この文章は、明治42年、皇太子様の北陸行啓があり、小浜の3匹獅子舞の一組が
福井県下の余興の一つとして出演しました。
この資料は、この時雲浜壮年会で獅子舞の師匠であった
「渡辺亨氏」が演技や歌詞の概要を記した資料です。

当時はまだ「雲浜獅子」とは呼ばず「川越獅子」と言っていたことが、わかります。
この資料が書かれて91年がたっていますが、現在の「雲浜獅子」と
まったく変わらないことに驚かされます。

御来国に就て
川越獅子演芸の大略

若狭 雲浜壮年会
川越獅子演芸の大略

沿革は少略す

本場舞 先づ御庭前に整列し、警固、獅子追、 笛、
獅子雄(白)雌(赤)雄(黒)笛の 囃子に隋て白獅子ハ
場所へ進み出て 全場の位置を整理し続いて雌獅子ハ出て
白獅子に慕い隋場の舞を唄ふ 黒獅子ハ 前の雌雄獅子の
勇勢を恐れて場所へ出るを 差控へ居しが笛の音高く面白き
に引出されて白獅子の後とへと随た舞 雌雄揃ひたれば
是れを渡り拍子と名付く
暫くし獅子追ハ同音にて一種奇異なる節にて 往古より伝へし
侭の唄を唄ふなり

此歌は何れも言葉の甚おもしろきを 伴信友翁が訂し
当所の獅子舞にはかり 維新の後ハ唄へ伝へり

      歌 1.「回れや車 水車   大崎回ればせきにからまる
此歌にて三つの獅子ハ鼎の如く友ふ 連れ立歩む

2.「思ひもよらぬ朝きりおりて   そこで雌獅子が隠されたよ
此歌にて白獅子ハ雌獅子を見失ひ 勇気を増したる意なり

3.「此頃は 岩に雌獅子が巣をかけて   岩をくだいて雌獅子かくした
此歌にて前に白獅子ハ雌獅子を失ひしを 今居所を見出し
狂ひ近くなるの意なり 以上三つの歌を終りたれば雌雄獅子ハ
各各位置を定めるべく雌獅子ハ入太鼓の囃子 となる
 雌獅子ハ就中 白獅子にのみ 気を掛り 又白獅子ハ
黒獅子に雌獅子を 取られまじとし黒獅子ハ白獅子のすき間
あらば雌獅子を取る意にて互いに狂ひ争ふ

舞ハ序、破、急の三段に分かち 即ち序の舞 と云すふ

 雄獅子ハ打合ひ 恰も戦場に望み 臨機応変 神妙不審成るか
如く双方気掛り 是れを破乃舞と云ふ
 此舞ハ尤も気合を外さぬ 様打舞ふ処なれバ面白し 

雌獅子ハ此間**** 双方の中を取りて調子を外さず打囃子せり
三段狂ひの後ハ白獅子ハ老体の意を顕し 黒の若獅子ハ
此時こそと勢ひ勇み狂ひて 白獅子を追詰遂に白獅子ハ
勇気に尽き 詮方なくも我が座に伏せ退くの意にて
蹲踞休む

 是れを急の舞と云ふ

歌 4.「連んじゃくめいが腰に指たる中脇指ハ 鞘も目貫も小金
巻きそろそろ

黒獅子ハ白獅子雌獅子に反跳なく暫く して白獅子ハ
静に立上りて前の舞に反して 雄獅子ハ位置を転し 
黒獅子ハ雌獅子近く からみ油断なく狂ひ舞 
白獅子ハ黒獅子の 閑を見て雌獅子を取返すの意にて反跳狂ふなり

調子の行合に太鼓合せ

 歌  5.「嬉しやの風に霞を吹あけて   雌獅子雄獅子が顔ならべた

この歌にて各獅子ハ位置を正しく鼎の如く 形を為し****を見合すの意

6.「むすぼれし五色に染たる唐糸を   姫がほどけばほろりほどける

この歌にて白黒獅子ハ我が場に居直り  雌獅子ハ中央へ進み出て
今迄の葛藤の姿を糸のもつれを解くの意にて雌獅子ハ 和解の労を執るの意なり

7.「山がらが12のかひこをかいたてて 羽がひそろへてもんどりうつとの〜

この歌即替り笛の音も別の囃子となる

合の囃子

歌 8.「17 8のかみわけ姿を見る見ると   今のささらが気をちいがした〜

    合の舞

  歌 9.「我か里に雨がふるやら雲か出る   それをしるべにあとひきかばや〜
 是れにて前一囃子  警固より獅子追 雌雄獅子とも引く

 門掛りの笛にて再び出て渡り拍子となる

  歌 10.「京から下りし唐絵の屏風    一重にさらりと引回わした〜

 次き笛の譜かわりて神楽拍子の舞  

白黒獅子ハ太鼓合せ二度双方気合を掛け

舞面白し

11.「奥の間ハ生れおつると膝を折る   われも見まねに小金折り膝〜  

 蹲踞の囃子

 白獅子ハ 入太鼓の拍子  雌獅子ハ 太鼓の拍子  黒獅子ハ 揆の拍子

 此間ハ笛の囃子甚面白く

 蹲踞の歌

神社仏閣諸所演芸の場所に より適当の歌種々数あるも少なく 御庭にての歌に
「参り来るー
「是れの御庭を
「詠むれば  「小金小草があしにからまる  

この歌にハ笛の音軽く入るなり

  囃子

 歌 12.「白鷺が海のどなかに巣をかけて   波にゆられて跡立てそろ〜

 この歌にて雌雄の獅子ハ立上るなり

  囃子

 歌 13.「荒川の鮎の魚さへもんどり打は   われも見るまねにもんどり打たはや〜  

 囃子

  歌 14.「かしも河らぎ切も切よとこのまれて   ならい申してかしの木ぎぼし〜

 囃子

   歌 15.「日は暮る道の根笹に露がうく   おいとま申して跡ひきかばや〜

此歌の返し中央より警固、獅子追 笛吹と引き退き三頭の獅子ハ
囃子の 中に打囃子本場を退き終る

右は寛永年間の久しき往右より今に 至るまで川越獅子舞の業ハ
本を継き 大略を記さ舞
明治四十二年九月二十八日
渡辺 亨 謹誌
若狭国 雲浜壮年会


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