文楽【ひらかな盛衰記】 [2003.12.6]
今年2月に続いての公演。2月は四段目であったが、今回は三段目。、 国立劇場小ホールの壁一杯に「笹引」の絵がかかっている。 鎌倉の討手から山吹御前と若君を守るため奮戦するお筆。 皆殺された後、遺骸を笹に乗せて引いていく場面の絵で、 実際に舞台を観ると、その迫力を改めて実感。
※三段目※
【大津宿屋の段】
二組の人々が宿で隣りあわせて泊まったことから話は始まる。 片方は木曾の義仲の妻子・山吹御前駒若君と、腰元お筆、鎌田隼人の主従四人。 追手を逃れて逃走中、御前が体調を崩して難儀している。 もう一組は船頭権四郎と娘およし、その子槌松の三人で巡礼姿。 ぐずる駒若君を権四郎が大津絵を見せてなだめ、和やかに話し、やがて眠りにつく。 しかし駒若・槌松の子供たちは夜中に起きだして遊び初める。 そこへ山吹御前らを追う番場忠太らが踏み込む。闇の中で、二人の子供は取り違えられる。
【笹引の段】
お筆は駒若を抱いた山吹御前を連れて、隼人が追手を足止めするすきに逃げ出す。 しかし隼人は討死し、山吹御前は子供を取り上げられ、切られてしまう。 様子を見に行っていたお筆が戻って見たのは、首の無い幼児の遺体と、ショックで死にそうな山吹御前、 父隼人の遺体だった。若君と思った幼児はよく見ると巡礼姿で、ここで取り違えに気付く。 お筆は父の遺体を薮に隠し、とうとう息を引き取った山吹御前の遺体を笹竹にのせて引いていき、 若君を探しだすと心に誓う。
【松右衛門内の段】
権四郎の家では、およしの前夫の回向に近所の人が集まっている。 人々は槌松の変わりようを口にするが、巡礼中に宿で取り違えたことを説明されて納得する。 そこへおよしの現夫・松右衛門が漁から帰ってきてお礼を述べる。 松右衛門は実は義仲四天王の一人・樋口次郎兼光で、逆櫓をあやつる技術習得のため、 権四郎の娘婿になったのだった。 そこへお筆が訪ねてきて、本物の槌松が殺されたこと、駒若君を返してほしいことを述べる。 権四郎は激怒し、駒若を殺そうとするが、正体をあらわした松右衛門に奪い返される。
【逆櫓の段】
松右衛門に逆櫓の技術を学びに来ていたのは、実は鎌倉方の追手であった。 いきなり大勢に取り囲まれ、樋口次郎は権四郎が訴人したことに気付く。 現れた畠山重忠は、樋口を捕えるかわりに、駒若君の身の安全を保証する。 樋口は潔く捕えられながら、権四郎・およしとの永遠の別れを惜しむ。 追われる主人を必死で守るお筆の強さが印象的。

文楽【ひらかな盛衰記】 [2003.2.9]
1739年大坂竹本座初演。文耕堂・竹田出雲等合作。5段時代物。
源義経の木曽義仲討伐から、一の谷の合戦までの史実を背景に、 『源平盛衰記』をもとにわかりやすく描いたもの。 角書に「逆櫓の松」と「矢箙(えびら)の梅」とある。 ひとつは木曽義仲の四天王の一人、樋口次郎が松右衛門と名を変え、大坂・福島の船頭になって、義経への復讐の機会を狙う物語。
もうひとつは、坂東一の風流男、二枚目の梶原源太景季と腰元・千鳥の恋物語。 千鳥が遊女梅ヶ枝になって金の工面に『無間の鐘』をつき、奇跡をおこす話。 『無間の鐘』とは、この鐘を打つと来世は無間地獄へ堕ちるものの現世では富に恵まれるという、伝説の鐘。
今回は後者の景季と千鳥の恋物語のお話。『無間の鐘』の場面は、頭の飾り物を外し、 髪を振り乱し柄杓を手にする姿で女の執念の凄さを表現する、傾城梅ヶ枝を蓑助さんの人形で。
※四段目※
【辻法印の段】
梶原源太景季と摂津まで逃げた千鳥は、神崎で全盛の遊女梅ヶ枝となり、勘当の身の景季は、辻法印の家に 匿われている。千鳥の姉お筆は、千鳥の行方を占ってもらうため、法印の家を訪ねる。 付近の百姓から兵糧米を徴発するため、景季はいやがる法印を弁慶に仕立てる。
【神崎揚屋の段】
梅ヶ枝は、姉お筆と巡り合い、父の非業の死を知り、敵を討と討とうと誓い合う。 伊達姿で現れた景季は、梅ヶ枝に預けておいた鎧を受け取りたいという。 鎧は、梅ヶ枝の揚代三百両の質となっていて、当惑した景季は自害しようとする。 金を工面しようとする梅ヶ枝だが、急に整うはずもなく、庭先の手鉢を『無間の鐘』になぞらえ、 一心を込めて杓で打とうとする。その時、2階の窓から三百両の金が投げ出される。
【奥座敷の段】
鎧の戻った奥座敷では、梅ヶ枝とお筆の父の敵が、景季の父の梶原景時であることがわかり、 梅ヶ枝は途方にくれる。景季の母延寿が現れ、三百両の金を投げたのは自分であり、 梅ヶ枝に感謝すること、そして姉妹の敵討を思いとどまらせるため自害の覚悟をみせる。 延寿の説得にお筆も敵討を思いとどまる。 鎧を身につけた景季は、梅ヶ枝の志の梅花を箙(えびら)に差し、出陣して行く。