信号機制御回路に対するDCC簡易コントローラのInputUnit3装置の
ルート機能とチェーン機能の設定例
以下に、北米Nレイアウトに実装している信号機制御回路とDCC簡易コントローラの連携の設定例を具体的に説明します。
1:はじめに
この信号機制御回路では信号機どうしの連動機能(赤Rの次は黄Y、その次は緑G、その次もGという仕掛け)は自動化されますが、@:特定の信号機をR(赤)にするとか、A:分岐経路におうじて連動経路を切り替えるとか、B:信号機の切り替わりタイミングを走行方向に応じて調節するとか、これらの遠隔制御を信号機制御回路の基板上に搭載したDCCアクセサリーデコーダでおこないます。これらはポイント切り替えに連動させます。
例えば、駅から列車を発進させるとき、ポイントを切り替えますが、この操作に連動させてこれら多数の手動制御(@、A、B)を一括しておこなうのは容易ではありません。そこでDCCコマンドステーションに装備されているルート機能(一括制御機能)を使うことになります。ところが、市販のDCCコマンドステーションのルート機能は制約がきつくて、以下のような設定をするのは無理があります。ちなみに国内で普及しているDigitraxDCS50(D101)というコマンドステーションにはルート機能そのものが装備されていない。これに対し、本機は信号機制御をおこなうために十分なルート機能とチェーン機能(あるルートから他のルートを呼び出す機能)を有しています。

図1:レイアウトの全体図(自動運転ソフトRR&Coの設定画面)
2:信号機制御回路について
具体例として、図1に示すRoute1a, Route1b, Route5aの3経路に関する信号機制御についてのみ考えます。図2は図1の信号機制御回路のネットワーク図です。この信号機制御回路では、Type-A基板とType-BL基板,Type-BR基板、Type-C基板を10芯フラットケーブル接続してネットワークを構築することにより、信号機どうしの連動機能を実現します。図2において、それらはそれぞれA,BL,BR,Cで表しています。これら基板の詳細は別ページを参照してください。
ちなみに、Type-C基板は完全に自律して動作するので、以下のような遠隔操作の必要はありません。Type-Aは個々の信号機の信号現示を連動制御するときの基本となる回路基板ですが、厳密には、「信号機そのもの」というよりは「一つの経路の信号現示」を制御するので、一つの信号機を制御するのに分岐経路数だけType-A基板が必要になります。そして、一つのType-A基板で双方向運行に対応しているので、背中合わせに配置される2本の信号機を一つのType-A基板で制御します。一方、Type-BL,BR基板は分岐経路があるとき連動経路を切り替える基板であり、厳密には、「合流する経路」については切り替え制御は不要ですが、「分岐する経路」について切り替え制御します。これらType-A、BL、BR基板にはDCCアクセサリーデコーダを搭載しており本機(DCC簡易コントローラ)またはDCCコマンドステーションから遠隔制御します。

図2:信号機制御回路基板のネットワーク接続例(図1に対応した例)
3:Route1aを引く場合(具体例)
図2のRoute1aという経路は図3のRoute1Lの経路に相当します。二段ヘッド信号機がずらり並んでいますが、これらは北米UnionPacific鉄道の信号ルールで動作します。しかし、日本型でも以下の説明は全く同じです。簡単に言うと、上段ヘッドS1a,S2a,,,,S5aは直進ルート、つまり、図3の丸A印の辺りにある両渡りポイントを直進する経路用です。下段ヘッドは両渡りをクロスする経路用です。つまり、上下が同時に進行現示(緑、G)になることはない。さらに重要なことは、例えばS1aをGにするとき、S1bをRにするだけでなく、S2a,S2b,S3a,S3bもRにしなければいけません。同様に、S4b,S5bもRです。なぜなら、それらの経路に同時に列車が走ると衝突するからです。このように、信号機どうしの現示連動は、直列に並んだ信号機どうしだけでなく、図3のように並列に並んだ信号機どうしでも制御する必要があります。この点が信号機制御のややこしいところです。
以上をまとめると、Route1a経路を引く場合に遠隔制御すべき命令は、図2をもとに、
命令リスト
@:Type-A基板2a, 3a, 1b, 2b, 3b, 4b, 5bにおける出発信号機(右から左へ向かう運行経路の信号現示)を赤(R)にする。
A:Type-A基板1a,2a, 3a, 1b, 2b, 3b, 4b, 5bにおける場内信号機(左から右へ向かう運行経路の信号現示)を赤(R)にする。
B:Type-BL基板1Lを1a側(non-div側)分岐への連動経路に切り替える。
C:Type-A基板1aにおける出発信号機(右から左へ向かう運行経路の信号現示)を緑(G)にする。
となります。繰り返しますが、これらはすべて基板上のDCCアクセサリーデコーダをDCCにより遠隔制御して一括操作します。そして、ポイント操作に連動させるわけです。

図3:図1のレイアウトの出発信号機の配置
4:Route5aを引く場合
図1のRoute5aという経路は図3のRoute5Rという経路に相当します。この経路を引くときの命令は以下のようになります。ここでRoute1aとRoute5aは同時に運行可能な経路です。つまり、これらの出発信号機は干渉しない。
命令リスト
@:Type-A基板4a, 1b, 2b, 3b, 4b, 5bにおける出発信号機(右から左へ向かう運行経路の信号現示)を赤(R)にする。
A:Type-A基板4a, 5a, 1b, 2b, 3b, 4b, 5bにおける場内信号機(左から右へ向かう運行経路の信号現示)を赤(R)にする。
B:Type-BL基板5Lを5a側(non-div側)分岐への連動経路に切り替える。
C:Type-A基板5aにおける出発信号機(右から左へ向かう運行経路の信号現示)を緑(G)にする。
このリストをRoute1aのリストと比較してみてください。その違いが重要になります。

図4:両渡りポイントをクロスする経路の例
5:Route1bを引く場合
図1のRoute1bという経路は図4のRoute1Rという経路に相当します。今までと同様に、この経路を引くときの命令は以下のようになります。ここで、このRoute1bはRoute1aやRoute5aとは同時に運行不可能な経路です。つまり、これらの出発信号機は同時に進行現示にできないことに注意。
命令リスト
@:Type-A基板1a,2a,3a,4a,5a, 1b, 2b, 3b, 4b, 5bにおける出発信号機(右から左へ向かう運行経路の信号現示)を赤(R)にする。
A:Type-A基板2a,3a,4a, 5a, 1b, 2b, 3b, 4b, 5bにおける場内信号機(左から右へ向かう運行経路の信号現示)を赤(R)にする。
B:Type-BL基板1Lを1b側(medium-div側)分岐への連動経路に切り替える。
C:Type-A基板1bにおける出発信号機(右から左へ向かう運行経路の信号現示)を緑(G)にする。

図5:出発信号機のタイミングを決めるGap位置(在線センサーエリアの境界点)
6:信号機の切り替わりタイミング制御
この信号機制御回路では在線センサー回路を搭載しており、列車の動きに合わせて信号現示が自動的に変化します。つまり、列車の先頭部が信号機を通り抜けて「すぐに」進行現示Gは停止現示Rに切り替わります。このような信号機の切り替わりタイミングは在線センサーエリアの境界点(Gap位置)により決まります。ところが、複雑にポイントが配置された駅構内では、この切り替わりタイミングを調整する必要が生じます。図5は出発信号機のタイミングを決めるGap位置であり、この位置がセンサーエリアの境界になります(図6)。

図6:図5のセンサーエリアを赤線と黄線で示す。
同様に、場内信号機つまり駅に進入するときの信号機について、その切り替わりタイミングを図7と8に示します。

図7:場内信号機S7のタイミングを決めるGap位置(在線センサーエリアの境界点)。このため、両渡りポイントのレールは途中で切断加工してあり、2本の平行レールのいずれにも、外側レールに片ギャップを作ってある。

図8:図7の場合の在線センサーエリアの境界点。境界点は図6よりも右側に移動する。これにより場内信号機の切り替わりタイミングを決める。

図9:Route1b経路の場合のセンサーエリアの境界点
図9はRoute1bの場合です。図6との違いは、黄線エリアが両渡りポイントにおいてクロス経路になっています。以上見てきたように、二箇所のGapにはさまれたSW-Section1とSW-Section2というポイント群のエリアは、走行方向に応じて、駅構内側または本線側のいずれかの在線センサーエリアに「取り込まれる形」で信号機制御をおこないます。これにより、走行方向に応じて、信号機の切り替わりタイミングを調整します。
この「取り込み」操作をおこなうには、SW-Section1とSW-Section2への給電経路を切り替える操作が必要になります(=在線センサーエリアの切り替え)。この切り替え操作は図10のようなリレー回路つきのDCCアクセサリーデコーダによりおこないます。ちなみに、Type-BL、BR基板にはこの操作をおこなう汎用リレー回路をオプション装備できるようにしてあるので、図10のような単独の回路は不要になる。
図6,8,9は具体例です。実際には、ポイントの開通方向と走行方向の組み合わせにより、在線センサーエリアの切り替えは様々なバリエーションが生じるので、6つのリレー回路(図10と図10a)を使っています。この切り替え操作もポイント切り替え操作と同時に一括処理します。

図10:信号機切り替わりタイミングを決めるリレー回路。DCCアクセサリーデコーダを併設しており信号機制御回路と同様に遠隔操作できる。なお、Type-BR,BL基板ではこの回路をオプションとして装備できるようにしてある。

図10a:6つのリレー回路によるセンサーエリアの切り替え。2つの赤い区間への給電を右側の2つの本線または左側のヤード内の5線のいずれかに切り替える回路。これにより信号機の切り替わりタイミングを走行方向に応じて調整する。SW1は両渡りポイントの開通方向と連動、SW2,SW3は走行方向で切り替え、SW4,SW5,SW6はヤード側の3つのポイントの切り替えに連動させる。
7:DCC簡易コントローラ(InputUnit3)のルート機能とチェーン機能

図11:InputUnit3基板。これで16ルートが設定できる。各ルートは押しボタンにより起動できるし、DCCコマンドステーションから770-998アドレス+Closed命令を送って起動することもできる。
ルート機能とは、複数のDCCアクセサリーデコーダを一括制御する機能です。複数のポイントを経路ごとにまとめて登録しておき、一括操作するときに使いますが、ここではさらに上述の信号機制御にも使います。
チェーン機能とは、一つのルートから他のルートを呼び出す機能です。この機能をうまく使うと、ルートの設定登録の作業が楽になります。
PIC16F877A-1とPIC16F877A-2の末尾の‐1と−2はPIC16F877Aへの書き込みプログラムの違いを表しています。つまり、前者はloconet-cstn04-2011Aug5-tst2.asmを、後者はloconet-cstn04-2011Aug5-tst5.asmを書き込んだものです。これらはレジストモード以外のときは全く同じ回路ですが、少し違う動作をします(チェーン機能の動作順序が違う)。つまり、図11の二つのICソケットはどちらでも同様に使えるし、すべて前者だけとか、すべて後者だけを装着して使うこともできます。ただし、右側のICソケットはレジストモード(ルート機能の設定)に使えますが、左側はノーマルモード(通常の使用時)とスロー動作モード(ルート設定内容を確認したいとき)でのみ使える点が違います。
レジストモードにおけるルート設定方法やスロー動作モードにおけるルート設定の確認方法については、DCC簡易コントローラ回路の解説ページを参照してください。以下では、ルートに設定すべき内容だけを説明します。
8:ルート機能とチェーン機能の設定例
一つのルートには実行命令は最大で14個まで登録できます。登録する命令が13個以下の場合は、999cを入れると、そこでルート処理は強制終了します。
8-1:PIC16F877A-1へのルート登録
このPIC16F877A へは、「チェーン機能において呼び出されるルート」だけを登録します。
代表アドレス:770c(DCCコマンドステーションからSWモードで呼び出すためのアドレス)
@:145t(DCCアドレス145のthrown命令、図2の1a基板の左行き出発信号機をRにする)
A:97t (図2の1a基板の右行き場内信号機をRにする)
B:100t(図2の2a基板の左行き出発信号機をRにする)
C:141t(図2の2a基板の右行き場内信号機をRにする)
D:147t(図2の3a基板の左行き出発信号機をRにする)
E:99t (図2の3a基板の右行き場内信号機をRにする)
F:98t (図2の1b基板の左行き出発信号機をRにする)
G:143t(図2の1b基板の右行き場内信号機をRにする)
H:132t(図2の2b基板の左行き出発信号機をRにする)
I:103t(図2の2b基板の右行き場内信号機をRにする)
J:101t(図2の3b基板の左行き出発信号機をRにする)
K:136t(図2の3b基板の右行き場内信号機をRにする)
L:105t(図2の4b基板の左行き出発信号機をRにする)
M:130t(図2の4b基板の右行き場内信号機をRにする)
補足:例えば、「1a基板の右行き場内信号機」、「2a基板の右行き場内信号機」、「3a基板の右行き場内信号機」、「4b基板の右行き場内信号機」、「5b基板の右行き場内信号機」、は「信号機」としては同じもの(一つ)です。そして、Type-BR基板(4R,3R,1R)で選択された一つの経路に沿って、これらのうち一つの信号機の現示にもとづいて連動制御されます。
代表アドレス:771c
@:107t(図2の5b基板の右行き場内信号機をRにする)
A:134t(図2の5b基板の左行き出発信号機をRにする)
B:999c(Mまでの途中で設定を止めたいときのアドレス)
C:
D:
E:
F:
G:
H:
I:
J:
K:
L:
M:
代表アドレス:772c
@:130t(図2の4a基板の右行き場内信号機をRにする)
A:140t(図2の4a基板の左行き出発信号機をRにする)
B:137t(図2の5a基板の右行き場内信号機をRにする)
C:134t(図2の5a基板の左行き出発信号機をRにする)
D:105t(図2の4b基板の右行き場内信号機をRにする)
E:138t(図2の4b基板の左行き出発信号機をRにする)
F:139t(図2の5b基板の右行き場内信号機をRにする)
G:107t(図2の5b基板の左行き出発信号機をRにする)
H:103t(図2の1b基板の右行き場内信号機をRにする)
I:99t (図2の1b基板の左行き出発信号機をRにする)
J:97t (図2の2b基板の右行き場内信号機をRにする)
K:101t(図2の2b基板の左行き出発信号機をRにする)
L:98t (図2の3b基板の右行き場内信号機をRにする)
M:100t(図2の3b基板の左行き出発信号機をRにする)
8-2:PIC16F877A-2へのルート登録
このPIC16F877A へは、「チェーン機能において呼び出し元のルート」だけを登録します。以下のように、770c、771c、772c(チェーン機能)をEまでに登録しておくと、それらチェーン機能の処理後にF以降が実行されます。もし、以下のルート設定をPIC16F877A-1へ登録すると、770c、771c、772cは999cの後に実行されます。このような実行順序の違いに注意してください。また、InputUnit3を増設するとき、770c、771c、772cを異なるPIC16F877Aへ登録すると、それらの実行順序は770c=>771c=>772cとは限らないことにも注意してください(微妙なタイミングの違いで実行順序が変化する)。
代表アドレス:780c(Route1aを引くときにDCCコマンドステーションから780c命令を送る)
@:35c(ポイント1切り替え、定位)
A:37c(ポイント2切り替え、定位)
B:770c(チェーン機能によるルートの呼び出し(実行))
C:771c(チェーン機能によるルートの呼び出し(実行))
D:238t (リレー回路の切り替え)
E:244c(リレー回路の切り替え)
F:125c(Type-BL基板の連動経路の切り替え、つまり、図2の1a基板から1L基板へ連動)
G:145c(信号機S1aをGにする)
H:218t(図2のA7基板の下行き閉塞信号機をRにする)
I:223c(図2のA7基板の下行き閉塞信号機をGにする)
J:999c
K:
L:
M:
代表アドレス:781c(Route1bを引くとき)
@:35t(ポイント1切り替え、反位)
A:37c(ポイント2切り替え、定位)
B:770c(チェーン機能によるルートの呼び出し(実行))
C:771c(チェーン機能によるルートの呼び出し(実行))
D:772c(チェーン機能によるルートの呼び出し(実行))
E:238c(リレー回路の切り替え、図9のようにする)
F:244c(リレー回路の切り替え、図9のようにする)
G:125t(Type-BL基板の連動経路の切り替え、つまり、図2の1b基板から1L基板へ連動)
H:97c(信号機S1bをGにする)
I:220t(図2のA6基板の下行き閉塞信号機をRにする)
J:224c(図2のA6基板の上行き閉塞信号機をGにする)
K:999c
L:
M:
代表アドレス:782c(Route5aを引くとき)
@:35c(ポイント1切り替え、定位)
A:36c(ポイント4切り替え、定位)
B:772c(チェーン機能によるルートの呼び出し(実行))
C:238t(リレー回路の切り替え、図6のようにする)
D:237c(リレー回路の切り替え、図6のようにする)
E:112c(Type-BL基板の連動経路の切り替え、つまり、図2の5a基板から5L基板へ連動)
F:138c(信号機S5aをGにする)
G:220t(図2のA6基板の下行き閉塞信号機をRにする)
H:224c(図2のA6基板の上行き閉塞信号機をGにする)
I:999c
J:
K:
L:
M:
補足:F以降に登録するアドレスが無い場合は、そのままではチェーン機能における中断(一時停止)機能が働きません。そのときは、Eまでにダミーアドレス(770以上のThrown命令=何も動作しない)を登録すればよい。
注意:ここで「Gにする」というのは正確な表現ではありません。進路前方の在線状態や現示連動によりG以外も有り得ます。
9:おわりに
このようにして、レイアウト上のすべての運行経路をルート設定します。信号機制御というものは、「どこからどこまでを一つのルートとして定義するか?」の判断はユーザーに任されています。例えば、上述のルート780c、781c、782cの末尾の命令として、本線上の中間閉塞信号機A6,A7の方向テコの操作も含めています。しかし、その先の場内信号機の操作までは含めていません。つまり、列車が次の場内信号機に接近した時点で、どの番線に進入するかを決めて、場内信号機から先のルートを引くようにしています。このようにルートを引くタイミングを決めるにあたって、「運行パターン」や「各信号機の現示をどのように出したいか?」をよく考えてください。信号機制御にはいろんなバリエーションがあることに気づくでしょう。
ところで、このDCC簡易コントローラのルート機能やチェーン機能は、ここで紹介した信号機制御以外にもいろいろな用途で使えると思います。工夫してみてください。