The Poisoned Chocolates Case
毒入りチョコレート事件

創元推理文庫(高橋 泰邦 訳)

<あらすじ>

 ロジャー・シェリンガムを会長とする「犯罪研究会」にゲストとして招かれたスコットランド・ヤードのモレスビー首席警部が次のような難問題を持ち込んだ。

 ロンドンのクラブに送られてきた新製品のチョコレートにより、ベンディックス卿夫人が死亡し夫は命を取りとめた。チョコレート製造会社はその製品を作っていないという。卿夫妻を殺害して利益を得るものもいない。殺人狂の仕業か?

 この一見単純な事件に対し、「犯罪研究会」の面々はその推理力と探偵能力とを結集して犯人の調査に乗り出した。アンブローズ・チタウィックら会員6人6様の推理と解決策。はたして真相は?

 旧版の表紙。

<コメント> (2000/02/27執筆, 2004/2/11加筆修正)

 「真実はいつも1つ!」とはどこかで聞いたような言葉ですけど、この作品は1つの真実に対して複数の仮説が様々な推理法にて展開されます。最初の方の推理はご愛敬っぽいところもありますが、奇説が出てくるわ、かなり最もらしい推理が出てくるわ、、、と展開していって、最後はブラックテイストな結末で終わります。最後に出てくる説だから真相なんだろうけど、これさえも「本当かな?」という曖昧さも感じられます。確か、クリスチアナ・ブランドがこの作品に対して7つめの推理を披露していましたね。(読んだことはないけど。。。)この手の多重推理は現代ミステリではさほど珍しくはないけど、この作品はその先駆けに位置づけられるでしょう。

 シェリンガムの最後の言葉が印象的ですね。一読の価値あり。で、星4つ★★★★

 なお、これの原型となった短編が創元推理文庫の「世界短編傑作集3(江戸川乱歩編)」 に所収されている短編『偶然の審判 The Avenging Chance』です。こちらはさすがに短編なので重奏性には欠けますが、読み比べてみるとおもしろいかも。


グーテンベルク21
より