「関東うっちゃり会」活動月報No.003後編


◆登場人物◆
司会 多分、一番まともな人物
しんご(shingofgg) りんね天翔のサウンド担当&エグゼクティブプロデューサー(?)
たけし(TakeTake) りんね天翔のプログラム&グラフィック&企画と、その他の色々な作業担当

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2005.2.26 ジョナサン 妻恋坂店にて


司会 追加ステージですが、あれはまったくの新規作成なんですか?
たけし そう、完全オリジナル。アドバンス版のために一から作った。
司会 本編とはまた印象がかけ離れていますね。
たけし うん。さっきも言ったように、コンセプトは絶望だからね、とにかく雰囲気をシリアスにしようと思って、グラフィックもサウンド、効果音も、全部追加ステージ専用のものを用意した。
司会 基本的な質問なんですが、なぜ新規追加ステージを製作なさったんですか。
たけし もともと、なんらかのオリジナルな要素は入れようと思っていたんだよ。移植とはいっても、そのまんまじゃなくて以前のものより面白くしなくちゃ意味がないし、作ってる方としてもそれじゃ楽しくないからね。ただ、自分が気がかりだったのは、一般のお客さんが見た場合、PCからアドバンスに移植したっていうときに、どうしてもスペック的な部分に目がいくんじゃないかってことなんだよね。
司会 それはつまり、オリジナルのPC版から比べてグレードダウンしているように受け取られてしまうという意味ですか。
たけし そう、それだけは避けたかった。たしかにグラフィック部分だけ見れば、アドバンスはPCに比べようもないんだけど、やっぱり本物のゲーム機だけあって、実際に作ってみるとアドバンスってすごくゲームの設計がしやすいんだよね。
しんご 腐ってもゲーム機。
たけし 本当にそのとおりだと思う。べつに腐っちゃいない、バリバリの現役マシンなんだけど(笑)。つまりね、アドバンスってゲームが作りやすいんだよ。なんていうか、たしかに制約は多いんだけど、逆にいえばすごく無駄のない設計になっているから、頭の中にあるイメージを表現しやすいんだよね。とくにりんねはシンプルなゲームだから、アドバンスみたいにシンプルなハードにうまくはまってるんじゃないかと思うんだよ。
司会 それだけエッセンスが凝縮されていると。
たけし わりとね、自分ではそう思ってる。でも、お客さんが必ずそう受け止めてくれるとは限らないじゃない。それなら、ノって作ってるうちに追加ステージでも作って、完全に新作として楽しんでもらえるようにすればいいかなと思ったんだよね。
しんご 以前、サンクリだったっけ、買ってくれたお客さんに二周目ないのって聞かれたことあったんだよな。そんときにないって答えたたけしの悔しがりようをいまだに覚えてる。おれはあれがあったから、今回追加で思いっきり難しいステージを作ったんだと思ってた。
たけし それももちろんある。あのときは本当に残念だった。
司会 なにか、二周目に対する思い入れでもあるのですか?
たけし それは当然あるよ。二周目あってこそのシューティングでしょ。同じゲームなのに、ちょっとバランスを変えただけでまったく新しい遊び方が発見できる。これが二周目の醍醐味だよ。PC版のときも二周目を作る気は満々だったんだけど、いかんせんあのときは時間がなかったからね、断腸の思いで断念したんだよ。
司会 それでは、新規にステージを作るのではなく、二周目を再構成するという考えはなかったのですか?
たけし そういう選択肢もないではなかったんだけどね。だけど、本編以上に弾の量も増やせないし、時間たってから同じもんいじるってのも味気ない話だから。それになにより、アドバンスにはアドバンスなりのシューティングの作り方とか見せ方ってのがわかってきたんで、そっちを優先して作ってみたかったんだよね。
しんご ぶっちゃけた話、べつにりんねじゃなくてもいいやっていうことだったよな。
たけし うん。ゲームの方向性が本編とは違うからね。プレイ感覚も当然異なるし。ボリューム的には外伝的な位置づけで収録してるけど、かかってる手間暇からすると、完全に独立したゲームと同じぐらいの分量がある。
司会 実際にプレイ時間も長いですよね。
たけし このあいだ通しでプレイしたら15分くらいあったよ。あそこまで長くなるとは思わなかった。
司会 ステージの構成としては、あれはトータルで1ステージと見てよろしいのでしょうか。
たけし そういうことになるね。普通に作ったら三面分くらいのボリュームを詰め込んであるんだけどね。コメットさんの頃から、ひとつのステージのなかで同じ背景じゃなく、途中で展開が切りかわる見せ方をやりたかったっていうのと、クリアしたときの達成感を味わって欲しかったっていう考えでああいう構成にしたんだよ。
司会 デバッグもかねてひととおりプレイさせていただきましたけど、たしかにクリアしたときの満足感はすごかったです。
たけし そっか。うまくいってくれてよかった。
司会 シーンごとの音楽も、とても凝った作りになってましたよね。
たけし それはしんごのおかげね。
しんご すげえ苦労した。
たけし いかにして手を抜くかっていつも言ってたよね(笑)。
しんご 労力を最小限に抑えつつ、最大限ゴージャスに鳴らす。ここに極意があります。あんまうまくいかなかったけどね。
たけし いや、いつもいつも頭が下がるよ。今回だって、発注もしてないのに7曲も作ってくれたし。
しんご 気がついたらそれだけの分量になってたってだけの話で、半分は使いまわしだからな。
司会 あの曲って、今回もテクノモーターで製作されたんですか?
しんご いや、今回は全部SC-88proで作ってる。
司会 MIDIじゃないですか! いつのまにそんな高尚なものを!?
しんご なんか、おまえの反応はいちいち癪に障るな。前回、PC版のりんねを作り終わってすぐに買ったんだよ。テクノモーターには、もううんざりしてたからな。
司会 ということはおよそ二年前ですね。なるほど、まだ働いていてお金があった頃だ。
しんご なあたけし、こいつ殴っちゃっていいか。
たけし 終わってからね(笑)。でも、二年間、ほんとに宝の持ち腐れだったよね。
しんご 触りもしなかったからな。
たけし 今回、曲の製作頼んだときに、そんじゃやるかって言ってPCとの接続からはじめたもんね(笑)。途中、わからんとか怒りだして。
しんご そうそう。えらい苦労して配線し終わったあとで音出してみて、へーこんな音が出るんだってふたりして感心しあったりしてな。
たけし でも、あのとき本当にだいじょうぶだろうかって、ちょっと不安になった(笑)。
しんご やってるおれが一番不安だったけどね。
司会 追加ステージには確固とした世界観が確立しているように思えるのですが、ストーリーなども細かく設定されているのですか?
たけし いちおう、本編とリンクするようなかたちでストーリー設定も作ったよ。わりとSF的なアンチユートピアものってな感じで。前回りんねを作り終わったあと、ずっとメカメカしいものを作りたかったんだよね。そういう企画もいくつかたてたんだけど、なかなかまとまった時間がとれなくて。それで、今回こういうかたちで実現させた。
司会 敵キャラもすべて機械系で統一されてますよね。
たけし うん。できればもっとリアルな戦闘機なんかも出したかったんだけど、いかんせんドット絵の技術がねえ。それからメカと一緒にどうしてもやりたかったのが、多関節キャラ。
司会 あれですね、『ガンスターヒーローズ』の「ユニット・オブ・ザ・ランナー」。まさか『りんね天翔』にあれが登場するとはと思って、爆笑しちゃいました。
たけし そうなんだよ、見た目から走る動作まで全部一緒にしてね。わかる人いるかなあと思いながら作ってたんだけど。あれ作ってるときはすごく楽しかった。ガンヒーに限らず、トレジャーのアクションは全編多関節のオンパレードなんだよね。メガドラでは他に『ダイナマイトヘッディー』、『マクドナルド』、『エイリアンソルジャー』。
しんご 『エイリアンソルジャー』といえばボス百連発(笑)。
たけし 百もいないんだよね(笑)。
司会 サターンでは『シルエットミラージュ』がありましたね。
たけし あれはかなりやりこんだね。トレジャーの2Dアクションっていうとあれが最後になるんじゃないかな。
しんご ドリキャスの『バンガイオー』はちょっと違うし、64の『罪と罰』以降はみんな3Dだからなあ。
たけし あっ、思い出した! アドバンスで『鉄腕アトム』があるじゃん。
しんご そっか、『鉄腕アトム』か。やるなあ、トレジャー。トレジャーがアドバンスで弾幕シュー作ったら、きっととんでもないもん出してくるんだろうな。
たけし ほんと、及ぶべくもないよね。まあ、今回往年のトレジャーにちょっとでも近づきたいっていう思いで多関節に挑戦してみたんだけどね。
司会 さきほど、本編と追加ステージではゲームのプレイ感覚も違うとおっしゃっていましたが、具体的にはどのように違っているのでしょうか。
たけし そもそも、追加ステージは弾幕ゲーとして作ってないから。
司会 そうなんですか!?
しんご それはちょっと聞き捨てならねえ。
たけし そんなに過剰に反応されても困っちゃうんだけど(笑)。はじめに追加ステージを作るとき、アドバンスで表現可能な範囲で面白くするにはどうしたらいいかって考えたんだけど、まっ先に浮かんだのが弾幕の否定なんだよ。
司会 否定ですか。
たけし うん。もちろん、アドバンスのスペックだから、本編以上に細かいスプライトを大量に表示するのが不可能っていう実際的な問題もあったんだけど、本音を言ってしまえば、ちょっと弾幕にあきたんだよね。
しんご そのわりには追加ステージもしっかり大量の弾撃ってるぞ。
たけし たんに弾が多いっていうのと、弾幕は違うよ。一般的に、弾がゆっくりめでかつ量が多いものを弾幕シュー。量が多くても、弾が速いと弾速系っていって区別されるよね。
司会 弾幕系のシューティングでは、大量の弾がデザイン調に放出されるって印象もありますね。
たけし うん。ああいう軌道をデザインされた弾幕って見た目はたしかにきれいだけど、やりすぎると自機に関係ない場所にまでただ弾をばらまいているだけになっちゃうでしょ。自機狙いが多くて切り返しを多用するCAVEのシューティングが好きっていうのも、そういう部分に起因しているんだけどね。
司会 今回はそういったCAVE系のシューティングを目指したということですか。
たけし まあね。CAVEっていうよりも、狙っていたのは後期の東亜プランなんだけどね。高速で吐き出される大量の弾を切り返しで避けていくってやつ。
司会 ええと、『Dogyuun!』や『BATSUGUN』といったあのあたりでしょうか。
たけし いや、『達人王』(笑)。
しんご そりゃひでえ。
司会 たしかに、あれは間違っても弾幕シューとはいえませんね(笑)。
たけし でしょ。まあ、『達人王』っていうのはあくまでもシューティングの極北っていう意味で、あのゲームそのものにインスパイアされたわけじゃないんだけど。いずれにしても自分的に狙っていたのは、ああいった後期東亜プランと『イメージファイト2』の融合だから、どうやっても弾幕シューにはなるはずがないんだよね。
しんご そういや、おまえ、あの頃やたらと『イメージファイト2』やってたよな。そういうことだったのか。
たけし そう、そういうこと(笑)。
司会 『イメージファイト2』って、アーケードで続編なんか出てるんですか?
たけし いや、アーケードじゃなくて、驚いたことにPCエンジンのCD-ROMなんだよ。しかも正当な続編。テイストもあのまんまのね。
司会 へえ、そんなものがあるとはまったく知りませんでした。
たけし かなりよくできてるよ。へたなアニメのデモシーン以外は(笑)。
しんご アニメはへたでも参加してる声優はすごいけどな。主人公の古谷徹とか。
たけし 思いっきりガンダムなんだよね。「お父さんは戦闘機の方が大切なんですか」とか叫んだりして(笑)。
司会 やっぱりパターンゲームなんですか?
たけし もうガチガチ。一作目よりも難易度は上だよ。さすがアイレムって感じだね。
司会 面白そうですね。今度見つけたらやってみます。
たけし 見つけたら即買いだね。『イメージファイト』が好きなら絶対損しない名作だから。今回の追加ステージだって、『イメージファイト2』に捧げるオマージュみたいなもんだよ(笑)。
司会 オマージュといえば、ゲーム中に懐かしい演出がたくさんありますよね。先ほど話題にあげた多関節ロボットもそうですが、はじめのボス戦が終わったあとの雲の上に昇っていくシーンですとか。
たけし 一回目の番長ロボ戦のあとね。
しんご 『エアバスター』みたいでいいよな、あそこ。
たけし うん。自分も作ってる最中に『エアバスター』っぽいなと思ってた。はじめは雲の上に昇っていくっていうのじゃなくて、ガラス張りの高層ビルをバックに高速に縦スクロールしていくっていう演出を考えていたんだけど、実際にグラフィック描いてスクロールさせてみたらどうみてもトイレの壁に貼ってあるタイルかなんかにしか見えなくてね(笑)。
司会 それも見てみたかったですね(笑)。でも、その後の演出の流れから見ても、私は『エアバスター』の方が好きです。嵐のまえの静けさといった感じで昇っていって、雲の上に出ると同時にボスが登場してテンションが上がるじゃないですか。あの瞬間が気持ちいいです。
たけし それはしんごの音楽のおかげだよ。今回、自分からはなにも注文してないからね。
司会 たしかに、どのシーンを見てもゲーム展開と音楽がうまくリンクされていますよね。
たけし そうなんだよね。実際、よくこれだけ合わせたなって感心しちゃって。
司会 事前に打ち合わせなどはなさったんですか? しんごさん。
しんご うーん、やったっけなあ。もう憶えてねえなあ。ただ、おれが曲作りはじめたときには、もうステージは全部できあがってたからな。曲の構成さえ決めちゃえば、画面と音合わせるの自体はそんなに難しくなかった。
司会 曲の製作はいつ頃からはじめられたのでしょうか。
しんご それはね、いま言ったようにたけしの作業がほぼすべて終わってから(笑)。
たけし あれにはまいったよね(笑)。音楽作ってよって頼んでからこっちの作業はどんどん進んでいくのに、しんごからはなんの連絡もないんだもの。
司会 依頼されたのはいつ頃なんですか。
たけし 追加ステージのグラフィックを描きはじめた頃。
しんご 八月入ってすぐだったよな。
たけし で、一曲目はこんな感じにしますってプロトタイプをもらったのが十月のなか頃(笑)。さらにそれが完成するまでに一ヶ月。その頃には、追加ステージもあらかたできあがってて、あとはバランス調整なんかが残ってるだけって状態なの。
司会 それはひどいですね(笑)。
たけし しんごが曲作ってるあいだ、音楽はずっと本編三面の曲を使いまわしてたんだよね。ゲーム中、あの曲が途切れることなくずっと鳴り続けてるの。シリアスな絶望感っていうコンセプトなのに(笑)。
しんご いや、それだけにちゃんと曲つけたときの感動が倍増しただろ。
たけし どこをどう解釈すればそんな都合のいい言い訳を思いつくんだ!
司会 まあまあ、押さえて押さえて、どうどう(笑)。しかし、どうしてまたそんなに製作が遅れてしまったんでしょうか。
しんご 新しい機材だからねえ。扱い覚えるまでにどうしても時間かかるんだよねえ。
たけし 買ってから二年間どうしてたんだよ!
しんご それを言われると、まったくもって面目ない。
たけし でも、はじめに企画立てたときにしんごとも話して、そのとき音楽の方向性みたいなものも決めたんだけど、あのときはなんかすごいこと言ってたよね。
しんご アドバンスでゲーム作るんだから当然チップチューンみたいなこと言ってたよな。
司会 なんですか、そのチップチューンって。
しんご 最近マニアのあいだで流行ってるテクノのジャンルなんだよ。ゲームボーイとかファミコンの内蔵音源が出すチープなノイズサウンドだけで音楽を作るっていうやつで、妙にはまるんだよ。
司会 実際に聞いてみないとなんとも想像がつかないんですが、それって昔のゲームボーイやファミコンの音楽とどこか違うんでしょうか。
しんご うーん、そのへんの差を口であらわすのは難しいな。やっぱり、ものによって千差万別だから。ぐだぐだ説明するよりも、現物を聴いてみるのがいちばん手っ取り早いんだよ。帰ったら、ネットでチップチューンって入れてググれ。作った曲を公開してる人間が大量にいるよ。
司会 わかりました、聴いてみます。で、しんごさんもそのチップチューンをやろうとしたんですか。
しんご はじめにたけしと相談したときはな。メインのメロディーをファミコンで作って、それにMIDIで伴奏つけて、最後に全部MODにぶちこんでプレイクビーツかぶせるとか、壮大なことをもくろんでた。
司会 なにがなんだかよくわからないんですが、とにかくそのチップチューンというのはやらずに、今回はすべてSC-88proで作られてるんですよね。
しんご まあ、なにごとも企画段階がいちばん楽しいってことで。
たけし ほんとだよね。どう考えても実現不可能なことを嬉々として語りあってるもんね。
しんご あのときは、おれも本当にチップチューンに挑戦してみようと思ってたんだよ。でも、実際に作りはじめちゃうと、もうMIDIの扱い覚えるのでいっぱいいっぱいだったね。
司会 そう言っているわりには、最終的に七曲しっかり作りあげてますよね。
しんご だからさ、もうどうにもならないっていうところまでいっちゃうと、質はどうでもいい、とにかく形だけでもなんとかしなきゃってことになるじゃない。そうやって破れかぶれで完成させたのが、あの七曲ってわけ。
たけし 破れかぶれってことはないよ、よくできてると思うけどね。けど、はじめてのツールでものを作るときの不安っていうのはわかる。どこまで完成度を上げられるかってのは作ってみないとわからないものだからね。
しんご まあな。逆説的な言い方になるけど、今回あと二ヶ月くらいしかないっていうところまできたときに、じゃあ残り二ヶ月でどこまで作り込めるかっていう目算が立てられる程度にはツールも使いこなせるようになってたんで、曲作り自体は意外と早く終わらせることができたよ。
たけし じゃあ、次は期待してますんで。
しんご 次は他の人間に曲頼もう。亀有発電脳晩餐会はサウンド担当を大募集中であります(笑)。
たけし おいおい(笑)。
司会 ゲーム中の演出部分についてもうちょっと突っ込んだお話を伺いたいのですが、黒いロボット型のボスキャラがなんども出現しますが、最終的にあれを倒すのがストーリーなんですか?
たけし そう。あの番長ロボへの復讐ってのがゲームのストーリー。設定ではあの番長ロボの正体は、科学の発展のために人体改造手術の実験台になった科学者で、ある時突然暴走して世界を破壊するんだよね。その時に、りんねの目のまえでちあきが力尽きるの。その復讐のために、りんねが番長ロボと戦うっていうストーリーなんだよ。だからプレイヤーキャラクターもりんねしかいない。
司会 先ほどもおっしゃってましたけど、なんですか、その番長ロボって。
たけし 開発中はあのロボットのことをずっと番長ロボって呼んでたんだよね。正式名称はクリムゾン・アイっていうの。
しんご あ、正式名称が番長ロボじゃないんだ。
たけし ちがうよ。さすがにゲーム中でも番長ロボじゃ雰囲気ぶちこわしじゃん(笑)。
しんご でも、曲名には「前略、番長ロボ」ってつけちゃったぞ。
たけし そうなんだよね。焦ってたんで、うっかりそのままプログラミングしちゃったんだよ。いまからじゃ直そうにも直せないから困っちゃって(笑)。
司会 あいかわらず、とぼけた曲名が多いですよね。クリムゾン・アイでしたっけ、それの音楽三曲にしても、「前略、番長ロボ」、「番長ロボ 敬具」、「追伸、番長ロボ」。
たけし 全部しんごがつけた。ゲーム中のTPOにもうちょっと気をつかって欲しいよね(笑)。
しんご おれだってテンパってたんだよ(笑)。でも曲調は全部シリアスに決めただろ。
たけし うん。こちらの期待通りにはっちゃけてくれたよね。スケジュールの遅れについてはともかく、ゲーム出だしの曲を聴かせてもらったときに、音楽に関しては問題なさそうだと安心したよ。
司会 ゲーム出だしというと、「希望」という曲ですね。あのコーラスだけの曲ですよね。
しんご そう。今回MIDIに変えてなにがいちばん嬉しかったかって、コーラスがリアルになったことがいちばん嬉しかったんだよ。前回、五面のボスの曲でまともなコーラスが使えなかったことがすげえ心残りだったんでさ。
司会 「Burning Sigh」ですね。
しんご そんなタイトルだったけか。追加ステージの場合、しょっぱなの雰囲気からして本編とは異質だし、音の方でもとにかく意表をつきたいってのがあったんで、あんな感じでいこうと思ったんだよ。たけしに見せるまでは、これはちょっとって言われるんじゃないかとビクビクしてたんだけどな。
たけし いやいや。はじめに聴いたときはびっくりしたけどね、自分はああいうのが欲しかったんだよ。あそこはゲーム中でも前章って感じの部分で、演出的には死地に赴くっていう悲壮感を出したかったんだよね。だから敵の攻撃を意図的に少なめにしつつ、プレイヤーに対してはしっかり殺しにかかっていってるっていう静かな殺気を感じさせたかったの。あれで音楽が軽めのものだとへんに間延びして間抜けな印象になっちゃうんだけど、ああいう音楽にしてくれたんで、うまいこと緊張感を持続させられることができたと思うよ。
しんご たださ、オープニングをああいう曲にしちゃったおかげで、直後のボス戦とのかねあいが難しくなっちゃったんだよな。やっぱり徐々にテンション上げてボス戦で一気に燃え上がるってのが理想なんだけど、あの曲の場合、雰囲気は盛り上がるかも知れないけど、テンション最高潮って感じじゃないだろ。結局、最後はテンポアップさせてどんどん音階あげていってっていう強引な方法で乗り切ったけど、そのあとの番長ロボの曲のインパクトがちょっち弱い気がするんだよな。
たけし うーん、はじめの曲が強烈だからねえ。ボスの曲をもうちょっと音量上げればよかったかもしれないね。
しんご ゲームはじまってから一回目の番長ロボ戦までを二曲にせずに、一曲のままにしちゃおうってことも考えたんだけどな。映画音楽みたいな劇伴にしちゃえば盛り上がるんだけど、やっぱりゲームの場合、プレイヤー次第で音楽のタイミングが変わってくるだろ。
たけし そうだね。これがRPGなんかのムービーだったら悩む必要ないんだけどね。
しんご ああ。シューティングやアクションゲームで演出と音楽をあわせるのは難しいと、今回つくづく感じたよ。
司会 ラストのロボット戦では、それまでのボス曲とオープニングの曲を組み合わせて使用されていますが、あれはもともとひとつの曲として作られたんですか?
しんご 正確には、最終的にひとつの曲になるように作ったんだよ。とにかく手を抜くことばっか考えてたから、メロディと伴奏を作って、メロディだけ、伴奏だけ、ふたつ合わせたものっていうふうにすれば、一気に三曲完成じゃん。さらにそのメロディをメインテーマにしてちょっとアレンジかませば合計四曲。一挙四得でウハウハってわけ。
司会 なんだかずいぶんといい加減な発想で作られているみたいですが、いいんですか、たけしさん(笑)。
たけし いいんじゃないの(笑)。まあ実際、全体の演出に統一感を持たせられるってメリットもあるわけだし。
しんご そうそう。これは手抜きじゃない、正当な手法だ。『蒼穹紅蓮隊』のような伝統もある。
司会 あのボス曲って『蒼穹紅蓮隊』を意識していらしたんですか? なんとなく似てる気がしますけど。
しんご いや、強いて意識したといえば『イノセンス』だな。映画観て、そのまま劇場でサントラ買ったってくらい影響受けた。もともと和太鼓の乱舞って大好きだったんだよ。手段さえありゃいつでもやってやるって。だから、今回MIDIを手に入れて速攻で作った。欲を言えばもうちょっと生っぽい迫力を出したかったんだけど、MIDIじゃ難しかったみたい。ちなみに『蒼穹紅蓮隊』の「黒瞥」の曲はティンパニな。
たけし 似てるっていえば、『アウトラン』そっくりの曲あるよね(笑)。
しんご あるねえ(笑)。
司会 先ほど話題にあげた、『エアバスター』っぽい演出のシーンで流れる曲ですね。曲名が「上へ、上へ」。
たけし いきなり転調するのもびっくりするけど、転調したあとが「MAGICAL SOUND SHOWER」そっくりだからつい笑っちゃって(笑)。あれってわざとやったの?
しんご いや、気づいたらああなってた。ちょっと言い訳していい?
たけし どうぞ(笑)。
しんご もともとな、あの曲ではフュージョンっぽいやつがやってみたかったんだよ。
司会 なんですか、そのフュージョンって?
しんご 音楽のジャンルのことなんだけどな。まあ、ジャズとロックを融合させたようなやつ。有名なところだとT-SQUAREの「TRUTH」とか。あのF1のテーマ曲。
司会 ああ、はいはい。わかります。
しんご てゆーかさ、おれ、フュージョンっていったときに思い浮かんだのがあの曲しかなかったのよ。それで、あれとはちがうフュージョンっぽいメロディを一生懸命考えて、打ち込んでみたら『アウトラン』になってたの。
たけし ようするに、フュージョンっていうジャンルでしんごの頭のなかにインプットされていたのは、F1と『アウトラン』しかなかったってことだよね(笑)。
しんご うーん、やっぱそうなるのかねえ。しかし、そうすると演歌っていって思い浮かぶのは『男はつらいよ』のテーマと都はるみしかないし、ジャズで思い浮かぶのは「テイクファイブ」と「クレオパトラの夢」だけだなあ。
司会 以前もおっしゃってましたよね。戦隊物風の曲を作ったら、『ガッチャマン』にしかならなかったって(笑)。
しんご 結局、おれにはオリジナリティがないのかもしれない。
たけし だいじょうぶ。自分もないから(笑)。
司会 この曲が流れているシーンのボスは触手がついたビッグコアのようなキャラなんですが、あれには正式名称があるのでしょうか。
たけし 「クリスタルコアもどき」かな。
司会 なんだか、まんまなんですけど(笑)。
たけし ごめん、開発コードのまんまでとくに考えてない(笑)。ちなみに、球体関節ロボットは「ルナウォーカー」っていうの。
司会 『作戦名ラグナロク』ですか?
たけし そう。動きはガンヒーの「ユニット・オブ・ザ・ランナー」だけど、名称はNMKに捧げようってことで。
しんご 並木学だしな。
たけし うん。シューターからすれば、ガンヒーよりもラグナロクの方が馴染み深いだろうしね。
しんご ラグナロクはおれもよくやったしね。
司会 やはり意識なさっていたんですか?
しんご そりゃね。なんたってさんたるると同じシチュエーションに曲つけるわけだし。けど、実際に曲作りはじめたら、そんなこと考えてる余裕なかったな。わずかにちょっとハウスっぽいっていう雰囲気が残ってるだけで。
たけし 曲名も「発進! ルナウォーカー」だしね。
しんご そうだっけ。なんのひねりもねえな。
たけし しんごはいつもひねりすぎなんだよ(笑)。
しんご あの曲は音も途中でひねってるんだよ。ぐにょーんって。ボスが登場したときにちょうどひねりが入るように工夫してな。苦労して作る以上は笑ってもらわないと。
たけし シリアスなんだから笑ってもらっちゃ困るって(笑)。
司会 それにしても、今回、ゲームの難易度は本当に笑えませんよ。
たけし そうかな。考えようによっちゃ、本編よりも楽だと思うけど。
司会 ……。すいません、ちょっと我を見失いそうになりました。
しんご 楽だという根拠を聞かせてもらおう。回答いかんによっては、買って頂いたお客さんの代わりに殴っておいてやる。
たけし 殴られておいた方がいいかもしれない(笑)。つまりね、今回弾幕っていえるようなものはほとんどなくて、出てくる敵の攻撃はだいたいが自機狙いの高速弾なんだけど、これってパターンさえわかっちゃえば、たいして弾を避ける必要がないってことなんだよね。これが半ば強制的に弾が排出される弾幕シューだと、網の目のような弾の隙間をかいくぐりつつ、攻撃に有利な位置に移動して一気に撃ち込むとか、ちょっとずつ避けながらちまちまダメージを与えるってことを繰り返さなきゃいけないんだけど、自機狙い弾なら敵が撃ってくる弾をある程度コントロールできるからさ。極端なこと言っちゃうと、攻略パターンさえしっかり組んじゃえばゲーム中に撃たれる弾の数をかなり減らせることができるの。
司会 たしかに、シューティングが上手い人のプレイを見ていると、非常に効率よく避けながら敵を倒していますよね。
たけし そうそう、そうなんだよ。弾幕、弾速の区別なく、シューティングにおけるパターン作りっていうのは、つまるところ最小限の動作で最大限敵を倒すってことだからさ。そういうプレイ見てると、ほんとに美しいじゃん。これぞシューティングの醍醐味って感じで。
しんご このあいだガレッガの攻略DVD見たけど、パターン化の極致を見た気がしたよな。ため息が出るほどきれいなプレイだった。
司会 あれは私も見ました。素晴らしいですよね。見とれちゃいます。
たけし でも、ああいうパターンの考え抜かれたプレイって、意外に簡単そうに見えるんだよね。
しんご 言えてる。ひょっとしたらおれでもできるんじゃないかって思う(笑)。
たけし しんごは身の程を知るべきだ(笑)。
しんご 思っただけじゃねえか!
たけし ごめん、冗談(笑)。でも、しんごがそう思うのも無理はないんだよ。シューティングのパターンって、言ってみればいかに敵に弾を出させないかってことを目的に組んでるから、知らない人間が見てると、弾が少ないって感じるんだよね。
司会 はじめてプレイするシューティングゲームで上手い人のプレイを先に見ていると、自分でプレイしたときに愕然とするときがあります。
しんご なんどそれを味わったことか。
たけし 自分は最近、『グラディウスX』でそれを味わったよ(笑)。
しんご またもやトレジャーか。
たけし そう。またもやトレジャー。あのゲームもグラフィックの美しささとあいまって、すごいパターン映えのするゲームだからね。りんねの追加ステージを作ってる最中にプレイしなくて、本当によかったと思うよ。
司会 それはどうしてですか。
たけし だって、間違いなく影響受けちゃうし、本気で対抗しようとしたら、それこそ一年くらい平気でかかっちゃうもの。
司会 それは、言ってみれば、『グラディウスX』とゲームの方向性が同じだったということでしょうか。
たけし いや、さすがにそんなおこがましいことは言えないよ。比較の対象にすらならないもん。ただ、気概だけは負けないつもり。だてにゲーム人生は送ってないよ。
しんご たけしはゲームで人生棒に振ってるからな。
たけし おれの人生はまだ終わってないよ(笑)。でも、これまでのシューティングで培ってきた知識を総動員したっていう意味なら、言い得て妙かもしれないね。
司会 どういう意味ですか。
たけし 「ぜつぼうのせかい」で目指したものって、要するにいま言ってたようなパターンの美しさなんだよね。しっかりパターン組んで効率よく敵を倒していったときが、いちばん面白いように作ったつもりなの。だから、てきとうにビーム撃ってると、敵の弾の出し方がものすごく汚くなる。ちゃんと敵の出現位置を憶えて撃ってくる弾をコントロールすれば、それほど絶望的な難易度ってわけでもないんだよ。本編よりも楽かもしれないってのはそういう意味なんだよね。
司会 なるほど。
たけし いまはシューティングっていうとやっぱり弾幕系が隆盛だからついつい見落としがちになっちゃうんだけど、思い起こしてみると、自分がはまっていた昔のシューティングってみんなこういう作りだったんだよ。
しんご 東亜プラン、アイレム、コナミ、タイトー、コンパイル、テクノソフト。どれも懐かしいねえ。
たけし ほんと、あの頃はまさに黄金期だったよね。アーケード、家庭用問わずに名作がたくさんあったし、それこそ攻略するゲームに事欠かない時代だったから。『イメージファイト2』をずっとやってて、数え切れないくらい死んでやっとクリアしたときに、あの当時の感覚をまざまざと思い出したんだよね。そのときに、なんとかこの感覚を現代でも味わうことができないかと思ったの。それなら作っちゃうのがいちばん手っ取り早いってのが、追加ステージ製作の原動力になってる。
司会 それはつまり、原点回帰と言っていいのでしょうか。
たけし あくまでも自分のなかにある原点ね。自分が面白いと感じる要素を純粋培養したのが、今回の追加ステージだから。
しんご なんか、この追加ステージって誰よりもたけしがいちばん楽しめそうだよな。
たけし ばれちゃう? 実はそうなんだよね(笑)。我ながら難しいなあと思いつつ、やりはじめると止まらないんだよ。
司会 となると、それだけ意気込んで製作したわりに、追加ステージを出現させた方がどうもまだいそうにないという状況がもどかしいですね(笑)。
たけし そうなんだよね。はじめは出現条件を難しくして出たときの驚きを重要視してたんだけど、やっぱり苦労して作ったんだから、ちょっとは話題になってほしいっていう色気もあるんだよね。
しんご だからもうちょっと簡単に出るようにすればって言ったのに。
たけし アイテムを揃える楽しさってのがやりたかったんだよ。昔のナムコの『ドルアーガの塔』みたいな。
しんご 『ドルアーガの塔』並じゃあ、いくらなんでも難しすぎだよ。
たけし うんちょっとね、あくまでもメインは追加ステージだからね。重点を置く場所をまちがえちゃったかなと思ってる。
司会 出現条件については、なにか考えておられるのですか?
たけし うん。サイト上で公開するつもり。このまんまだと、誰にも発見されることなく忘れ去られてしまうんじゃないかって危惧感が湧いてきたから(笑)。
しんご このあいだ作ったムービーはどうすんの?
たけし あれも時期を合わせて公開だね。
司会 なんですか、そのムービーって?
たけし 追加ステージの紹介用動画を作ったんだよ。ゲーム中の画面を取り込んで、編集してつなぎ合わせたものに音楽つけただけの簡単な作りなんだけど、まあ誰も見たことないだろうからインパクトだけはあるかな。
しんご 曲もムービー用にちょっと手直ししたんだけど。
たけし そういやそうだったね。でもあれってテンポ変えただけでしょ。
しんご 変えただけでしょってな、けっこう苦労してんだよ、あれでも。画面に合わせてかなり微妙な調整いれてるんだから。
たけし 冗談だって。曲の方で調整してくれたおかげで、動画は再編集しなくてすんだよ。
司会 最後に、今後の活動予定などありましたら教えていただけますか。
たけし いまんとこないね。またイベントにでも当選したら考えるよ。
しんご なし。また仕事辞めたら考える。
司会 ちなみに、今後またりんねで作品を作るということは?
たけし もういいよ、さすがに(笑)。今回だってりんねやることになったのは本当にたまたまだからね。
しんご おれはべつになんでもいいや。来るものは拒まず。お仕事待ってます。
司会 本日はありがとうございました。

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