London Particular

[米題:Fog of Doubt]

 
疑惑の霧

ハヤカワ・ポケットミステリ、ハヤカワ文庫(野上 彰 訳)

<あらすじ>

 湿気をふくんだ灰色の霧・・・。このロンドン名物に包まれた夜、一人の男が殺された。ラウール・ヴェルネ、ベルギー人の彼は医師の妻マチルダ・エヴァンスがジュネーヴにいたときの恋人だったが、その日はマチルダの義妹ロウジーについて話したいことがあると言って、マチルダの住むメイダ・ヴェイルを訪れていたのだ。一方、ロウジーのおなかの中には赤ん坊が宿っていた。。。

<コメント> (2000/08/20執筆、2004/05/29加筆修正)

 凝りに凝った華麗な文章で、容疑者が二転三転とするブランド・ワールドは相変わらずです。三人称の視点で描かれていた世界がいつの間にか登場人物の内面告白となり、そして唐突に三人称の視点に戻ったかと思ったら、場面が変わっていたりするような表現もあり、「やっぱりブランドは映像化したらおもしろそうだなぁ。」と思う部分が多々あります。しかし、その反面、読むのがちょっとしんどいなぁとも感じるかもしれません。

 ブランドといえばラストのどんでん返しが魅力なのですが、この作品は『ジェゼベルの死』『はなれわざ』以上に、最後の最後まで真相がはっきりとしません。「ひょっとしてこのまま真実が明かされずに終わるのではないか?」とも思えるほどで、まさに読者の頭は霧に包まれたような状態になり、人によってはこれが非常に居心地悪く思えるかもしれません。

 しかし、これらこそブランドが謎解きの伏線を隠すオブラードであり、ブランドの持ち味でもあります。ラストのラストで明かされる真相(まさに最後の一撃!)は、下手な書き手だとすぐにわかってしまいそうな盲点であり、なおかつこの真相はかなり大胆な形でほのめかされていたことを読者は知ることになるでしょう。まさにブランドの表現技法なくしては、この作品は成り立ちません。

 ですから、この作品がおもしろく読めるかどうかは好みの問題もありますが、私は好きです。(読むのは疲れるけど。。。)で、星4つ★★★★