5月26日(月)午後6時〜8時30分、大阪弁護士会において、内閣府の「公益通報者保護法案」の問題点について、公益通報支援センターの弁護士・公認会計士など16名と、報道関係者16名の参加のもとに、意見交換会が開かれました。 そこで報告された片山登志子弁護士(公益通報者保護制度検討委員会委員)のレポート(レジュメ)を掲載します。


公益通報者保護制度検討委員会の報告書の内容と問題点

平成15年5月26日
片山登志子

第1 公益通報者保護制度検討委員会の報告書の内容と問題点

1 制度の目的・必要性について

A 報告書の内容
(1) 企業における自主的取組みを一層積極的に進めることが求められる
(2) 事業者による法令遵守を確保するために、通報者保護に関する制度的なルールを明確化し、通報結果に対する予見可能性を高めていくことが必要
(3) 通報者保護ルールの明確化は、消費者被害の未然防止・拡大防止等に資するほか、法令違反に対する行政の監視機能を補完する仕組みとしても効果を発揮する

B 報告書の問題点
(1) 基本的に、規制行政と事業者の自主的取組に依存した従来型の消費者政策の手法の範囲内で従業者の関与を認めるという構造になっている。21世紀型消費者政策の方向性と矛盾。
(2) 公益通報者の保護は、消費者利益の擁護という目的を実現するための方策として、従業者や消費者の関与による市場ルールを取り入れることにあるはず。


2 保護される通報の範囲

A 報告書の内容
(1) まず消費者利益の擁護のための公益通報者保護制度について検討を進める
(2) 消費者利益(生命・身体・財産など)を侵害する法令違反を本制度による通報の対象とすべき
(3) 事業設備における事故の発生により公共の安全が阻害されるなど人の健康・安全に危険が及ぶ場合や、廃棄物などにより環境に悪影響が及ぶ分野での法令違反も通報の対象とすることが望ましい
(4) 法令違反の範囲は規制違反や刑法犯などの法令違反
通報者が通法時に法令違反であると信じるに足りる相当の理由があった場合も保護がなされるよう配慮
(5) 本制度の対象とならない通報については一般法理に基づき通報の公益性等に応じて通報者の保護が図られるべき

B 報告書の問題点
(1) 対象とする通報の範囲を法令違反に限るべきではない。
消費者利益の擁護に関する法整備が後追いである日本の現状では、消費者利益を侵害するが規制法違反には該当しない事業者の行為がある。これらに関する通報は本法による保護の対象外となる。
(2) 本法の保護の対象とならない通報(法令違反でないものに関する通報など)についても一般法理で保護されるが、通報者を萎縮させる懸念がある。


3 通報者の保護の内容

A 報告書の内容
(1) 通報を理由とした解雇は無効
解雇以外の不利益な取扱いも含めて不利益な取扱いをしてはならないこととすべき
(2) 個別の法令による行政機関への通報制度も有効な仕組みである

B 報告書の問題点
(1) 通報したことあるいは通報のための証拠資料の入手について、民事上、刑事上の免責が認められていない
(2) 不利益処分の禁止のみならず、通報者の保護のために事業者に積極的な義務を課すべき


4 通報者の範囲

A 報告書の内容
(1) 事業者に雇用されている労働者を保護の対象とする
(2) 元労働者、派遣労働者等の取扱いなど、対象となる労働者の範囲についてはさらに検討する必要がある
(3) 公務員についても民間の労働者と同様に通報者が保護される必要がある

B 報告書の問題点
(1) 現に雇用されている労働者に保護対象を限定すべきでない。
元労働者(退職者)、派遣労働者、契約社員、下請事業者の労働者なども広く対象とすべき。
(2) 刑事上、民事上の免責との関係では、取引先についても保護される通報者の範囲に含めるべき。


5 保護される通報先と保護要件

A 報告書の内容
(1) 事業者内部への通報の保護要件は、恐喝・加害などの不正の目的でないこと、その目的が主として個人的利益を図ることでないこと(誠実性)
(2) 事業者外部への通報は一定の要件の下においては保護の対象とする必要がある。
 ア 行政機関への通報の保護要件は、次の@、Aの要件をいずれも満たすこと
 i 誠実性
 ii 通報の内容が真実又は真実であると信じるにたる相当の理由があること(真実相当性)
 イ その他の事業者外部への通報の保護要件は、次の@ないしBの要件をいずれも満たすこと
 i 誠実性および真実相当性
 ii 事業者外部への通報が適切であること
 具体的には次のような場合が考えられる
 a 事業者内部又は行政機関に通報すれば事業者から不利益な取扱いを受けると信じるに足りる相当の理由がある場合
 b 事業者内部に通報すれば証拠が隠滅されたり破壊されるおそれがあると信じるに足りる相当の理由がある場合
 c 事業者内部又は行政機関に通報っした後、相当の期間内に適正な措置がなされない場合
 d 人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険がある場合
 iii 通報の対象となった事業者の行為によって発生し又は発生するおそれのある被害の内容、程度等に応じて、被害の未然防止・拡大防止のために相当な通報先であること

B 報告書の問題点
(1) 外部通報の保護要件が厳しく、実質的には内部又は行政機関への通報前置、あるいは内部又は行政機関へ通報を集める仕組みになっている。
(2) このため、通報者を萎縮させ、行政機関以外への通報を実質的には阻止する結果を生じさせる懸念が大きい。
(4) 通報の範囲については、反対解釈を禁ずることが明記されており一般法理による個別救済の可能性があるが、この保護要件についてはかかる注記はない。手続的な保護要件に関しては、法令違反の場合はもとよりそれ以外の一般法理で救済される通報についても手続要件として要求されることになることも予想される。今後の他の分野における公益通報者保護制度も同様の制約を受けることになり重大な問題。


第2 公益通報者保護制度の今後の見通し

1 検討委員会の報告書は5月19日に国民生活審議会消費者政策部会に報告された。部会での実質的な審議はなし。

2 5月28日に、消費者政策部会で、公益通報者保護制度については検討委員会の報告書をそのまま盛り込んだ形で、「21世紀型の消費者政策の在り方について」の報告書がまとまられる予定

3 その後、具体的な法案作成がなされ、今秋の臨時国会での成立が目指されている。

以上


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