、掲載方法、表示等に関すること
[4] その他、価格調査に関する客観性、妥当性の確保等に関する事項

 また、平成14年3月から上記「経済調査会審査委員会」の専門部会として「データ審査部会」(外部有識者で構成)を毎月開催し、調査結果の事前審査を行っています。」
しかし、外部審査委員会、データ審査委員会等の外部委員の氏名が一切公表されていません。それらの外部委員がどのように選任されたのか、透明性のある選任をしている様子もありません。また、その審査結果も具体的に一切公表されていません。

 今重要なことは、抜本的に、外部の独立した団体から透明性ある手続により委員を選任し、その委員のもとで、価格調査委員やその退職者またその他の職員により徹底的に実態を調査し、不正があればそれを是正し、不正がなければその委員会の名でその結果を公表すれば、国民は信頼します。
 貴団体の調査資料が公共工事価格の積算の唯一無二の資料として活用されている以上、透明性のある委員の選任やその結果の公表が必要だからです。

(5) 公益通報(内部告発)等についても、申し入れの内容第2項のとおりの措置をとられるよう要請する次第です。
 貴団体の前記対応を見ていますと、「内部情報」なるものが外部に流出したので、それを刑事・民事上、名誉毀損で処罰すると直ちに警告しました。
 わが国の企業や団体は、「内部告発」なるものがあるとまずその実態を真摯に調査するのでなく、事実無根、名誉毀損、告訴、告発という方向に動きます。貴団体の談合に関し昨年6月に公取委の調査があった時も、貴社は同様に「事実無根」と反論していましたが、今回の公取委の調査結果によりその真実が解明されました。
 このように、「内部告発」という問題が生じた時の企業、団体は、まず犯人探しではなく、真実はどうなのか、現場の調査員はどのように行っているのか、一切の不利益取扱いをしないから内部通報を受理する、という通報システムを作り、もし違法、不正、不当行為が行われていたならば早期に是正することが重要ではないかと思慮します。その場合、内部通報を受理する者は、貴団体の関係者が安心して通報できる人でなければなりません。通報先が総務部や人事部の人間であれば内部の人間は安心して通報しないのが実情です。また、外部の人間であれば誰でもよいというのではなく、貴団体とは独立した外部の人間で、かつ、通報者の個人情報を法的にも保護する義務がある弁護士や公認会計士が最も望ましいと思われます。それが、企業、団体の社会的責任であると同時に、企業、団体の自浄作業を発揮する道でもあるからです。



第3 結論

 よって、僭越ではございますが、前記第1のとおり申し入れ致しますので、本書面到達後1ヶ月以内に文書でご回答されたく要請いたします。


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