爆破12月24日「絶対零度の狂気」

 

初めに。

 このイベントは、中学生以下入場不可、しかも「お笑い一切なし」という
ふれこみで、次長・課長の河本くん、満の諸岡くんのふたりのみで繰り広げる
「マジ芝居」イベントでした。クリスマスイブの夜8時半から、
ちょっと興味深げな表情をした人たちが集まりました・・・

 

(このイベント、メモを取って覚えられるような内容ではなかったし、テープレコーダー
の類も使わなかったので、全て記憶に頼っています。ですから、台詞などは、
ちょっとずつ違っているかもしれません。あしからず・・・)

 

前説

 前説があるとは思わなかったので、党首(ハリガネなどに付いてはる構成作家の
山内さんの愛称)が登場したときにはびっくりしました。
党首は、「携帯やポケベルなどは、バイブにするのではなく、今この場で電源を切って
おいて下さい。ここで切ってください」といつになく強めの口調。そして、
「カメラ・ビデオの撮影も、今日だけは禁止させてもらいます」とのこと。ビデオを持ってきた子の
残念そうな声も上がりましたが、みんな従っていました。で、党首の演説(←変わってきてる)は
これだけだったので、ハリガネ党としてはちょっと残念でした。
面白いこととか言って欲しかったのに〜。でも、「普通の男」だから、これでいいのかも(笑)。

 

 

「絶対零度の狂気」

 舞台は真っ暗なまま、大音量で音楽が流れる中、河本の声でナレーションが流れる。
彼が語っているのは、
「クリスマスイブにはしゃぐ街と人を眺めながら、うすら笑いを浮かべる17歳の少年」
のこと。そして、幕が開き、ふたりの人物が現れる。

 

 事務机と筆記具、椅子があり、舞台向かって右側に、グレーの作業服のようなものを
着た少年(諸岡)が無表情で、うつむきがちに座っている。客席に背を向けたまま、
犯罪心理学者だというスーツ姿の人物(河本)が語りかける。

「君が、5人もの人物を無差別に殺した理由を教えてくれないか。僕は、君に早く更生して
この医療少年院を出て欲しいし、君のような人物をもう作りたくないんだ」。
うなずく少年。質問が始まる。

 

「幼い頃、両親に虐待を受けたとか、そういう経験はないか?」
「僕は、これまでの犯罪者とは違う。両親に暴力を振るわれたとか、そういう経験はありません。
ただ、両親に不信感は抱いていました。」
 そして少年は、何故両親に不信感を抱くようになったかを、静かに語る。
その結果、祖母にしか心を許さなくなってしまった経過も。

 

祖母の死。

「僕も、幼い頃に父を亡くしているから、君の気持ちはよく分かるよ」
「あなたは、そのときどう思ったのですか?」
「人の死というものが実感できなくて、あした朝起きたら、父がまたいるんじゃ
ないかと思ったよ。」
「僕は、<人って簡単に死ぬんだな>と思いました。」

祖母は、これまで色んなものを一生懸命築き上げてきたのに、布団の中で、
眠るように死んでいった。積んできたブロックを、一瞬にして崩すように。

「僕は、そのブロックを壊す役目をしたいと思いました」

 

「祖母の死のことを思ったとき、僕は、幼い頃に見た美術館でのある作品のことを
思い出しました」
「どんな作品だい?」
「きれいに造り上げられた彫刻が、バラバラに壊されたものです」
「何でそんなものを・・・」
「僕は、芸術作品を造り上げたかった。
<破壊美>というやつです。」
「そんなもののために、君は5人もの人物を無差別に殺したというのか!?
その人たちは、君に殺されるために生まれてきたんじゃないんだ!」

「生まれてきたんですよ」
静かに言い放つ少年。

「結果論ですよ。スポーツと一緒です。ある選手がどれだけ一生懸命努力して練習
しても、結局他の選手に追い抜かれたら、その選手の踏み台になったということでしょう?
それと一緒だとは思いませんか?」
「・・・・・・」

 

「じゃ、じゃあ、君が、同級生を殺したときのことを教えてもらえないか」
少年は、たまたまそこにいた同級生が自分よりも体格が小さかったから殺そうと思ったこと。
殺すために、近くの山に同級生を誘ったが、彼をよく観察していれば、山に行くことを断られる
とは思わなかったこと。首を絞めて殺すのには苦労したこと・・・を語る。
語りながら、嬉しそうな表情を押さえ切れない・・・

「殺したとき、どう思った?」
快感でした。これから先、僕が人を殺して得られるであろう快感よりも、大きいと思いました。」

 

少年は、
「あなたは、もしも人を殺すとしたら、どうやって殺しますか?」
と、質問を投げかける。戸惑いながら学者が、
「ナイフで心臓を一突き・・・?」
と答えると、少年は
「しかし、ナイフを持っていることを相手に気取られたら?」
と、学者の述べる殺人の方法を次々と否定していく。

そしてとりあげた1本のボールペン。
「あっ、いつの間に・・・!?」
「例えば、こんなのはどうでしょう?これなら、怪しまれることはありません。
これで殺されるのは痛いですよ・・・」
薄ら笑いを浮かべながら、ボールペンを学者の首に突きつける少年。

そして学者の後ろに回り、彼を羽交い締めにしてボールペンを・・・
「やめろ!やめてくれ!」

 

「冗談ですよ。こんなところで人を殺したら、ここを出るのが遅くなってしまう。
せっかく模範囚で通しているのに」
「・・・お前、ここを出てまさか・・・」
「そうですよ」

やはり、薄ら笑いを浮かべながら少年が答える。

「・・・こっこの、気違い野郎!!」

 

少年は嬉しそうに笑う。
やっと出ましたね、本音が。僕は、貴方の心の底を見ていたんですよ。

 

学者は苦悶する。

私は、この少年の犯した罪を、社会や、学校や、両親や、多重人格障害なんかに
責任転嫁しようとしていた。今メディアがそうしているのと同じように。

だけど、こいつは・・・こんなサイコ野郎のために俺は・・・

 

これまで築き上げてきたものへの信頼を失い、苦しむ学者。
それを後目に、少年は部屋を出ていく。

 

暗転。

 

再び、河本によるナレーションが流れる。
「6年後のクリスマスイブ、この少年は、ビルから落ちた姿で発見された。
死因は、6年前に自分が犯した連続殺人の罪に耐えきれずの自殺であろうという、
偉い学者たちの見解だった。
しかし、たったひとつ謎とされていたのは、この少年の血液から、ボールペンのインクが
検出されたことである・・・」

 

BGMの音量がだんだん大きくなってゆき、最高潮に達したところで、幕。

 

再び幕が開いて照明がつき、河本、諸岡登場。

 客席にも何となくホッとしたような空気が流れました。幕が閉じてから、一言もしゃべる人
はいませんでしたから・・・まだ役から抜けきれず笑顔のなかなか出てこない諸岡くんの表情を
見ていると、それに比べてちょっとだけいつもに近い河本くんの声が優しく聞こえたものです。
「またやりたいですね」と言う河本くんの言葉に、「今度はこんな長台詞はイヤやけど」と
返したとき、諸岡くんやっと日常に戻ったようでした(でもいつもより声がずっと低かった(^^;)。

 

感想。

 まず、ほとんど諸岡くんがひとりでしゃべったと言っても過言ではない前半部分での
彼の演技の怖さ。特に目を見ていると、本当に怖くなってきました。
台詞のひとつひとつがものすごく憎らしかったし・・・。

 河本くんは、後半に自分の観念が狂わされて、自分までが狂ってしまうというところが
すごかった。前半、諸岡くんへの相づちのような台詞ばかりで、「これはもろっちの独壇場やん」
と思っていたのは思いっきり間違ってました。そのために前半押さえていたんですね。

 で、ふたりの演技は、ちょっとずつ違うんですね。もろっちの場合、台詞をかんでしまったとき
その瞬間だけ見てるこっちも素に戻ってしまうんだけど、河本くんは、かんだ台詞も上手く演技
に昇華していっていました。逆に、表情での演技では、諸岡くんはほんとにスゴイ。
こんなのを見てしまうと、満やってるときも、何だかサイコキラーになりそうに思って怖くなってしまう・・・

 

 ちょっと気になったのは、ストーリー上、「こんな簡単にこういう風な展開になるものかな」と
疑問に思ったあたりでしょうか。犯罪史上的に見ると、、こういう犯罪っていうのはけっこう
よくあるものなんじゃないかしら、って。
「殺人事件のプロ」は、こんなことくらいで狂わされたりしないんじゃないかなあ・・・
ってこれは、最近の猟奇事件に慣らされてしまった現代社会だから思うことなんでしょうけれど。
自分の考えながらイヤな思考だなとは思うのですが・・・

 

 演出など、誰が付けているのか分からないのですが、照明効果はすごかったですね。
わたしの席がもしかしたらすごくいい効果が得られる場所だったのかもしれませんが、
薄暗かったり、急にまぶしく照らしたり、照明が変わるたびもろっちの表情にほんとに
ドキドキしました。

 

 この日最終回だったドラマ「眠れる森」もかなわない、いいものを見せてもらいました。

 

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