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『非行少年と弁護士たちの挑戦』 福岡県弁護士会子どもの権利委員会 子どもの権利を守る闘いの中で、誰が頼りになり、誰が頼りにならないか、次第にはっきりしてきました。 一言で片付けてしまうのは失礼なのでしょうが、公務員さんは頼りになりません。学校の先生も教育委員会も、警察も市役所も、政治家先生も児童相談所のスタッフも、本当は子どもなんて、言うことを聞かなければ殴って叩いて育てた方がうまくいくんだなどという感覚の人が結構います。仕事だから相談に乗ってやってるが、馬鹿馬鹿しい話だなどと思っていたりします。 ならばどういう団体が頼りになるかというと、先ず国際的な人権団体の日本支部、そして子どもの問題に意識的に取り組んでいる民間の人権団体、 そして各地域の弁護士会です。全ての弁護士会がそうだと太鼓判を押す訳ではありませんが、子どもの権利の問題に積極的に取り組んでいるところが多いという印象を受けます。 この本を出した、福岡県弁護士会もまた、その一例です。 この本で問題になっているのは、付添人制度。一般の裁判の場合、審議するためには必ず弁護士を付けることが必要で、必要な場合には国選弁護人を選んで担当するというシステムになっている。 ところが、少年事件の場合、それが無い。付添人という形で弁護士が付くことはできるのですが、あくまで、被疑者やその保護者から申し出があり、その費用を実費負担できる場合に限られているということです。国選弁護人制度に当たるものも無いので、現実の少年事件のほとんどは付添人無しで進められているとのことです。 この本には幾つかの少年事件の事例が載せられていますが、そこに描かれている様々なエピソードから共通して感じられるのは、全く法律の知識が無い少年が、法律のプロに裁かれることの悲惨さです。 本当は無罪なのに、学校に居るような感覚で、口答えして心証を悪くすると不利だろうと全ての罪を認めてしまい、少年院送りになりかけていた少年、保護観察中に警察官とトラブルになり、押し倒された拍子に掴んだ近くの車のミラーが壊れたことで器物破損、公務執行妨害で逮捕され、少年院送りになった少年。実は本人を救済する制度があるにも拘わらず、そのようなことを全く知らされずにいるというケースもあるようです。 大人でも、裁判というのは分かりにくいものです。まして、学校や家庭で、管理され、支配されることにならされている少年たちは、警察や裁判所の言いなりの状態で審議を進められる可能性が高いです。また、自分のポリシーというか、個人的な思いによって、自分に有利な証言をせずにいることもあるかもしれません。 そのような少年たちが、正しい事実に基づいて審議され、与えられた権利の中で自分にとって一番望ましい結論を得るために、法律の専門家の手助けは不可欠であると、この本を読んでそう思いました。 福岡県弁護士会は、法的に整備されていない少年事件の国選付添人制度を補う形で、ボランティア的に「全件付添人制度」を発足させます。有志の弁護士が登録し、国選弁護人のように当番制で常に何人かの当番弁護士が控えていて、いつでも少年事件に担当付添人が付けられる態勢を布いているとのことです。 担当費用は国選弁護人と同程度の低料金、しかも、そのかなりの部分は福岡県弁護士会自身が負担しているという念の入れようです。 簡易裁判所などに「全件付添人制度」の趣旨を理解してもらい、少年事件の審議がある時には予め連絡してもらえる手筈になっている。ところが、成人の事件のように法的拘束力が無いので、少年自身が付添人を拒否すれば、現実問題として付添人に付くことができない。ですから、担当付添人は先ず最初に、被疑者の少年の説得から始めなければならないのだそうです。 本人が付添人を依頼すれば、保護者が要らないと言っても、制度上は担当できるのだそうです。ですが、現実に少年の更生のために様々な方策を模索していく過程で、保護者の協力はやはり必要になってくる。そこで、保護者の同意を得られない場合も、担当付添人は説得する必要が出てくる。 このように、「全件付添人制度」の中での付添人は、一般の弁護人よりもずっと面倒な仕事を抱え込まされます。しかも弁護料は最低レベルで、その事件に割く労力の分、通常の弁護を減らす必要がありますので、担当すればするほど、収入が減るという、良いところ無しの仕事と言えるでしょう。 それでも、この本に具体的なケースを紹介している何人かの弁護士がそう書いているのですが、「少年事件は、一度担当すると止められない」のだそうです。 なぜ、少年事件を担当することがそんなに魅力的なのか、それは、この本を読んでみて判断してください。 もちろん、ここに書いてあるのは比較的うまくいった事例で、現実にはその何倍も、何十倍も、うまくいかなかった事例が存在するはずです。ここに紹介されているケースについても、プライバシー保護の観点から、細かい部分で脚色されていることもあるかと思います。 そういった点を割り引いてみた上で、やはりこの本は、一人でも多くの人に読んでいただきたい本です。そしてできれば、「全件付添人制度」は日本中に広まってほしいものです。 なにより、国は、こういうところにお金を使ってほしい。なんと言っても、子どもは国の宝ですから。止まらない少子化の中、ただでさえ少ない子どもたちが毎日のように虐待死していく時代、国家百年の計を計るのならば、救済すべきは銀行よりも子どもでしょう。 この本の中に出てくる弁護士さんたちの奔走の記録を読んでいて、ふとそんなことを思ったりしました。 戻る 前へ 次へ ホームへ |