いつから青い空を眺めていたのかわからない。
 青い空を眺めていて気を失ったのか。違う。倒れて、空が目にうつり、気を失って、青い空を眺めて、ただ、眺めて…ああ。混乱してる。
 馬小屋だった。
 ほし草の匂いが風に漂っていて、褐色の母馬がもそもそと喰んでいるなか、柔毛の仔馬がわき目もふらずに乳をのんでいるさまが、なぜか、忘れられない。
 自分にはこういうやりかたしかおもいつかなかった。
 弟の手術費用。それを得るための方法。いまのわたしが持つ唯一の手段。たたかわねばならない。
 うすれてゆく意識のなか、そんなおもいがどこかをふわふわ浮かんでいた。気がつくと、青い空を眺めていた。
 どこまでもつづくからっぽな青空にもまた、にじんだ雲がふわふわと浮かんでいた。風がほし草の匂いをはこんでくる。むきだしになった肌にも、その匂いは流れてゆく。
 カウンターでくらった一撃が決め手だった。
 対戦者のグロッキーに、踏みこんで右上段まわし蹴り。それが左側頭部に吸い込まれる寸前、相手の頭がすっと沈み、直後、顎で爆発がおきた。
 腰だめに放ったアッパーぎみの掌底。
 そう気づいたときには、もう、遅かった。

 試合は右まわりではじまった。
 一方のスタイルは空手。地を掘るようなすり足で相手のでかたをうかがう。
 もう一方はムエタイ。膝を曲げたつま先立ちで、すべるように歩をすすめる。