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【このページhttp://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20090617-01/1.htmのキャッシュです。】 タブーを問う!「大麻はなぜ悪いのか」第三弾 大麻が難病治療で効果を上げている! (週刊朝日 2009年06月26日号掲載) 2009年6月17日(水)配信 角界から主婦や大学生にまで大麻汚染が広がるなか、そもそも「大麻はなぜ悪いのか」という素朴な疑問から始まった本誌の取材は、医療大麻に行きついた。なんと、体に悪いはずの大麻が難病の治療に効果があるというのだ。だが、根拠の薄い大麻取締法と硬直化した厚生労働省の対応のため、多くの患者が苦しんだままだ。 大手保険会社で働いていた小笠原健次さん(43)はある日突然、難病に侵された。 「今から12、13年前、家で食事をして部屋に戻ろうとしたら突然、足が動かなくなったんです」 いくつかの病院をまわった結果、「多発性硬化症」と診断された。 多発性硬化症とは中枢神経系の脱髄疾患の一つで原因不明の難病だ。歩行障害や言語障害、極度の視力低下、痛みやしびれを伴う四肢麻痺など、患者によって病変の場所や症状は千差万別だという。 「僕の場合はいろんな場所に病巣が出ました。半月、手足がまったく動かない時もあった。それを見かねてなのか、入院先の担当医が『医者の立場では言えないが、MS(=多発性硬化症)には大麻が効くんだ。改善は難しいけど発症から最悪までを遅らせられる』と教えてくれたんです。僕は『大麻は麻薬だろう? 本当にそんなものが効くの?』と半信半疑でした」 自分で調べるうちに海外では多発性硬化症治療に大麻が使われていることがわかる。「ハワイなら手に入りやすい」という知人のアドバイスを受け、「大麻を吸いにハワイに行きたい」と家族を説得した。製薬会社に勤務していた妻(50)は、当時の気持ちをこう振り返る。 「麻薬といわれるものの中でもモルヒネなどは薬として使われているのに、大麻だとなぜダメなのか。とにかく、何でも試してみたかった。主人はそれくらい悪い状態だったんです」 妻の理解を得て幼い子供2人も一緒に家族全員でハワイへ飛んだ。 医療用の大麻が合法化されている国には現在、カナダ、イスラエル、ドイツ、スペイン、オランダなどがある。米国ではハワイやカリフォルニアなどの13州が州法で合法だ。 実際にカリフォルニアで医療大麻の現場を見てきたという『マリファナ青春旅行』の著者、麻枝光一(まえだ・こういち)さん(59)はこう語る。 「医療大麻を合法化している州では、がんやエイズなど特定の患者にライセンスを発行し、それを見せれば乾燥大麻や苗が購入できるんです。カリフォルニアでは患者が大麻を買ってその場で吸う“処方所”が大通りにある。そこへ毎日通っているというエイズの患者は『ここは生活の一部だ』と言った。日本にも必要としている人が大勢います」 現在も米国の連邦法では違法だが、オバマ政権になって状況が変わった。 今年2月に、米司法長官が、「医療大麻に対する連邦捜査機関の強制捜査を終了する」と発表し、事実上、医療大麻が黙認されることになったのだ。 再び小笠原さんの話。 「僕が訪れた当時はまだ、ハワイでも大麻は違法だった。幸い日本をたつ前にコンタクトをとっていた現地の医師から非公式に提供してもらい、病気の経過をみてもらうこともできました」 小笠原さんはその医師のアドバイスどおり大麻を1日3度吸引した。 「最初は痛みが和らぐくらいで大きな変化はなかったのですが、3日目から、つま先から徐々に力が入るようになりました。3週間ハワイで大麻を吸った結果、車いすから歩けるようになったんです。そりゃもう感動しました。苦労をかけた妻や子供と『やったやった』と泣いて喜びました」 財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターのホームページには、〈どんな形のものにせよ、大麻は心身に有害です〉としっかり書かれている大麻だが、 「あくまでも僕の体験に限った話ですが、日本に帰って大麻が吸えなくなると症状が悪化しました。僕は大麻で幻覚や多幸感など、いわゆる“ハイ”にはならなかった。まず痛みが止まるので、そこで吸うのをやめるんです。依存性も感じない。何よりも、ステロイド剤の量を減らせるので体が楽でした」(小笠原さん) 抗炎症作用や免疫抑制作用などが期待されるステロイド剤は、治療薬のない難病患者にも処方される。代表的な副作用として感染症や精神障害などが挙げられ、多発性硬化症患者のように長期服用すれば、肝不全やすい炎を引き起こす可能性が高く、亡くなる人も多い。 「僕も心筋梗塞とすい炎を患っています。でも一番つらいのは精神的な副作用。うつや不眠になり子供たちにあたってしまう……」 あたられた長男(21)はこう話す。 「父は痛みのため1週間まったく寝ない時もあった。不眠でピリピリしている時は正直、家に居たくないと思ったこともある。大麻を使用している時の父はとてもリラックスしているようで、それを見て僕も安心できた。医療大麻は患者の家族の精神的な安定を保つ効果もあるんです」 99年に全米科学アカデミー医学研究所が発表したIOMリポートには、大麻は〈疼痛(とうつう)緩和、悪心や嘔吐の抑制、食欲増進等〉に効果があると記されている。海外では他にも〈がん、緑内障、ぜんそく、多発性硬化症、うつ病、パーキンソン病、クローン病〉などに効果があるとの研究報告がされている。 日本ではどうか。 大麻の薬理学的作用を研究する長崎国際大学の山本経之教授に話を聞いた。 「日本でも昔はインド大麻が日本薬局方に鎮痛薬として掲載されていました。エイズやがん患者のように、食欲が減退し最終的には栄養失調に陥る消耗症候群の患者には、大麻の食欲増進作用で、体重を上げ、延命効果が期待できる。大麻の依存性も軽々しく無視すべきではありませんが、麻薬であるモルヒネは『痛み』に苦しんでいる患者さんには依存が起こりにくいという報告もあります。多発性硬化症などの有効な手立てのない疾患に対しては、その治療効果が期待できる大麻の臨床試験を行える環境づくりが必要ではないかと考えます」 人間の脳には大麻に似た作用を持つ物質とそれを感じる特殊な受容体があることがわかり、大麻の臨床応用の可能性を示す科学論文も報告されているが、 「わが国ではいくら基礎研究を重ねても、現状では大麻取締法という法律があるため臨床試験ができないんです」(山本教授) 大麻取締法ができたのは1948年、戦後のどさくさに紛れてGHQから押しつけられた。それまでの日本では、大麻は衣服や家の壁、食用などとしても使われていて、ぜんそく薬や痛み止めなどの医薬品としても使用されていた。 だが、法律が制定されてからは「大麻から製造された医薬品」の使用さえできなくなった。そもそも「大麻がなぜ悪いのか」という問いかけに、取り締まり当局は明確な根拠を示せない。国内で検証をせず、根拠が曖昧なため、乱用にもつながっている。 原因不明の難病といわれるクローン病患者の成田賢壱さん(28)は、日本で治療用として大麻を所持していたため、逮捕・起訴された。現在公判中の自身の裁判で「医療目的の大麻すら禁じられるのはおかしい」と主張している。 クローン病は慢性の限局性腸炎で、治療法は見つかっていない。多発性硬化症と同じくステロイド剤を処方され、進行すると絶食や人工肛門の造設を余儀なくされる。04年にクローン病と診断された成田さんは、 「医者もわからない難病なら自分で調べて改善法を考えるしかない」 と調べるうちに、カナダでは大麻のみの治療で効果を上げている患者がいることを知る。 「それで、手術やストレスを感じる時などに大麻を吸うようになりました。僕の病気はストレスで粘膜の状態が悪化するんです。保釈後、病状の指針となる炎症反応の数値が5倍以上にはね上がりました。拘束されたストレスと大麻によって抑えられていた炎症が一気に再発してしまったと考えられます」(成田さん) 保釈後、成田さんがインターネットのテレビ電話で、カリフォルニアのジェフ・ヘルゲンラザー医師にカルテを見せたところ、 「(成田さんが過去に使用していた)大麻の倍の量を摂取しなさい」 と“診断”された。 後日、その医師から送られてきたクローン病患者を対象とした臨床試験の資料によると、特に、抑炎症や免疫の調整、腸管の修復など、再発防止に効果があるとの結果だった。 「ジェフ先生は『必要なら、大麻が君の体に及ぼす効果について法廷で証言してもいい』と言ってくださいました。今、証人申請をしているところです」 日本の医師はどう考えているのか。 話を聞こうと、がんや多発性硬化症など大麻が効果的とされている病気の専門医に取材のお願いをしたが、「医療大麻の取材」と告げると、逃げるように断られた。唯一、都内の神経内科医が匿名を条件に、こう打ち明けてくれた。 「多発性硬化症の患者さんに『大麻が効くというデータが諸外国から上がっている』と言ったことはあります。しかしそれは『大麻は違法』という現状では好ましくない話なんです。使いたくても法律があるからダメ。くやしい思いがないかと言えば嘘になる」 将来的に認められる可能性はあるのか。厚生労働省の監視指導・麻薬対策課に話を聞いた。 「この問題は、色々な議論を要する不確定要因が大きいので、今の段階で将来的に認められるかどうかについてはお答えしようがない。ただ、どうしていくかを考えなければいけない案件だとは思っています」 小笠原さんは、訴える。 「MS患者が日本の20倍と言われているイギリスで4年ほど前に大麻薬の治験が成功しています。バイアグラがアメリカの治験だけで通ったのなら、医療大麻も方向転換するべきだと思います。僕もせめて孫の目くらい見たいですからね」 家族の前でそう笑顔を見せていた小笠原さんは、ステロイド剤の副作用で患った可能性の高いすい炎が悪化し、取材から約2カ月後の5月2日に亡くなった。最期まで夫を支えた妻は、 「人の命や生活に関与する問題を無知のままNOと言わないでほしい」 と涙をのんだ。
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