当時の時刻表へ・・・


子供の頃、踏切を渡って学校に通った。
学校の近くではザリガニをとったり、タニシやドジョウ・・・
ふと見上げると列車が来ていた。
それは特急だったり、貨物列車だったり。
貨物列車の後ろには車掌車がついていて
車掌が一人ぽつんと乗っていた。
あれに乗ってどこか遠くへいくのに憧れた。

4時間でおしまいの昼下がり
よく踏切につかまった。
踏切ではEF62が入れ替えで何度も行ったり来たりして
そうなるといつまでたっても踏切は開かなかった。
少年は踏切でじっと機関車を見ていた。
機関車はわがもの顔で踏切を塞いだ。

ブルトレブームが来た。雑誌によく出ていた
はやぶさ、さくら、みずほ・・・。
少年にはどれもが遠い存在であった。
少年の前にはいつもの貨物列車が
あざ笑うかの様に通過していく。
俺を見ろと言わんばかりに。お前はロクニイじゃないか。

中学生の頃、少年はよく窓の外を見て過ごした。
あれは音楽室だったと思う。
3階の西側の窓は碓氷の山々が幾重にも連なるパノラマ。
その向こうには真っ白な浅間山。
10時と4時にいつも青い列車が走っていた。
機関車が引く客車列車は10時になると
碓氷の山々へと向かっていき
4時になると戻ってくる。
やがて日は落ちて夕焼けが碓氷の山々を包んでいく。
そんな毎日が好きだった。

少年は小諸までのキップを手にした。
10時に来る青い列車に乗った。
車内は高崎からの客で既にいっぱいで
デッキがいつも少年の指定席だった。
手で開くドアはいつも全開、風を全身で感じていた。
いちばん後ろは郵便車だった。
駅へ着くと車掌がホームへ麻袋を落としていく。
途中松井田の鉄橋は怖かった。落ちるかと思った。
やがて列車は横川に着いた。
ちょっと休憩。機関車を増結してまた出発する。
トンネルを過ぎて、トンネルを過ぎて、またトンネル
緑がとてもまぶしかった。

トンネルが終わると、やがて別の景色が見えてくる・・・。
カラマツ林と、その向こうに雄大にそびえる浅間山。
少年の知らない世界がそこにはあった。

軽井沢から中軽井沢、信濃追分と列車は走る。
カラマツ林とところどころ点在する別荘。
いつかはここで暮らしたいと憧れた。
信濃追分を過ぎるとどこまでも林が続いていた。
自然がどこまでも世界を包んでいた。

御代田から先、田園地帯を列車は走る。
平原は無人駅だった。ぽつんと取り残されたような小さなホーム。
やがて左手より線路が近づいた。
乙女というちいさな駅があった。
それとディーゼル気動車。小海線だった。

町並みが見えてきた。もうすぐ目的地だ・・・・。



EF62の牽引する客車列車(安中にて)




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