最新科学技術の紹介




<はじめに>
 このコーナーは、当初「興味のある分野」として専攻分野の紹介欄に掲載されていました。しかし、私自身、科学技術関連のサイトを数多く見、これらのサイトに比べて「興味のある分野」は簡略化され過ぎていることを痛感しました。そこで、本ホームページのコンテンツを更に充実させるために、最新科学技術を様々な視点から展望することにしました。なるべく詳しくしかも更新を頻繁に行っていく予定です。請うご期待!

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植物間コミュニケーション〜植物が行う「立ち聞き」〜(2月24日)

<背景>
 植物は揮発性化合物を介して様々な行為を行っています。特に有名なのが自らの花や果実から芳香を発し、花粉媒介者や種子散布者を誘引する行為です。また病害虫や草食動物により被害を受けた場合、植物はこれらの生物に対し毒性を有する揮発性化合物を生成して自己防衛を図ろうとします。更に食害を与えた草食昆虫を好物とする肉食昆虫を揮発性化合物を放出して誘引し、食害の低減を図る場合もあります。
 このように植物が食害などに応じて誘導的に生成する揮発性化合物をIVOC (Inducible Volatile Organic Compounds) と言います。植物が生成・放出するIVOCを構成する化合物の組成及び放出量は植物が受けるストレス(上記の病原菌の感染や草食動物による食害など)の種類と強弱によって変化します。このためIVOCを質的・量的に調べれば、ストレス下にある植物の被害状況を知り得ることになります。一方植物側でも、例えば食害などの被害を受けた植物の周辺に存在する無害の植物が、被害を受けたIVOCの質的・量的変化を感じとって防御体制を予めとるような「立ち聞き」はあるのかという疑問が生まれます。こうした経緯から1990年前後からこのような「植物間コミュニケーション」に関する研究が始まりました。

<現状と課題>
1990年前後から研究が始まって以来、ワタやトマトなどで植物間コミュニケーションが存在することが”実験室レベル”で示唆される結果が報告されるようになりました。その後2000年に入り、下記に示す研究などによって植物が”野外”で実際に立ち聞きしていることが明らかになりました。

○ハンノキ林の中の一部の葉にハンノキの害虫(ハンノキムシ)による食害を人為的に与えた後、この周囲の食害状況を調査した。その結果、最初に食害を与えてIVOCを生成・拡散を促進させた木に近い木々ほど食害が低減されていたことがわかった。さらにこの効果は数メートルに及び、80日間も効果が持続したことがわかった。

○野生のヤマヨモギに傷をつけると、その近くに生えている野生タバコが害虫から受ける食害が少なくなることがわかった。また野生タバコの花や種子が増加することもわかった。この結果、異種植物間でも植物間コミュニケーションが存在することが示唆された。

 一方IVOCの構成物質についても研究が進み、実験室レベルではサリチル酸メチル(タバコが産生)やジャスモン酸メチル(ヤマヨモギが産生)などが同定されています。

<今後の展望>
 植物間コミュニケーションは植物が未来を予期するという新しい視点を専門分野(特に化学生態学)に与えました。この結果、植物が潜在的に持つ「未来を予期する能力」をうまく引き出すような新しい発想で作物に病害虫耐性を付与できる手法の開発が今後進むことが期待されます。

<参考文献>
 植物が匂いを感じている?(松井健二 化学と生物06年10月号)
 植物の世界(朝日新聞社)


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