「関東うっちゃり会」活動月報No.003前編


◆登場人物◆
司会 多分、一番まともな人物
しんご(shingofgg) りんね天翔のサウンド担当&エグゼクティブプロデューサー(?)
たけし(TakeTake) りんね天翔のプログラム&グラフィック&企画と、その他の色々な作業担当

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2005.2.26 ジョナサン 妻恋坂店にて


司会 はい、それでは皆さん集まったところで「関東うっちゃり会」第三回総決起集会を開催させて頂きたいと思います。
しんご ん、がんばってねー。
たけし なに他人事みたいな顔してんの。きみも当事者のひとりなんだから、ちゃんと参加してくれないと。
しんご おれはいま食うのに忙しい。
司会 食べてなかったんですか?
たけし いや、さっきそこのカレー屋でしこたまナン食べてたんだよ。タダメシとなるといくらでも食べるからね、しんごは。
しんご 食えるときに食っておかないとな。いつ食えなくなるかわからんし。
司会 なんか、しんごさんが言うと切実に響きますよね。
たけし うん、冗談には聞こえない。
司会 仕事はいましているんですか?
たけし またバイト始めたらしいよ。
司会 以前対談やったときに辞めたばかりで次の仕事探してるって言ってたじゃないですか。あれからまた変わったんですか?
たけし しばらくは人材派遣とかやってたらしいんだけどね、なんか食ってけないとか言って定職を探していたのが去年の春先だったかな。それ以降騒いでるの聞いてないから、うまいことどっかに潜りこんだんだと思うよ。
司会 なにやってんスかね、この人。
たけし さあ。あ、食べ終わった。
しんご おまえらね、人が食うのに夢中になって口はさまないからと思って、隣で好き放題言ってるな。だいたいにおいて、そうゆうネガティブな噂話は本人のいないところでするもんだろう。
たけし いや、聞こえてないかと思って(笑)。
しんご この距離でどうやったら聞こえなくなるっていうんだ!
司会 でもすごい食べっぷりでしたよ。押井守の映画みたいだった。
しんご フォローになっとらんわ!
司会 じゃあ落ち着いたところで本題に移りたいと思います。
たけし ん、ちゃっちゃと行っちゃって。
しんご おまえら、人の話を聞け!
司会 今回やっと亀有発電脳晩餐会製作の同人ゲーム第三弾が完成し、同時にこれまたやっとコミケに当選。めでたく発売の暁となったわけですが、製作されたのがゲームボーイアドバンス用シューティングゲームという同人としては非常に特異な方向性となっております。いったいどうしてまたゲームボーイアドバンスなんですか?
たけし うん、アドバンスの開発キットがあったから。
司会 えーと、それだけですか?
たけし 基本的にはそれだけなんだけど、さすがにこれだけじゃ対談にならないよね(笑)。
しんご そのとおりだ。成長したじゃないか。
司会 ほっとしました。
たけし まあ、そもそもの発端はネット上で見つけた開発環境と、それをアドバンス本体に転送するケーブルの存在を知ったってだけなんだけどね。実際に手に入れてPC上で作ったサンプルプログラムなんかを実機で動かしたり、ちょこちょこいじったりしてるうちに、もうちょっと本格的なものが作れないかと。
司会 それで『りんね天翔』の移植を思いついたというわけですか。
たけし いや、すぐさまそう思い立ったわけじゃないんだよね。もうちょっと本格的にアドバンスのプログラミングをやってみようとは思ったんだけど、べつにゲームを製作しようっていう気はなかったから。ほんのちょっと動かしてみたいってだけで。で、手元にオリジナルなデータがりんねしかなかったの。それならこれを流しこめばいいやってんで、とりあえず背景スクロールさせて弾幕を表示させてみたら、処理落ちもせずにうまいこと動いたんだよ。
しんご へえ、アドバンスってそんなに性能いいんだ。
たけし いや、実際に開発はじめたらいたるところで処理落ちしまくって大変だったけどね。初見でうまく動いていたもんだから、わりとかんたんに移植できるんじゃないかと勘違いして気軽に開発はじめたんだけど、あとあとすごい苦労することになった(笑)。
司会 それじゃあ、『りんね天翔』をゲームボーイアドバンスに移植することに意義があるとか、そういう意気込みがあって製作したってわけじゃなかったんですか。
たけし ないない、そんなもん。自分の場合、スタートラインはいつだってなんとなく面白そうってところだから。
しんご そうなんだよ。面白いから協力してよって話を持ちかけてきて、こっちが興味をそそられて聞いてるとあれよあれよという間に話が進んでいって、最終的にじゃあよろしくねってすごい責任ある仕事を人に任せてくるんだよな。おれなんかもう最初からプレッシャーのかたまりで、とてもじゃないけど面白いだなんて言ってる余裕はないわけ。
司会 逆に言えば、それだけ信頼されているということじゃないんですか(笑)。
しんご 信頼されてんだかどうかはわかんないけど、たけしは一度作業にかかるとものすごい勢いで進めていくからさ、またおれは焦らされるわけ。もう気を休める暇がないんだよね。
たけし やっぱり、作りはじめちゃうと周りのものが見えなくなるからね。グラフィックも自分で描いてる以上気分的にはひとりで作ってるのと同じだから、他人のペースのことなんか考えたこともないし。音楽のことは、しんごに全面的におまかせ。なんとかしてくれるだろうって。
司会 ほら、やっぱり信頼されてる(笑)。
しんご こういうのは信頼って言わないだろう。
たけし いやいや、やっぱり信頼あってのものですから(笑)。それと、りんねの製作動機でもうひとつつけ加えさせてもらうと、アドバンスで弾幕シューってのが我ながら面白いと思ったんだよね。
司会 確かに、聞いたことないですね。
たけし でしょ。
しんご もともとアドバンスってシューティング少ないよな。
たけし うん、アクションは多いんだけど、純粋なシューティングって数えるくらいしかない。
しんご なんだっけ、「グラディウス」と「ダライアス」が出てるのは知ってる。
たけし あと有名どころっていうと『奇々怪々』くらいかな。それから昔X68000で出てた『ファランクス』と、穴馬で『鋼鉄帝国』。
司会 ファミコンミニのシリーズで『ゼビウス』と『スターソルジャー』もありましたね。
しんご 忘れちゃいけない「スペースインベーダー」。
たけし あれはシューティングに入れていいのかな(笑)。
しんご なんかさ、このラインナップ見てると、コンシューマーにおけるシューティングの扱いってのが見えてくるよな。
たけし 過去の遺産としかみなされてないんだよね(笑)。
しんご シューティングゲームファンという少数派のユーザーのために、外しようのない作品を厳選してお届けいたします。
たけし たしかに(笑)。まあ、携帯ゲーム機の小さい画面に、シューティングが向いてないっていう理由もあるんだけど、それにしてもあからさまなラインナップだよね。
司会 それで、あえて『りんね天翔』を移植したと?
たけし あえてっていうほどの気負いはなかったけど、誰も考えないと思ったからね、アドバンスで弾幕シューなんて。それでこれは面白そうだと作りはじめたわけ。
司会 なるほど。製作はいつ頃からはじめられたんですか?
たけし いつだったっけなあ。夏にはすでにやっていたんだけど。
しんご りんねの移植をはじめたのが具体的にいつだったかはわかんないけど、たけしがアドバンスのプログラムをはじめたのは、去年の五月あたまだったな。
たけし あ、そんな前だったっけ。
しんご なんか雑誌買ってきたんだよ。アドバンスの開発ができるとかって触れこみのやつ。それのおまけみたいにしてケーブルがついてたんだよな、たしか。
たけし ああはいはい、思い出した。そういえば、もうそんなにまえになるんだ。正確には、あの本はLinuxで開発するための解説書で、ケーブルが欲しくて買ってきたんだけどね。
司会 たけしさんはWindowsで開発したんですか?
たけし そう。Devkit Advanceっていう海外製のツールでgccっていうフリーのコンパイラと、アドバンスのハードを初期化する基本的なライブラリがセットになってるやつ。実際にプログラミングする際は、秀丸エディタで書いてDos窓でコンパイルした。
しんご それってネット上でフリーで手に入んの?
たけし 完全にフリー。だから、その気になれば誰でもアドバンスのゲームは作れるんだよ。
しんご でも海外製ってことは全部英語なんだろ。おれラテン語とドイツ語はぺらぺらだけど、英語はダメなんだよ。
たけし そんなもん、エキサイト翻訳でじゅうぶんだよ。日本語の文法としてはおかしくても、アウトラインだけつかめればあとは使ってるうちに理解していくもんだから。
司会 つまり、そのツールさえダウンロードしてくれば、パソコンの同人ゲームを作るのと同じようにアドバンスのゲームを製作できるということでしょうか。
たけし あー、それはどうかなあ。やっぱり、PCの同人ゲーとまったく同じ感覚ってわけにはいかないと思う。そもそもアドバンスにはOSがないからね。OSがない以上、DirectXみたいな便利な開発環境もないわけだから、どうしたってメモリマップ使って本体を直接制御しなくちゃならない。
しんご なに、メモリマップって?
たけし えーと、なんて説明したらいいんだろう。すごく基本的なことだけにうまい説明が見つからないんだけど(笑)。
しんご 本体を直接制御ってことは、マシン語とかそうゆうもんなの?
たけし あー、それ違う。ぜんぜん違う。そもそも、この場合言語関係ないし。
司会 私は実際にプログラムをやったことがないので細かいディテールまではわからないのですが、おおまかにいうと、メモリマップとは本体に搭載されている、CPUが機械を動かすための命令の一覧表といっていいんじゃないでしょうか。
たけし うん、そうだね、そんな感じ。
しんご 命令って、プログラム言語のことじゃないの?
たけし この場合は違うんだよね。そうか、プログラミングの構文も命令って呼んだりするからごっちゃになっちゃうのか。
しんご つまり、プログラミングのときの命令と、メモリマップのときの命令は違うものであるということか。
たけし 違うもの。まったく質が異なる。はじめから詳しく説明するとね、コンピュータに搭載されているCPUっていうのはたんなる演算装置だから、それ単体ではマシンをどうやって動かすかっていう機能はないわけ。じゃあどうやって動かしたらいいのかってところで、メモリマップが必要になってくるの。ゲームボーイアドバンスを例えに出すと、まずゲーム中にまっ黒な画面を出すんなら、メモリマップの5000000Hっていう番地に0ってプログラムすれば、画面が黒くなるというわけ。メモリマップっていうのは、そういったコンピュータが機能する際に必要な動作のすべてが載っている指示書みたいなもので、コンピュータを動かすってことは最終的にこのメモリマップを操作するってことになるんだよね。
しんご うーん。てことは、そのメモリマップっていうのは、すべてのコンピュータに必ずあるのか?
たけし 例外なくかならず搭載されてる。コンピュータの基本的な仕組みの部分だからね。たぶんね、ひとくちにCPUって言っても、自分たちプログラマが言うCPUと一般のユーザーが言うCPUじゃニュアンスが異なるんだよ。自分がCPUって言う場合には本当に計算処理能力のことしか意味しないんだけど、一般の人たちの場合はパソコンの機能自体も含んじゃってるんじゃないかな。もっとはっきり言えば、WindowsやMacのOSの機能も含めてCPUの性能が良い悪いって言ってる気がする。それは決して間違いではないけれど、CPUが直接ハードを機能させているわけではなくて、あくまでもメモリマップの指示に従って動かしているわけなんだよ。
しんご えーと、つまるところCPUとメモリマップのふたつの力が合わさることで、はじめてコンピューターの中枢として機能する。でもプログラムをする必要のない、おれら一般のユーザーからすればそんな細かい話は難しくてよくわかんないから、コンピュータのCPUと言った場合、かならずそこにはメモリマップがあるんだよっていう程度に理解しておけば問題はないと、そういうことかな?
たけし うん。なんかちょっと引っかかるけど、そういうことです(笑)。
司会 ちょっと補足したいのですが、PCのようにOSがある場合はDirectXのようなライブラリがあるわけで、このライブラリをもとにしてプログラミングすることで間接的にメモリマップを操作しているということですよね。
たけし そういうこと。もともとメモリマップを効率よく操作するためのライブラリってことだからね。
司会 ということは、OSのないゲームボーイアドバンスはメモリマップを直接操作しなければならないということで、やはり非常に高度な技術が必要になるんでしょうか。
たけし ああなるほど、そういう意味ね。いや、そんなに難しい技術は必要ないです。少なくとも、C言語レベルの知識があれば開発は可能。アドバンスのCPUはARM7っていって、これは携帯ゲーム機のCPUとしては性能がいい方だけど、それでもやっぱりPCに積まれてるPen4だのCeleronに比べたら路面電車とN700系新幹線くらいの差があるからね、メモリマップといったってたかが知れてる。自分はアドバンスで開発したとき「すずめ愛好会」と「GBAプログラミング研究所」っていうふたつのサイトを参考にしたんだけど、本体の動作まわりと開発の大まかな流れを知るだけなら、このふたつのサイトを見るだけでじゅうぶん用が足りる。
司会 ふたつとも有名ですよね。
たけし うん、欠かせないよね。逆に言えば、ある程度ゲームプログラミングの経験がある人間ならば、このふたつのサイトに書かれている内容を理解すれば、とりあえずアドバンスを動かす程度はできるってこと。それよりも自分が言いたいのは、技術や知識よりも根気が必要だってことだね。
しんご そうだよなあ、物作りってなによりもまず根気が必要だよなあ。
司会 知識や技術って、いわば蓄積されていくものですもんね。
しんご そうそう。結局、そういうものってあとからついてくるものなんだよな。大切なのはアイディアを実現させる熱意と、努力を持続させる根気ってことか。
司会 ゲーム製作だけに関わらず、すべての物作りに必要な前提条件ですね。
たけし いや、べつにそんな壮大な話をしてるんじゃなくて、自分はアドバンスの開発に限って言ったんだけど。
しんご どういう意味?
たけし アドバンスにはね、マップチップ作成っていう非常に地味で手間のかかる作業があってね、これがものすごい根気を必要とするの。一番の問題はこの作業がとてつもなくつまらないってことでね、この作業やってるあいだにりんねの移植をやめようかって何度考えたかわからないってほどつまらない。
司会 なんだ、根気が必要っていうのはそういう意味なんですか。
たけし いや、もちろんゲーム製作に根気は必要不可欠だけど、マップチップ作成って普通にPCでゲーム作ってると考えられないくらいの作業量だからね。ほんとうんざりする。
しんご なんなの、そのマップチップって。
たけし 平たく言うと、グラフィックのタイル化。PCと違ってアドバンスみたいなゲーム機の場合、背景のグラフィックを大きな一枚絵のまま表示できないんだよ。容量の問題があるから。で、少しでもデータ量を小さくするために背景のグラフィックをパーツで切り取って、それをパズルみたいに組み合わせることで一枚のグラフィックとして表示するわけ。例えば青空を表示するんだったら青一色のタイルを一個用意して、それを何十個か並べて背景にするとかね。他にも、これは背景じゃなくてスプライトの話になるんだけど、自機が出すビームもゲーム中では一本の太いビームに見えるけど、実際は十個くらいのパーツに分かれて表示されてるんだよ。
しんご へえー、そういう隠された苦労があるんだ。
たけし いたるところにある。背景はPC版のグラフィックを使いまわしたから、まだ分割するだけでよかったんだけど、キャラのグラフィックは全部書き直さなきゃならなかったから余計に手間がかかっちゃって。
司会 あ、あれはやはりキャラクターグラフィックを書き直しているんですか。プレイしてみると、自機の当たり判定が若干PC版と違うという感じがしたもので。
たけし うん、背景はPC版のグラフィックを縮小してそのまま使いまわしているんだけど、キャラや弾なんかのスプライトは縮小するとドットが潰れて見れたもんじゃなくなっちゃったんで、しかたなく全部書き直した。当たり判定は極力変わらないように気を遣ったんだけどね、どうしてもPC版と同じっていうふうにはいかなかったね。口の1ドットっていうのは変えてないんだけど、そもそもPC版とは口の位置が微妙に違うから。
司会 実際の移植作業というのは、どういった過程で進んでいったんでしょうか。
たけし まずはPC版のりんねのソースがそのまま使えるようにタスク処理を作って、そのあとはひたすらコピペ。で、実機上で動いているものを目で見てパラメータを調整。あとはさっき言ったマップチップの作成。基本的に移植作業っていえるものはこれだけだね。
しんご なに、そのタスク作業って?
たけし えーと、タスクっていうのはね……。
司会 ゲームがプレイされた際の画面の切り替えなどを管理するフローチャートですね。
たけし ひとくちで説明するとそういうことになるのかな。つまり、まず電源をいれるとスタート画面が表示されて、クレジットを入れてスタートボタンを押すと自機選択画面になる。次は一面、ある程度進むと中ボスが出てきて最後にボス戦。倒すとアイキャッチを挟んで二面が始まるっていうような、そういうグラフィック表示の構成過程をタスク処理っていうんだよね。
しんご つまり、ゲーム画面のスケジュールってことか?
たけし そうそう。だからタスクスケジュールってよくいうでしょ。はじめにしっかりこれを作っておかないと、なにをやってもゲームが進行しなくなっちゃうからね。
しんご なるほど。すまんな、まったくの素人なもんでさ。
たけし いや、細かいところまで聞いてもらえるんでこっちもありがたいよ。日頃こういうことを話す機会がないから。
司会 しかし、こういった技術的な話というのは、知識のない人が聞いていて面白いものなんでしょうか。
しんご おれはつまらなくはないけどね。少なくとも、この対談のまとめ読んでるような人にゲーム作りに興味のない人間はいないんじゃないの。
たけし そうか。じゃあ、わかりやすく話さないといけないね(笑)。
しんご 亀電は初心者にわかりやすくを第一に考えております。そんなことは言われなくてもわかっとるわいなんて上級者の方は、どうぞてきとうに読み飛ばしてください(笑)。
司会 やめてくださいよ。この支離滅裂な会話を苦労してやっと読めるようにしてる身にもなってください。知ってる人も知らない人も面白く読めるように苦労してますんで、お暇な人は読んでくださいねー。
たけし ふたりしてレコーダーに向かってなにやってんの(笑)。
司会 すいません、ちょっとはしゃぎすぎちゃいました。話を戻しますが、PCからゲームボーイアドバンスに移植した際の変更点などはあるのでしょうか。
たけし けっこうある。目立ったところだと、敵を倒したときの果物が出ない、それから三面以降の敵の攻撃パターンとか。
しんご あ、やっぱりあれ変わってるんだ。
たけし うん、変えざるを得なかったね。果物に関してもそうなんだけど、やっぱりアドバンスだと一度に表示できるスプライト数が少ないっていうのがネックになっちゃって、画面全体を覆うような弾幕は使えなかったんだよね。一番ひどかったのが二面のボスの最終パターン。
司会 「ここ」でしたっけ。私、あれが登場するときの吹き出しが好きなんですよ。妙に笑えて。
たけし そういえば、あの吹き出しのなかに書いてある文字もPC版とは変わってるね。
しんご へえ、ぜんぜん気づかんかった。
たけし しんごはそもそも見てないんじゃないのか(笑)。二面ボスの最終パターンは細かい弾が画面一杯に散らばってるんだけど、はじめにそのまま移植したら処理落ちがひどくて、とてもじゃないけどゲームにならなかったんだよ。それでこれはやばいと思って、当たり判定のルーチンを見直して極力軽くなるように書き直したんだけど、それでもまだ実用レベルにはほど遠かったんだよね。最終的にしかたなく弾を間引いて、かわりに個々の弾を大きくすることでなんとか見れるようにした。あのときは軽い絶望感を味わったね。
司会 二面ボスのあのパターンがダメってことは、その後の展開すべてで同様の弾幕は使えないってことですものね。
たけし そのとおり。ただ、全ゲーム展開を見ても、二面ボスの最終パターンは弾の量がかなり多いからね。はじめに表示量の限界がわかったことで、その後の移植作業の目安にはなったよ。
しんご 一番多いのはどこなの?
たけし PC版では三面のボス。三つ目の攻撃パターンで、赤と青の弾が花びら状に拡散していくのがあるでしょ。あそこが一番多かった。結局ね、二面作ってるときにそういう壁を感じて、移植するにも限界点が見えちゃったんだよね。
司会 限界点というのは、具体的に弾の量という意味ですか?
たけし うん。まあ、それ以前にグラフィックに関してもまったく同じというわけにはいかなくて、二面の背景なんかもPC版だとひまわりが半透明で重なって三重スクロールしてるのが、アドバンスでは不透明の背景が二重スクロールとかいろいろあるんだけど、決定的なのはやっぱり弾幕だね。たとえば、二面と三面に出てくるマシンガン兎の編隊いるじゃない。アドバンスのスペックだと、あれが限界。
司会 紫色の弾をビームのように撃ってくるあれですか。
たけし そう。ゲーム中にあれを出すと、ものすごい無駄な容量がかかるんだよ。
しんご そうなの? まっすぐ連続して弾撃ってるだけに見えるけど。
たけし それは本当に見た目だけしか見ていないお言葉ですよ(笑)。あのマシンガンって、自機を狙って撃つ方向を変えてくるじゃないか。あれって兎の編隊を出したときに、一緒にマシンガンの弾道分のグラフィックも全部読み込んでるってことなんだよね。つまり、ゲーム中では一本のビームを表示してるだけでも、自機狙いで撃つ以上あらゆる方向を向く可能性があるわけで、内部処理では全方向を16分割して、16枚×アニメーション2枚分の弾のグラフィックを溜めこんでるってことなんだよ。そうなると、ステージに登場するキャラが全てVRAMに収まりきらないんで、三面ではしかたなく途中でVRAMを書き直してるんだよ。そういう意味でも、三面が限界だった。
しんご それって、面の途中でロードしてるって意味?
たけし そのとおり。だんだんわかってきたじゃない(笑)。これがCD-ROMだったらゲーム中にローディング画面が表示されちゃうところなんだけど、VRAMから高速でデータを読み取れるアドバンスならゲームの進行の妨げにならない。
司会 ROMカートリッジならではの力業ですね。三面が限界とおっしゃいましたが、それでは四面以降はどうなっているのでしょうか。
たけし ほぼパターン全取っ替えと言っていいと思う。四面については、後半はほぼ新作といっていいので、攻略パターンも当然異なるよ。PC版のりんねの四面を作ってたときって、じつは自分すごく体調が落ちこんでたんだよ。完成してからも、四面だけは作り込みが甘いって感じてたんで、今回はパターンを見直せてラッキーだった。
司会 つまり、四面に関してはゲームボーイアドバンス版『りんね天翔』の方が完成型だということですか。
たけし うん、より近いよね。アドバンス版の方は、PC版よりも切り返しが多くなってる。あと、これはゲーム全体にいえることなんだけど、PC版よりも敵が柔らかくなってる。やっぱりちょっと硬かったなって思ったもんで。
しんご 敵が柔らかくなったのと弾数が減ったので、三面のボスなんかもだいぶ楽になってるよな。
司会 それはありがたいです。非常にありがたいです。
しんご 本当に。
たけし そのぶん四面は難しくなってるけどね(笑)。
司会 残念です。非常に残念です。
しんご 本当に。
司会 他に変更点などはありますか?
たけし 細かいところまであげるときりがないんだけど、ひとつ、しんごのたっての要望でエンディングのスタッフロールの名前を変えた。
司会 ほう。
たけし 開発者のネームのあとに全部「あどばんす」ってつけた(笑)。
司会 えーと、それってなにか意味があるのでしょうか。
たけし あるの?
しんご ない。
たけし だそうです(笑)。
司会 はあ。
たけし そうそう、それからラスボスなくした。
しんご え、そうなの?
司会 チビさゆりんですよね。それはまた、いったいどうしてですか?
たけし もともと、PC版でもあれはおまけ的な意味合いでつけていたからね。
司会 おまけといいますと?
たけし 二周目がないぶん、最後で気分を切りかえようと思ってラスボスつけたんだよ。がらっと雰囲気変わるでしょ。ただ、今回のアドバンスでは二周目のかわりとして追加ステージを新しく作ったんで、チビさゆりんがいる意味がなくなっちゃったのね。だから削除した。
しんご そんな。せっかく曲作ったのに。
たけし サウンドテストにはちゃんと入ってるよ(笑)。
司会 いまさりげなく追加ステージとおっしゃいましたけど、そろそろその話題に入ってもいいでしょうか。
たけし わざわざ待ってたの?
司会 はい。なんとなく、はじめからその話題に入ってしまうと他のことが聞けなくなりそうな気がしましたもので。
たけし 確かにそれは言えてるかも知れない(笑)。
司会 追加ステージですが、あれは「ぜつぼうのせかい」というタイトルなんですか?
たけし はじめはなんとなくそう呼んでいただけなんだけど、いつのまにかあれが正式なタイトルになっちゃったね。
しんご 絶望的なストーリーに絶望的な難易度だったっけ。
司会 コンセプトはそういうこと。でも、確かに難しいけど、クリアできないって意味じゃないんで。多少本編よりもシビアに調節してあるって程度だから。
しんご 本編よりも難しいんじゃ、やっぱり絶望的だよ(笑)。
たけし そうは言っても、しんごだってもうじき本編クリアできそうでしょ。何度もやってれば必ずクリアできるよ。
司会 えっ、しんごさん、クリアできそうなんですか!?
しんご なんだ、その驚きようは、無礼な奴だな。おれだってやればできるんだよ。
たけし いま四面だっけ?
しんご いちおう四面の中ボスまではコンスタントに行けるようになった。もっとも、最近はぜんぜんやってないんだけどな。
たけし そこまで行ければ、クリアは目前だよ。五面はボス戦だけだし。そうそう、話を戻しちゃうんだけど、アドバンスに移植したとき五面の出だしをちょっと変えたんだよね。
司会 ほう、どのようにですか。
たけし 曲のイントロに合わせてザコを出すようにしたんだよ。以前からそれが心残りになってて。
司会 前回の対談の際におっしゃってましたよね。『DRIUSU』を想定していたって。
たけし うん。せっかくああいう曲にしてくれたんだし、イントロがもったいないって思って。
しんご 作曲者冥利に尽きます。
後編に続く…

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