The Layton Court Mystery
レイトン・コートの謎

国書刊行会(巴 妙子 訳)

<あらすじ>

 ある夏の日の朝、レイトン・コートの主人スタンワース氏の額を打ち抜かれた死体が書斎で発見された。自殺が示唆されたが、不可解な死体の状態や滞在客の不審な行動を目にとめた作家のロジャー・シェリンガムは、自殺説に疑問を感じて・・・。

<コメント> (2003/01/07執筆)

 「オンライン書店bk1」に寄稿した書評と同じです。

 『毒入りチョコレート事件』(創元推理文庫)や『第二の銃声』『ジャンピング・ジェニィ』(いずれも国書刊行会)などで、近年再評価が進んでいるバークリーの処女作。

 処女作だからでしょうが、少しこなれていないというか「固さ」を感じました。ファースと言うのか、全体的にドタバタコメディ調なんですけど、その部分が冗長になりがちで謎解きの部分がぼやけがちな気がしました(その点、先に挙げた円熟期の作品群はコミカルとシリアスのバランスがうまくとれていて、読者をぐいぐいと引っ張ってくれるんですね)。だから、楽しい作品ではあるんですが、本作が「このミステリーがすごい! 2003年度版」海外編の第8位にランクインされているのは、ちょっと甘いんじゃないかな…。

 …と、「処女作だから仕方ないや」と不満を抱きつつ読んでいましたが、結末にはびっくり(○_○)! いやはや、現在では決して珍しくない、むしろ陳腐になりつつあるプロットなんですが(ちなみに1925年の作品)、いかんせんそれまでの牧歌的な雰囲気に少し退屈気味だったので、このラストには衝撃を受けました。バークリーのシニカルな側面が既に垣間見られており、興味深いです。
 なお、次作『ウィッチフォード毒殺事件』(晶文社)もほぼ同時期に発売されましたが、本作を読み終えた方はぜひこの作品も読んでみてください。「レイトン・コート」を読んだ人にとっては、「ウィッチフォード」のオープニングは結構驚きなので。